エピローグ
第一章最終話のエピローグです!ここまで見て頂いた方はいるのだろうか!ともかくストックはこれで終了なので、第二章を地道に書いていきます。また三か月後くらいかな。
パーレスト国最大の難所であった⦅災厄⦆から一週間。その期間は国を挙げてお祭りが開催された。
その初日は勲章授与式が執り行われ、⦅災厄⦆に立ち向かうべく協力をした冒険者たちのランクを、Aランク未満の者たちに限り一段階分上げることなったのだ。
負傷した王室護衛隊のメンバーを戦線から離脱させることに貢献したAランク冒険者四名は、国の金庫から報酬金を受け取った。
そして⦅幻獣⦆討伐に大きく貢献し、パーレスト国の住民たちからの支持もあったシルヴァは、正式に⦅神銃騎士⦆に任命された。
エイレインとエレノアは、⦅神銃技士⦆として城下町に住まう人々の悩みを解決し、⦅幻獣⦆討伐に大きく貢献したことから、王室護衛隊の入隊が許可されることとなる。
「――――さて、シルヴァ。何度も伝えたけれど、本当に今回はあなたに助けられたわ。ありがとう」
パーレスト国にそびえ立つ城の二階、【謁見の間】にて王妃であるレナ・クラークは一人の男に話しかけた。玉座に座る彼女の目線の先にいるのは、膝を付いて王妃を見上げるシルヴァだ。
「祭りの間に何度も言われたからもういいですよ。それで、話とは?」
灰色の鎧を纏い、騎士としての姿で王妃の話を聞きにやってきたシルヴァは、以前とは異なり敬語を使いながら問いかけた。
「式典の為に覚えた敬語、慣れてきたね」
「ええ。それにしても、やけに様になっているわね……」
彼の後方では、シルヴァと同じく王妃に呼び出されたエレノアとエイレインが待機しながら様子を伺っている。長髪の髪を揺らし、一本の剣と一丁の銃――――アストラを腰に携える鎧姿に二人とも驚いていた。
「フィデリス、彼と二人に例の物を」
「承知いたしました」
王妃の横で待機していた使用人長のフィデリスは、両手でトレーを持ったままシルヴァの前にやって来る。トレーを彼に差し向けるとそこには三枚のカードが載せられており、彼はそのうちの一枚を試しに手に取った。
「これは?」
「――――《冒険者ライセンス》。冒険者として生きていく為の必需品で、その人の実力を示す冒険者ランクが記されているわ。そして一番の目玉機能は、これがあれば他国へ簡単に出入りすることが可能になる点ね。ランク次第では門前払いを食らうところもあるけれど、ライセンスがあるとないとでは冒険の自由度が段違いよ」
三枚のライセンスには最低ランクである《Fランク》が示されており、最高ランクである《Aランク》には程遠い。
残りの二枚のライセンスは後方のエイレインとエレノアに手渡され、それを確認した王妃が再び口を開く。
「――――この国の英雄、シルヴァ。国の窮地を救ったあなたに、一国の王としてお礼をさせて頂きたい。記憶を失っているというあなたはきっと自身のことやこの世界のことをもっと知りたい、そう考えているでしょう」
「……そう、ですね」
シルヴァは《幻獣》との戦いの際、最後の一撃を放つ為に貯めたエネルギーが最大値を迎えた。その時に彼は自身の身体が《神銃》と同じであると気付き、その力を利用して巨人の身体と《幻獣》の核を切り離して討伐に成功したのだ。
彼はその事実をアストラ以外の誰にも話していない。自分がどういった経緯で神銃と同じ性質をした身体になったのかは思い出せず、新たな概念である《魔法》についてなど、シルヴァには現状調べたいことが山ほどある。
「――――あなたを王室護衛隊から解任します。そして、新たな冒険を始めて下さい」
王妃の言葉を聞いたエレノアがぎゅっと拳を握りしめる。彼女は、彼がこの国を出て自身の記憶を辿る旅路に出ようとしていることを予感していた。
「……エレノア。私たちはもう王室護衛隊の一員なのよ。勝手は許されない」
「……わかってる。わかってるよ」
エイレインは、エレノアが王室護衛隊の任を無視してシルヴァの元へと向かう可能性を危惧している。護衛隊から無断で脱退することは、王を――――エレノアたちにとっては父親を裏切ることに直結するのだ。
「――――ありがとうございます。それでは、すぐにでもこの国を出ますので自分はこれにて」
「ええ。困りごとがあれば、いつでもこのパーレスト国を頼って頂戴」
腰を上げたシルヴァは、王妃に一礼をしてエレノアたちの方へ振り向いた。彼が外へ出る扉へ向かう途中、エレノアの顔に視線を向けて一瞬だけ目が合うが、言葉を交わさずにそのまま去って行ってしまう。
「ちょっと、いいの? 最後かもしれないんだから挨拶くらい……」
