アレンジ特訓 15回目 6
買い物後の2人 奏の場合
学生寮で他の寮生が別作業に集中しているのを確認。奏はあまり物音を立てないようにして有音の部屋のドアをノックする。
「はい、ちょっと待って下さい」
誰かわからないので最低限の礼儀として丁寧な対応な彼女。いたのが奏だったので珍しいといった反応をした。
「奏? どうしたの、こんな時間に」
「渡したいものがあって」
寮の通路に誰もいないのを確認。奏を部屋に招き入れる。
「そこじゃ何だし、入っていいよ」
そして用事を早く済ませたそうだったので、焦らさず渡したい物を受け取り待ち。
「えっと、こんなプレゼントで悪いけど」
某食品企業のマスコット、ひよこちゃんストラップ(ミニ)スーパー内の雑貨ショップで売っていたそれをプレゼント。色違いのペアで購入した。有音はとても喜んでいるだが、奏はお店の店員にプレゼント用を探しているといっただけ。深い意味がない。更にクリスマスカードが添えられていて『共同作業の助力に期待しているよ、いつまでも協力関係が続く間柄が理想だよね』という勘違いしても不思議じゃない愛のメッセージかの様な事が書いてあったり。カードもそうだが、ペアが好意を持っていると解釈されるのがわからない鈍感っぷりである。
「今日のお礼かもしれないけど、嬉しい」
感謝の言葉と笑顔を向けられただけで満足。奏はプレゼントして良かったと思った。
買い物後の2人 風良の場合
真奈より遅く学生アパートに帰って来た風良。さっきのお礼ならすぐに渡したいなと思ってスマホで真奈に予定を尋ねる。
「真奈、話があるんだけど時間もらえるかい?」
「ええ。やりたい事はあらかた終わったからあるわよ」
お礼をしたい旨を伝えると、真奈に部屋に来てくれる? と言われたので早速隣に向かう。ドアを開ける前に真奈が開けて出迎えた。
「いらっしゃい。それで話って何かしら」
見つめられた風良はどぎまぎしてしまい、落ち着けない。とりあえず玄関先じゃなく室内で話を聞くわと言われて部屋に失礼する。ただプレゼントを渡すだけだと風良も思ってはいるがそれがなかなか……。思わず走り出したそうにそわそわしてると「落ち着いたら?」と呆れられるし、通学用カバンから何か出そうとしては一度玄関外に出てスクワットや体操をして気持ちを整理。用があるんじゃないの!? と少しトゲのある声を出されてやっと通学カバンからプレゼントだとわかる品物を出してプレゼント出来た。
「クリスマスディナーのお礼だよ。今日という日の意味合いも少しは込めたけど」
「開けてもいいの?」
プレゼントの包装紙からシールを剥がしてキラキラテープを何度か剥がした。そして出てきたのはパスケース。
「あらキュートな感じ。どうもありがとう」
プレゼントを持ったまま手を握ってお礼。風良も彼女の喜びにつられて微笑むのだった。