第一章 フォガン
「お前って、いつもはマヌケなんだけど、釣りをしている時は凛としててかっこいいんだよな」
そうゴーヤが言うと、カネコは青縁メガネをクイッと上にあげる。 そして、大きなお世話だと言い、また静かに釣りをし始めた。
カネコは普段鈍臭い、運動会もビリ、予餞会などはいつも汚れ役。 しかし、釣りをしている時は違う。 何か近寄り難いオーラを出している。 その理由をカネコは父親から釣りの英才教育を受けたから——などと言う。
本当の理由はカネコすらも知らなそうだ——しかし、カネコの釣りの腕前はプロと言っても何ら遜色ないのは事実である。
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40分は経っただろうか、カネコを除くメンバーは飽き飽きとしていた。 40分間釣り糸を垂らして、サビキメンバーが釣ったのは小さなメバル一匹。 釣りと言うと、いわゆる入れ食いをイメージをしていた彼等が飽きるのも仕方がない事である。
「お~いカネコ~、そっちは釣れたか~?」
気づいたカネコは無言でピースをした。 別に釣れたぞと自慢している訳ではない、収穫がに二匹であるとジェスチャーをしただけである。
なんだよ釣れてねぇーじゃんと言ったマサシが笑う。 しかし、今日は時化ていて海の状態は最悪。 そのコンディション下で二匹釣ったカネコはやはり一種の天才だとしかいいようがない。




