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神銃騎士シルヴァの冒険譚〜とりあえず激カワ王女姉妹の住む国を救ってみる〜  作者: しののめかいき
第一章 パーレスト王国編
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ep.8 ギルドからの特別依頼・上

――――城内一階、【礼拝堂】。



 翌朝、一階へ降りるとすでにエレノアが装備を整えて礼拝堂へやって来ていた。王妃と王室護衛隊も何名か集まっており、両膝をついて待機している。俺もそれに倣って礼拝堂の奥にある祭壇の前で両膝をつく。



 そのまま待っていると、王妃と王女が計六丁の《神銃》を持って祭壇の方に向かって立った。台座にそれらを一定間隔で丁寧に置くと、丁度朝日が差し込んで七色に輝き出す。ゼファリオンの深緑色の神銃、エレノアの橙色の神銃、レインの水色の神銃。その他三丁の神銃もそれぞれ一丁ずつが同じ色をしていた。



 掌を合わせて、両手の指を全て交差させるように組み、頭を垂れる形になる。



 少しの間目を瞑ると、沈黙が続いたがすぐに王妃と王女が姿勢を崩し、合わせて他の者たちも立ち上がり出したかと思えば、そのまま言葉を交わさず解散していった。これが毎日の習慣なのだろう。ひとまず俺も立ち上がり、エレノアたちの方に近付いた。



「おはようシルヴァ! よく眠れた?」



 おそらく新調したであろう装備を身に着けたエレノアがすぐに反応した。普段通りの明るい声色で、両手を腰に当てて笑顔を浮かべている。



「ああ。レインは大丈夫か?」



 昨日かなり酔い潰れていたレインも見たところ問題は無さそうだ。《スライム》の攻撃で溶かされた防具も新品になっており準備万端に見える。



「ええ。ひとまずこれからの話をしましょう」



 レインがそう言うと、隣に立っている王妃が俺に目を合わせて口を開く。



「そうね。シルヴァ、あなたが知りたいことを教えましょう」



 ついに目的の一つが達せられる。この世界のこと、神銃のこと、そして《災厄》のことなど気になることは山ほどあるのだ。



「――――まずは世界情勢。現在この世界において最も強い武力を持っているのは隣国のモルテ帝国。陸地の約四割を領土とする超大国であり、この国は同盟を結んでいるの。《災厄》から国を護るべく現在国王であるアレリオが帝国へ向かっていますが、おそらく難航していることでしょう」



 モルテ帝国、聞き覚えは無い。ひとまず頭に入れておくことにしよう。それ程の大国であれば何か記憶を思い出すきっかけとなる書物があるかもしれない。



「《神銃》に関しては私よりも詳しい人物がいるから、その方に聞くといいでしょう。《災厄》に関して私から言えるのは、姿形もわからないけれど、国一つを滅ぼす力を持った亜獣……存在しているかも怪しまれている現状架空の生物、通称《幻獣》がやって来る可能性があるってことね」



 架空の生物、《幻獣》……そんな不確かな情報を元にこの国は《災厄》に抗おうというのか。敵がわからなければ対策のしようもない。モルテ帝国が手を貸せないのもおそらく情報の正確性の無さからだろう。



「根拠はあるのか?」


「神のお告げ」



 ぺろっ、と舌を唇の上に出す王妃。本気でそう言っているのだろうか。



 森の中で巨大なボススライムを倒し、城下町へ着いて最初に向かったプルクラ・ドロールの家で、プルクラの母親が「神のご加護があらんことを」と祈りを捧げてくれていたことから、この国あるいはこの世界は神が実在するという考え方が一般的なのだろう。変に否定すれば何が起こるかわからない為追及するのはやめておくことにする。



「《災厄》に対抗する手段や準備は?」


「現在進行形で開発を進めているけれど、まだまだ完全とは言えないわね。兵器や装備も作れる台数に限りがあるし、肝心の技術者は《神銃》の研究に精力を注ぐもんだからなかなか厳しい状況よ」



