今度は有音が体験したお話
料理研究部の活動、先週は真奈先輩と風良先輩のエピソード。その時の話を要約するといろんな理由が重なって閉じこもった真奈先輩を風良先輩が救ったという話だったんだよ。料理の持つ可能性の驚かされるお話だったな。今日は私と奏が体験した体験についてお話するつもり。私は話を聞いてもらえるかなと不安でドキドキと心臓の鼓動はやばかった。だけど、気にしすぎないようにしないとって考えている間に3年生の先輩の教室までやって来ていた。
「すいません、板野先輩はいますか?」
廊下側の席で近くの子と話していた女の先輩がしゃべるのを中断して真奈先輩に声をかけてくれた。人懐っこそうなスマイルで呼ぶところからこの女先輩はクラス内の大半の人と均等に話していそうな珍しいタイプだと推測出来る。
「真奈ー、多分料理研究部の後輩の子が来てるよ」
その後輩だという予想は、真奈先輩がクラスの人達と私について話題にしていれば気づくだろうから意外じゃない。
「今行くわ。有音ちゃん、待ってて~」
真奈先輩に返事をしてもらったから待ってなきゃと思っている内に来てくれるかな~と思っていた。その時、出し抜けに気さくな女先輩に抱きしめられる。
「え……? えっとあの……何でしょう?」
「真奈の言っていた事わかるわ~。この子かまいたくなるオーラがやばいよ」
『コラッ』という感じで腰に手を当てた真奈先輩が私を抱きしめてきた女先輩を叱責した。
「有音ちゃんを困らせないの。彼女に魅了されちゃったとしても」
注意された女先輩。魅了まではされてないわよと言いつつも、私を改めて見て「愛らしい外見、可愛い」と口走ってしまったからか、恥ずかしさというか照れで顔をそむける。あっ、この先輩も照れている表情が可愛いと思った瞬間だ。
「お待たせ。家庭科室に行きましょう」
私が律儀に呼び出してもらったお礼を言っている間に、少しだけ先に向かっている様子の真奈先輩に小走りで寄っていく。
「おかげで助かりました、ありがとうございます。それではこれから部活なので」
そんな有音を『あの子、輝くものがあるわね』といった様子で気さくな女先輩が姿の見えなくなるまで見送ってくれた。
そして2人一緒にやってきた家庭科室。前回は真奈先輩と風良先輩の料理でつながりを聞けてそこまでの話をしてくれる先輩後輩関係が築けているって事が特に嬉しかったんだよな~。
今更断っておくけど風良先輩にもこれから私が話すつもりの奏との思い出も話す許可はとってあるから。




