第4話 ブラッドウルフの群れと、俺の“規格外”の力
森の奥へ踏み込むと、血の匂いが漂ってきた。
「……この匂い、ブラッドウルフの群れね」
アイリスが剣に手をかける。
その横で、ガイルの仲間だった男が震えていた。
「た、頼む……ガイルを助けてくれ……!」
俺は冷静に言った。
「案内しろ。場所はわかるんだろ」
男は必死に頷き、先へ走る。
しばらく進むと――視界が開けた。
そこには、
**ブラッドウルフ十数体に囲まれ、瀕死のガイルたちが倒れていた。**
「くっ……なんでだ……!
レオンがいないだけで、ここまで……!」
ガイルの叫びが聞こえる。
(……俺がいないだけで崩れたのか)
胸の奥に、冷たい感情が湧いた。
アイリスが俺を見る。
「レオン。どうする?」
「決まってる」
俺は一歩、前へ出た。
ブラッドウルフたちが一斉にこちらを向く。
グルルルル……!
「来いよ」
次の瞬間、群れが襲いかかってきた。
――だが。
(遅い)
俺の身体は、自然に動いていた。
拳を振るう。
蹴りを放つ。
魔力を流す。
――ドガァッ!
――バキィッ!
――ズシャァッ!
ブラッドウルフが、次々と吹き飛ぶ。
「な、なんだあれ……!?」
「一撃で……十体以上を……!」
ガイルの仲間が絶句する。
アイリスが静かに呟いた。
「……やっぱり、規格外ね」
最後の一体が倒れ、森に静寂が戻る。
俺は息を整え、ガイルたちの方へ歩いた。
ガイルは血まみれのまま、俺を見上げる。
「レ、レオン……助けてくれ……!
俺たちを……見捨てないでくれ……!」
その声は、かつて俺を追放したときの傲慢さとはまるで違う。
俺は静かに言った。
「……俺を追放したのは、お前たちだろ」
ガイルの顔が歪む。
「す、すまなかった……!
お前がいないと、俺たちは……!」
「知ってるよ」
俺は淡々と続けた。
「お前たちは、俺の価値を理解しなかった。
だから今こうなってる」
ガイルは地面に額を擦りつける。
「頼む……!
レオン……助けてくれ……!」
アイリスが俺の横に立つ。
「レオン。
あなたはもう、彼らに縛られる必要はないわ」
俺はガイルを見下ろし、言った。
「……助けるかどうかは、俺が決める」
ガイルが息を呑む。
「だが――」
俺はゆっくりと背を向けた。
「俺はもう、お前たちの仲間じゃない。
俺には、俺を信じてくれる仲間がいる」
アイリスが微笑む。
「行きましょう、レオン」
俺たちは森を後にした。
背後で、ガイルの叫びが響く。
「レオォォン!!
戻ってきてくれぇぇぇ!!」
だが、その声が届くことはなかった。
――追放した側の没落は、もう止まらない。




