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有音が目撃した奏の成長 1

 ◇               ◇

 このお話《思い出》は確か私と奏が小学校4年生か5年生辺りの頃、奏が家族や友達に「君の作る料理は美味しいね」って言われるのが嬉しいなって調理実習を心待ちにしている時期だったと思う。家に帰ったら何か料理を作るって話もよく聞いていたし。

 ある日、奏が自分のおじいちゃんに呼ばれて「わしのお客様に料理をふるまってくれんか」と言われたのが試行錯誤の料理の始まりだったような。私の家は奏の家とお隣さんだからそのお客さんの厳しい酷評が響いてきたんだよね。あれ? 考えというか思い出してみたらちょっと待って。渋面でこの料理はダメだという表情、着物を着た重鎮といった姿、その時はどんな人かわからなかったけど存在感が半端なかったこの人は氷山こおりやま番参(ばんさん)理事長じゃ!? 思い返してみた私は今それに気づいた。


 そういう訳で(どういう訳? って疑問に思わずに察して欲しいな。ヒント足りない?)その試行錯誤して奏の料理の腕前が上がっていったその話をするね。私も少しは手伝ったし、近くで見ていたから大体の事を覚えているから。

「真唱さん、そろそろ昼時ですな。いかがする? 出来ればあなたの丼ものを食したいのだが」

 あっ、これが奏に真唱さん=奏のおじいちゃんが『わしのお客さんに料理をふるまってくれんか?』って聞いた時の想い出話の続きね。わかりづらくてごめん。


 初対面の奏と番参さん、奏は食べる人を見つめてこんな丼ものを作るのが良いかもと思ったそうだ。

「特に苦手な食材とかアレルギーはありませんよね?」

表情一つ変えずただ首を横に振る番参さん。

「あなたが作らせるくらいだから期待しても良いのかな?」

「氷山殿、あいつはなかなかにユニークなものを考えるので待っていてくだされ」

 奏は母親に一言声かけて台所の使用許可をもらう。用意したのは豚肉とキャベツの千切り、それと肉の上には玉ねぎソースをかけた品。聞いているだけでお腹が空いてきちゃうくらいなのに最初はこれを認めてもらえなかった――そう悔しがっている奏が印象に残ってるわ。

「では氷山殿。私から孫の料理をいただかせてもらいます」


 食にうるさいと噂の奏のおじいちゃん。奏のお母さんが私のお母さんにそんな話《軽い愚痴》をしているのを聞いた事があるんだよね。それなのに酷評されるなんてと奏ががっかりしていたのも覚えてるし。

「うむ、歯応え良し、肉汁が肉の中にしっかり閉じこまれているな。ラードで揚げた豚バラ肉を重ねたと見た! 旨味に香りを引き立てるラードは良い着眼点じゃったぞ」

 なかなか人を褒めないおじいちゃんに褒められた事でおじいちゃんのお客さんにも満足してもらえそうだと奏は思っていたのに――




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