アレンジ特訓 6回目 4 始めて4人で
「こっちのおにぎりはどうです?」
それに一番早く手をつけたのは風良先輩だった。私達女性陣は見た目も意識しちゃうっていうのもあるかな。後は食いしん坊って思われたくもないし。
「うん、このご飯と具の食感って意外と合うんだ。それとご飯自体にも味をつけたね」
ご飯に味付けしたとしたら自然と具にも少し味がつく。その調味料の味が……といった感じの表情をしていた風良先輩が奏に内緒話をしていたけど何かに気づいたのかな?
「もしかしてめんつゆを使った味わいかい、奏君?」
「正解です。さすがご飯マイスターですね」
男2人でこそこそ話しているのというのが気にはなったが、私達もこっちだけの話みたいな雰囲気を出して気を引いちゃえばおあいこだよね。
「真奈先輩はこのおにぎり自体に付けるとしたら味は何が良いと思います?」
「そうね、今はどうしてかしょう油ばかり頭にちらついちゃって大変。焼きおにぎりを食べたばかりだから……かしら」
私もどんな味が良いか見極められなかったりするのよねー、でももういいやって後回しにすると決める。
後回しにするのには理由がある。おにぎりは冷めても美味しいものがベストなんだろうけど、せっかく作りたてなんだから1秒でも早く食べたいって事だよ。
「先輩達のアレンジおにぎりを口にした後だと自然にハードルが上がっちゃう気がするので先に私のをどうぞ」
香りからして、酸味がありそうというのと鼻を抜ける香りというのがあって最初は真奈先輩が私のおにぎりに興味を持ってくれた。
「この匂いはワサビでしょうね」
そして1口食べた感想は――
「ゴマの風味とまろやかさがあるわ。今の暑い時期なんかぴったりかも」
それを聞きつけた男性陣、風良先輩と奏が私の作ったアレンジおにぎりに手を伸ばしに来たよ。
「このピリッと来るのがクセになってすぐにもう1口食べたくなっちゃうわね」
「いくつかの味が口の中で踊っているかのようだよ。それとワサビには保存効果が高まるっていうのもあるし」
奏も私の感じたような事をさっき風良先輩と話していたのかもしれないな。ご飯については大得意らしいし、意見を聞いていると参考になるものが多い。私はもっと意見を聞くために『だし茶漬け』をみんなに直接手渡した。
「だしはこんぶとかつお、どっちのだしにしますか? 刻み海苔の風味とか梅干しの酸味などはお好みでどうぞ」
「何か良いタイミングだね。水でもお湯でもご飯を食べやすい方法なもの」
「私もちょうどこういう食べ方をしたかったのよねぇ。有音ちゃん、ベストな時に出したと思うわ」
奏と私。いくつかの種類のおにぎりは結構濃い味だったりしたのでこの場面で『だし茶漬け』は全員の手が進むみたい。そんなに多く作った訳でもないが、お茶漬けというのはシメに食されたりする事も多いものなのどこか食休めのような効果もあったかもしれない。
「お茶漬けを食した後だけど、僕の自然と大きくなったおにぎりを食べてもらえるかい?」
大皿に乗せたおにぎりを私と奏には近くにいたからか手渡しで、真奈先輩の座席には風良先輩が置いた(ただいま真奈先輩は何らかの理由で席を外しているから)その後で水や麦茶、お茶(緑茶と番茶がすぐ作れるようだ)を用意している。なるほどね、先輩達もサービスから始めているわけだ。奏は麦茶を食べる合間に飲んでいたりするし、私は私で緑茶を用意してゆっくり食べようと思った(戻ってきた真奈先輩に私にもお茶もらえる? って言われたから持って行ってあげたよ)