 兵器での対抗が可能ならば望みはあるのかもしれない。森で会敵した亜獣でさえ討伐に時間を要したのだから、おそらくこの国にある残りの全ての《神銃》を誰かに渡しても限界があるだろう。



「だからもしよかったらその研究のサポートもお願いするわ。そのイケメ……じゃなくて騎士君のことも興味深々だったし」



 今イケメンって言ってたな。確かに顔立ちは整っていると思うが。



「あとは《ギルド》を通じて冒険者に協力を仰ぐくらいね。シルヴァにはギルドで名を上げてほしいの。そうすればあなたに賛同する者たちが現れて手を貸してくれるかもしれない」



 なるほど。研究と人員確保、その両方の目的を達成すべく俺は城内の護衛に配備されたというわけか。前者はひとまず技術者とやらに会ってから方針を決めるとして、まずはギルドとやらに顔を出してみることにしよう。



「わかった。まずはギルドへ向かう」


「結構。いつ《災厄》が訪れるかわからないから手短に頼むわよ」



 王妃は俺の前に右手を伸ばした。同様にこちらも手を伸ばし握手を交わす。



「ギルドには私が一緒に行くよ! 案内役が必要でしょ?」



 隣で話を聞いていたエレノアが片手を掲げて口を開けた。案内役は確かに必要だ、ここはお言葉に甘えてエレノアに同行してもらおう。



「助かる」


「じゃあ決まりだね!」


「私は残るわ。小父様との訓練があるの」



 レインは話が落ち着いたのを見て先に礼拝堂を後にした為、俺も目的地へ向かおうと王妃に背を向ける。



「――――待って、使用人室の倉庫に最低限の装備類があるわ。せめてそのボロっちぃ布切れから着替えなさいな」


「ああ。感謝する」


「じゃあまずは着替えからだね!」


「あ。あと今日は揚げパン禁止よ、エレノア」


「えー!!」



   ◇ ◇ ◇



――――城内三階、【使用人室】。



 三階に上がってすぐの部屋は倉庫になっていた。掃除用具や予備の使用人服の他、軽装備がいくつか保管されている。流石に王室護衛隊が使っている頑丈な鎧は置いてないが、エレノアやレインが身に着けている胸当てや質のいい革装備が揃っている。



「とりあえずこれとこれと……」


「お、おい」



 エレノアは倉庫に入るや否や棚に整頓された革の服や履物を漁っていく。両腕いっぱいに抱え込んだ装備品を持って戻って来た。それらを俺の身体に合わせていくつかの服を当てて唸っている。



「サイズが合うかわからないから色々探したんだけど……んしょっと」



 結局サイズが合ったのは灰色と白色を基調とした布の使用人用の服と革靴だった。その他の装備も気になるが慣れていない重さの防具は身体能力に影響が出そうだ。



「……もちろん、着替え方は忘れてないよね?」



 服を手渡したエレノアは上目遣いで心配そうにこちらを見て来るが、流石に問題は無い。何を心配しているのだか。



「当然だ」


「よかった、じゃあ廊下で待ってるね」



 エレノアが廊下へ出ていったのを確認して、渡された服と靴に着替える。今まで着ていた麻の服よりも明らかに感覚が違う。長袖長ズボンに包まれ、床を踏みしめる感覚も新しい。



 扉を開けてすぐの場所で待っていたエレノアの肩を叩くと、「わっ」と少し驚いた表情を浮かべて笑った。そこまで時間を掛けたつもりはなかったのだが、何か考え事をしていたのだろうか。



「すまない、待たせたか?」


「んーん! よく似合ってる! じゃあ行こっか」



 そうして俺たちは城を出て、揚げパン屋に目を奪われているエレノアを引きずりながらギルドへと向かった。



   ◇ ◇ ◇



――――首都アルケー北西部、【ギルド】。



 プルクラの家がある南東部の住宅街とは真逆に、北西部では多国籍の旅人、いわゆる冒険者たちが交流を深める為に建てられた酒場や宿屋が多く、地域全体で賑わいを見せている。その中央部に位置する平屋の巨大な建造物が【ギルド】という施設だ。



