第2話 最強剣士アイリスと、俺の“真価”
「もう一度、さっきの動きを見せて」
銀髪の少女――アイリスが、真剣な眼差しで俺を見つめていた。
「え、あれは……ただの反射で」
「反射で中級魔物を一撃で倒せる人間なんて、王国に数人しかいない」
さらりと言うが、その“数人”の中に俺が入るのか?
信じられない気持ちで拳を握ると、身体の奥から力が湧き上がる。
(……本当に、俺は強くなったんだ)
アイリスが木の枝を拾い、構えた。
「軽くでいい。私に向かってきて」
「えっ、いや、それは――」
「大丈夫。私は最強だから」
その言葉に、思わず笑ってしまった。
(最強の剣士が言うと説得力が違うな……)
俺は軽く踏み込み、拳を突き出す。
――瞬間。
アイリスの姿が消えた。
「えっ――」
次の瞬間、背後から声がした。
「今の、見えた?」
「……全然」
「なら、あなたは本当に強い」
アイリスが微笑む。
その笑顔は、森の光よりも眩しかった。
「あなたのスキル……《真価解放》って言ったわね。
補助士の真の姿を引き出す、唯一無二の力。
そんなの、聞いたことがない」
「俺も初めて知ったよ……」
「レオン。あなたは、もっと評価されるべき人よ」
胸の奥が熱くなる。
追放されたとき、誰も言ってくれなかった言葉。
ずっと欲しかった言葉。
アイリスは続けた。
「このまま森にいても仕方ないわ。ギルドに行きましょう。
あなたの力を、正式に認めさせるの」
「ギルドに……?」
「ええ。あなたの強さなら、すぐにでも上位ランクに届く」
最強剣士にそこまで言われると、さすがに実感が湧いてくる。
(……俺、本当に変われるのか?)
アイリスが歩き出す。
「行きましょう、レオン。あなたの“真価”を証明するために」
その背中を追いかけようとしたとき――
森の奥から、複数の気配が迫ってきた。
グルルルル……!
ブラッドウルフが三体。
さっき倒した個体よりも一回り大きい。
アイリスが剣に手をかける。
「レオン、下がって――」
「いや、大丈夫。やってみる」
「……!」
自分でも驚くほど自然に、前へ出ていた。
(試したい。
俺がどれだけ強くなったのか――)
ブラッドウルフが一斉に飛びかかる。
「はあっ!」
拳を振るう。
蹴りを放つ。
魔力を流す。
――ドガァッ!
――バキィッ!
――ズシャァッ!
三体の魔物が、ほぼ同時に地面へ沈んだ。
静寂。
アイリスが目を見開いている。
「……レオン。あなた、本当に……」
「強くなったんだな、俺」
「強いどころじゃないわ。
これは……“規格外”よ」
アイリスが近づき、俺の手をそっと取る。
「レオン。あなたは、誰よりも強い。
だから――」
一拍置いて、彼女は言った。
「私と一緒に来て」
その言葉は、追放された俺の心に深く染み込んだ。
(……ああ。俺はもう、一人じゃない)
こうして俺とアイリスは、街へ向かって歩き出した。
その頃――
街のギルドでは、ガイルたち元パーティが依頼に失敗し、
受付嬢に怒鳴られていた。
「レオンがいれば……!」
「なんであいつを追放したんだよ!」
「……くそっ!」
彼らの没落は、すでに始まっていた。
そして俺は――
新しい人生の第一歩を踏み出したのだった。




