第一章 フォガン
「一時間……どうしようか……」
と、腕を組み、深く悩むマサシ。
我が身此処にあらず状態の中学生一行にとって、たった一時間の暇潰しは富士山よりも高く、万里の頂上より長く広範囲の壁となって突如現れた。
しかし——その中でも体力が唯一有り余っているカネコが、
「海に行こう!」
と、唐突に提案し始めたのである。
「イヤだ」
と、まるが速攻で拒否する。
「俺は駐車場で寝てるぜ」
と、ナップサックを枕にして寝始めるボンズ。
他のメンバーが首を縦に振り賛成していたのに協調性の無い二人が不賛成を申し立てた。
やはり此処いらが【寄せ集め集団】の限界なのか?
いとも容易く、作りあげてきた友情の輪が音をたてて崩壊していった。
「一緒に行こうぜ。
普段全く違う人といる俺達が集まる事は二度と無いのかもしれないのだから」
優しく天ちゃんが二人に言い寄る。
するとボンズは小さく、しかし納得した様に二回頷き立ち上がった。
だが、まるはベソを書いた子供の様に拒絶し続けた。
「天ちゃん、行こう。
アイツ(まる)は昔からああいうヤツなんだ」
マサシが天ちゃんの腕を引っ張り催促した。
「お、おう……」
後ろ髪を引っ張られる様な形で、天ちゃんも海に行くことになった。
2
——館山湾
中学生一行は岩場にフラフラと来た。
本当に只来ただけである。
彼等は卒業旅行を目的としてやって来たので、【カネコ】以外は一泊二日分の洋服と、財布と風呂道具しか持って来ていない。
しかも、卒業シーズンと言えば三月。
海なんて冷たくて入れるわけがない。
夏になれば爽やかに感じる塩の香りも、今の彼等にとっては不快にしか思えなかった。
「カネコっ!
お前な~」
ゴーヤが堪らず、道先案内をしたカネコに何かいちゃもんをつけようとしたが、つける内容が特にないのでモゴモゴと口にすることが出来ない。
「お前な~って、ここしか来る所がねぇっぺよ」
カネコが正論を言う。
彼等が泊まる海浜ホテルは、お土産屋や、ファミレス等が20分ほど歩かないと一切なく、地理的にも最悪の場所であった。
「とりあえず、俺が適当に持って来た釣竿が4、5本あるからそれで時間を潰そう」
カネコはケースから釣竿を取り出すと、自分自身が使う一本を除き、他の釣竿を渡す。
因みに、最初に釣りをするメンバーはジャンケンで決定した。
そしてジャンケンに勝ったボンズ、モンロー、まっすー、天ちゃんはカネコの指示に従い、市販の仕掛けをつけ、カネコの教えた通りに紐を結んで釣りを開始した。
「それっ!」
勢いよく竿を振りながらカネコが言う。
カネコの投げた釣り糸は、石錘を先頭に80m程勢いよく飛んでいき、サビキ釣りを楽しんでいたメンバーを驚かせた。