「おっじゃましまーす!」



 人二人分ほどある高さの扉を押し開けたエレノアは、ずかずかと正面のカウンターへ歩いていく。その後ろから追いかける形で俺も中に入った。



 中の様子は早朝故か静けさがある。正面カウンターの他に入って左側は酒場、右側には掲示板と休憩所があり、室内全体が松明によって照らされている。



「エレノア様、おはようございます。今日は早起きでしたね」



 カウンターの向こう側でエレノアと話しているのは職員の女性。和やかに微笑む彼女は、エレノアを小突くように答えた。



「ちょ、ちょっと。し~っ! 昨日寝坊してたのシルヴァにバレちゃうって!」


「ふふっ。ごめんなさい、ですがもう聞こえていらっしゃるみたいです」



 口元を手で押さえながら笑う受付係と、全力で彼女の言葉を隠そうとするエレノアが同時にこちらを見て来る。もちろん話の内容は頭から尾までしっかりと聞いてしまった。



「悪い。全部聞こえていた」


「ですよねー!」


「昨日寝坊したことを暴露されたのはエレノア様ですけどね」


「……あっ、そうじゃん」



 まずはギルドの大まかな施設情報を知るべく掲示板の前へ向かう。びっしりと貼り付けられた羊皮紙には依頼主からの依頼と報酬が書かれており、『南西部住宅街工事の人材募集!』、『北西部酒場【陽だまり亭】で一緒に働きませんか?』、『~町の清掃にご協力をお願いします~』と様々だ。報酬は最後のを除いて一日ミスリル金貨一枚。



 似たような内容の依頼がいくつも貼られているが、どこを見渡しても亜獣に関する依頼は見当たらない。城下町の周辺に亜獣が確認できなかったこともあり、町の住民への被害は今のところは無いのだろうか。



「亜獣の依頼は無いのか?」

「そこは町で暮らす人々や冒険者が生活費を稼ぐために利用するところで、私たちが受ける依頼は《特別依頼》って言って、受付で話を聞いてから受注するんだよ」


「――――はい。亜獣は基本的にエレノア様が所持されているような神銃の力でしか討伐ができません。また、神銃を持たない者が亜獣と戦闘を行うのは禁止されていますが、例外として、Aランク冒険者と王室護衛隊の皆様に関しては《特別依頼》として亜獣の調査、撃退をお願いすることがあります」



 町の人間や半端な冒険者には受けることのできない依頼、それが《特別依頼》か。これを達成することで活躍が評価され、名声を得るというわけだ。



「内容は?」


「今回の《特別依頼》は亜獣の調査です。先日【悪魔の森】に出現する亜獣の様子がおかしい、ととある冒険者から報告がありました。その為王室護衛隊には現地へ行ってもらい、亜獣の調査をして頂きたいのです」



 亜獣の調査か。いきなり討伐の依頼という訳ではないらしい。昨日俺が目覚めた【悪魔の森】で発見した亜獣をこの国はどこまで把握しているのだろうか。まあそれはエレノアがわかっているものとして、調査だけならば俺とエレノアの二人でも十分に達成できると見える。



「なるほどね……ジミな依頼だね」


「危険な森での調査の時点で地味ではありませんよ。亜獣も一つの生き物ですから、それに異変があれば何かしらの原因があるはずです。亜獣に関しては未知数なところも多いですし、理解が深まれば万が一が起きても対処が可能です。ギルド直々に依頼する重要な仕事ですよ」


「なるほどな」



 まずは現地に行って亜獣を観察してみるとしよう。エレノアが居れば大抵の亜獣は討伐できるし、アストラに入れ替わりさえできれば安全は保障されるだろう。それに、昨日モノ・ウルフに噛まれそうになった際に発現した力のことも調べたい。



「報酬はどれくらい出るの?」


 エレノアが受付に報酬の確認をしている。金はあって困るものではないが、寝床と食事は城内で済ませられるし重要度は低い。今必要なのは名声、冒険者たちに《災厄》が起きた際の手助けを求めやすくすることだ。



