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「ヤスミ姫!? 何してんの!?」
「はぁ?」
ガヤオに気づいた彼女が、顔を上げた。
「誰だ、てめえ?」
「え!? さっきとキャラ違くない!?」
ガヤオは怯んだ。
「あん? 勝手に人のキャラ決めんじゃねぇ! ぶっ殺すぞ!」
ファッション誌を放り出し、ヤスミ姫は立ち上がった。
ガヤオを、にらみつけてくる。
「い、いや、ゴーヤンがヤスミ姫を助けてくれって…」
「おれはなぁ! ゴーヤンを待ってんだよ! てめぇみたいなモブは、お呼びじゃねぇよ!」
「俺はモブじゃねぇわ! とにかく早く逃げないとオークが」
ガヤオは、オーク軍団を見た。
「え!?」
広場に寿司詰めだったオークたちは全員、倒れていた。
信じられないが、ムキムキ勇者が1人で片付けたらしい。
額の汗を爽やかに拭ったゴーヤンが、こちらにやって来る。
「強っ! 助っ人、要らなくね!?」
ワイルドンの勇者の、でたらめな強さにガヤオは呆れた。
ゴーヤンが階段を上がってきた。
「ゴーヤーン! 怖かったー!」
ヤスミ姫が急に尻をプリプリ振りつつ、マッチョ勇者に駆け寄る。
「え!? 変わりすぎじゃね!?」
ガヤオが眼を丸くした。
ゴーヤンは、はにかみ顔のヤスミ姫の細腰を抱き、ニッコリと笑った。
「ありがとう、ガヤオ。ヤスミ姫を守ってくれて」
「俺は何も…その娘、のんびりしてたし…」
ゴーヤンに見えない角度から、ヤスミ姫がこっちをにらんでくる。
その双眸は「もしバラしたら、てめぇをバラバラにするぞ!」と語っていた。
「いや…何でもない」
ガヤオは秘密を守った。
時には沈黙が必要だ。
その時。
不意に、ミョーン感覚が襲ってきた。
身体が半透明になる。
「お! 帰れるぞ!」
「ありがとう、ガヤオ!」
ゴーヤンが手を振った。
ヤスミ姫は恋人には見えないように「ベー」と、こちらに舌を出している。
ガヤオは2人が、この先も上手くいくことを心から願った。
周りの景色が、カルナディアの森に戻る。
ゴブリンたちの姿はない。
ネココが全て、倒したのだろう。
「おー! ネココ、途中で抜けて悪かった…」
謝りかけたガヤオの視界に、地面にランチョンマットを敷き、うつ伏せ寝でマンガ雑誌を読み、コーラを飲んでいるネココが入った。
「ギャハハ!」
猫女が大笑いする。
「ネココ、お前もか!」
ガヤオは、先ほどのヤスミ姫を思い出した。
「あ! ガヤオさん、お帰りッス!」
ネココが、シーザーみたいな顔になっているガヤオに気づく。
「ポテチ、買ってきてくれました?」
「いや、そもそも頼まれてねーわ!」
こうしてガヤオとネココは、今日もカルナディアの平和を守っている。
おわり
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