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 カルナディアの勇者ガヤオは仲間の猫獣人ネココと共に、ゴブリンの集団と戦闘中だ。


 森の木々の(あいだ)をちょこまかと走る緑の小鬼たちを、2人は的確に片付けていく。


 と、その時。


 18歳のガヤオをミョーンという奇妙な感覚が襲った。


(こ、この感じ!)


 ガヤオは慌てた。


 彼はカルナディアの勇者であるにもかかわらず、よく他の世界に助っ人として呼ばれてしまうのだ。


「ネココ!」


「ガヤオさん! またミョーン感覚ッスか!?」


 2歳下のネココも慣れたものだ。


 ショートボウに矢をつがえ、冷静にゴブリンたちを射倒(いたお)している。


 すでにガヤオの身体は、半透明になってしまった。


「あとは頼んだぞ!」


 頷くネココの姿が消え、ガヤオは石造りの遺跡のような場所に居た。


「おお! 来てくれたか!」


 野太い声がした。


 隣に20代半ばの、ムキムキ半裸の大男が立っている。


 両手剣を(たずさ)えていた。


「オレはゴーヤン。ワイルドンの勇者だ」


「俺はガヤオ。カルナディアの勇者」


 2人は握手した。


「魔法使いにもらった巻物で、本当に助っ人が呼べるとはな」


 ゴーヤンが笑う。


「こっちは急に呼ばれるから、けっこう大変なんですけど!」


「すまん、すまん」


 筋肉勇者が謝った。


「それで、ガヤオ。手伝って欲しいんだが」


「ああ。呼ばれたからには、協力するよ。助っ人が終わらないと帰れないし」


「うむ。まずは後ろを見てくれ」


 ゴーヤンが振り返り、ガヤオもそれに習った。


「わー!」


 ガヤオが驚愕する。


 広場のようなスペースに、オークがギュウギュウにひしめいていた。


 皆、しっかり武装している。


 1番奥の高くなった所に立つ、白いドレス姿の金髪美女がこちらを見ていた。


「ゴーヤン! 助けてー!」


 美女が叫んだ。


 オークたちは、ブヒブヒと私語している。


「今、助けるぞ、ヤスミ姫!」


 ゴーヤンが、彼女に手を振った。


 ヤスミ姫も満面の笑みで、手を振り返す。


「オーク、多すぎじゃね!?」


「奴らは全員、オレが倒す」


 ガヤオの問いに、ゴーヤンはニカッと笑った。


「いや、この数は大変だろ!?」


「大丈夫だ。ガヤオはヤスミ姫を助けるのに専念してくれ」


「そ、そうか? まあ、あんたがそう言うなら」


 釈然としないながらも、ガヤオは頷いた。


 左手のスモールシールドを構えて、ひとつ深呼吸する。


「おりゃー!」


 ガヤオは、まるで満員電車のようなオークの集団に飛び込んだ。


 思った以上の混雑だ。


「痛い痛い! 退()けよ! むぎゅう! おい、誰だ、頭叩いたの!」


 オークたちの(あいだ)に無理矢理入り、ガヤオは少しずつ前進した。


「おおおぉーッ!」


 後ろから、ゴーヤンの雄叫びがする。


 戦いが始まったのだ。


 本当にゴーヤンは、あれだけの数の敵を倒せるのか。


(まあ、今は信じるしかないな)


 ガヤオは懸命に、オークの群れの中を進み続けた。


「あ! お気にの盾、落とした! おい! 何だよ、その顔! 痛! また誰か叩いたな!」


 背後のゴーヤンの咆哮を聞きつつ、ガヤオは何とか1番奥まで辿(たど)り着いた。


 サイドの階段を上がると、ランチョンマット上でうつ伏せ寝したヤスミ姫がファッション誌を読みつつ、ペットボトルのジュースを飲んでいる。


 時折、ポテチを(つま)んで、口に放り込んだ。











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