「ミスリル金貨二十枚とギルドに保管されている貴重な物をお渡ししましょう」


「い~ね! お金は全部シルヴァに渡してね」


「俺はそこまで金は必要ないのだが」


「いーや! 絶対必要になる! だってシルヴァが持ってるその剣、まだまだ強化できるって感じだもん。亜獣には通用しないかもだけど、攻撃から身を護る時に使うでしょ? 命に関わる大事なお守りだから大切に扱わなきゃ」


 

 盲点だった。確かに武器の強度は防具並みの意味がある。金を集め、武器を強化し、安全度を上げてまた依頼を受ける……この世界で生き抜く為に必要な処世術なのだろう。



「そういえば、武器屋の商品の値段を見るとミスリル金貨十枚と書いてあったが、冒険者はどうやってそんな金を作って武器を買ってるんだ?」



 先程の掲示板に載っていたのはおそらくこの国で生きていく為に必要な最低限の金だろう。一つの依頼でやっとミスリル金貨一枚。約一年飲まず食わずで貯めるのは現実的ではない為、おそらく別の手段で冒険者は金を稼いでいるはずだ。



「冒険者は基本的に商人の護衛がメインの収入源だよ。色んな国籍の商人がこの国では珍しいものを持ってきて商売をするんだけど、亜獣という危険な敵から身を護る為に冒険者を用心棒として雇っているんだ。報酬は人によるけど、運が良かったら一日で数十枚の金貨を貰えたりするから、冒険者は進んで護衛をするし、商人は物が売れてハッピー! 冒険者もお金が稼げてハッピー! って感じなんだ~」



 身振り手振りで『ハッピー』を表現しながら説明してくれたエレノア。



 冒険者は依頼以外の方法で金を稼ぐわけか。そして稼いだ金をこの国で消費することで経済が回り、冒険者はサービスを受けられてハッピー、国や店は金を落としてくれるのでハッピー、ということだ。



「ありがとう、そろそろ行こうか」


「うん!」


「お二方、お気をつけて行ってらっしゃいませ。神のご加護があらんことを」



 祈りを捧げる受付に感謝を述べ、俺たちはギルドを後にした。



 悪魔の森へ向かうべく【南の門】にやってくると、そこには一人の衛兵……いや王室護衛隊が待機していた。



「――――エレノア様!」



 声とその全身が鋼に包まれた姿ですぐに彼女がリベルタスであることに気付いた。



「リベルタスぅ~! 夜の警備大変だったでしょ!」


「いえいえ。仕事ですから」



 エレノアはリベルタスを見るや否やすぐに彼女に飛びついてしまった。それでも全く動じないリベルタスはエレノアに微笑みかけるように答えた。



「それよりエレノア様。また【特別依頼】を受けられたのですか?」


「うん! でも心配しなくていーよ! 今回は調査だけだし、シルヴァもいるから」



 手を離したエレノアは状況を軽く説明した。それに対しリベルタスは不動を崩してエレノアを心配するように両手を広げる。



「そうでしたか……私も冒険者たちから直接聞きましたが、森は更に危険を増しているようです。どうかお気をつけて」


「うん! お任せあれ!」


「俺も昨日から王室護衛隊に入った。よろしく頼む」



 昨日の食事会では彼女と話せなかった為、手短ではあるが挨拶を交わしておく。



 するとリベルタスは驚くように後ずさり、俺に指を指す。



「おおお、お前も我らが王室護衛隊に!? 王妃様は何をお考えになっているのやら……」


「あのゼファリオンに一発入れたんだよ! すごいでしょ!」


「なんと……」



 静寂が訪れる。まるで「信じられない」と言っているかのような様子で俺の方を見つめてくる。



「――――王室護衛隊シルヴァ!エレノア様の護衛を頼みます」


「ああ、任された」



 声高らかに発したリベルタスは、右拳を握りしめてこちらに向ける。同様に拳を向けて軽く当てると、彼女は頷いて再び定位置へ戻った。



「それじゃあ行きますか!」


「ああ」



 そうして俺たちは、リベルタスのいる【南の門】を抜けて、亜獣巣食う森へ向かった。

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