「うん。いいの。大丈夫」
エイレインは心配そうにエレノアの横顔を覗き込むが、彼女の顔色は少しだけ暗いように見えた。これ以上エレノアに掛ける言葉が見つからず、エイレインはエレノアの左手を自身の右手で握りしめて王妃の待つ玉座の前に向かう――――。
◇ ◇ ◇
――――パーレスト国、【南の門】前。
騎士としての鎧は脱ぎ捨て、使用人服も返却し新たな衣服を纏いながら俺は門の外を目指していた。
森で目覚めたときと同じような、麻製の服はどこか安心感を覚えさせてくれる上に、この方がより《冒険者》感があっていい。
……目の前に広がる景色は、あまりにも悲惨だった。
先の戦いによって【悪魔の森】へ続く街道は荒れ果ててしまい、自然豊かな景色は記憶の中だけのものとなっている。これから復興も始まるだろうが、王妃曰く未だその目処すら立っていない状況らしい。
『シルヴァ、いいのかい? このままあの国で生活をしていくというのも悪くないと思ったんだけど』
腰のホルダーから聞こえてくる青年の声が俺の今の行動に疑問を感じているようだ。確かにあのまま王室護衛隊として仕事をこなし、エレノアたちとこのパーレスト国で過ごす日々を選ぶこともできた。
「ああ。俺は俺自身を知りたいからな。《冒険者》として、世界を旅してみようと思う」
あの戦いの中で思い出せたのは、俺自身が《神銃》と同じような構造をした機械に等しい身体であることだけだ。それ以外の俺に関する記憶は、何も思い出すことができていない。
『まあ僕も、僕を作った人がどんな人かくらいは知りたいし賛成だよ』
「……相変わらず、《神銃》に備わっているだけの機械には見えないな。人間じゃなかったら何なのかと問いたくなるくらいにはアストラは感情の起伏がある」
『君にそう言われるとなんだか不思議な感じだね。ある意味では僕と同じだろう? 《神銃》と同じ力を使えて、その頑丈で高い身体能力を発揮する機械の姿。例えそれが真実だとしても、一目見ただけじゃまるで人間と同じじゃないかい?』
肌の質感や髪の毛の一本一本の感覚の全てが、まさに人の身体と同様のものであることに間違いはない。だがそれを否定するように、心臓の鼓動は一切感じられず、血液の流れがない為体温も感じられない。
恐らくこの身体を動かしている力の源である、《神銃》の力を行使する際に使われるエネルギーが血の代わりとなっているのだろう。
「俺たちが話し合っても仕方ないな。機械同士、これからもよろしく頼む」
『それもそうだね。名残惜しくなる前に、早く行こうよ』
「ああ」
荒廃した大地を前に、俺は一歩前に踏み出した。足の裏に跳ね返ってくる地面の固さが、新たな旅路を予感させてくる。
未開の地である【悪魔の森】を踏破し、その先にある見知らぬ世界を求めてまた一歩ずつ歩み出した。
「――――シルヴァ!」
後方から、聞き慣れた少女の声が聞こえた。
太陽のように明るく、空のように様々な感情模様をその顔に浮かべる金髪の少女が、自身の与えた名である俺の名を叫んだ。
「――――絶対に会いに行くから! またどこかで!」
振り返った先には、【南の門】の前で大きく手を振るエレノアと、その隣に立つレインとリベルタスの姿が見える。
エレノアとレインはこれから、王室護衛隊の一員として国の為に様々な仕事をこなしていくだろう。困難もあると思うが、あの《災厄》を前に戦い続けた二人だ。あれ以上のことは余程のことがない限り起こりえない。
手を振り返し、進む道の先へ向き直す。
きっとどこかでまた会えるはずだ。今は、自分の目的を果たすべく【悪魔の森】を目指す。
『――――シルヴァ。亜獣の残党だよ』
「ああ」
一週間の間で大量にストックしておいた、神銃の力を持つ羊皮紙を一枚麻袋から取り出して力を込める。
羊皮紙に描かれた模様が光に満ちたその瞬間にそれを手放し、発生した爆風に背中を押されながら左腰の長剣の柄を握りしめて解き放つ。
紅き一閃が目の前の《モノ・ウルフ》の心臓部を確実に捉え、内部の魔核を破壊し形状崩壊を起こす。
「このまま一気に行くぞ」
『うん。疲れたら僕にも代わってくれよ』
「ああ」
二人の旅は今、始まったばかりだ。
シルヴァとアストラは自身の記憶を探す旅を始めます。ヒロインであるエレノアとエイレインの脱退はどうしたものかと思いましたが、今後の展開的にも一時脱退、という感じで締めくくっております。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!続きも爆速で書きますので、またお会いできるときが来るかもしれません。2025/12/18現在。




