7 パパとママ
――令和六年十一月。
入籍の際に、「すっちゃん、役場へいこう」と言われてプチショッキングだった。私はずっと東京の区役所が当たり前だと思い込んでいたから、町役場の可能性を忘れていた。学ばなければならないことは多いと思う。ありがちな高層階のレストランでロマンチックなサプライズとかの演出は夢にしまい込んでおこう。その代わり、漢詩を贈ってくれた。取扱説明書もついて親切設計だ。
二十八年前の十一月に入籍したのは覚えている。入籍の前に三年半のお付き合いがあったのも確かだ。当時、天文的に素敵だと思って九月の秋分の日を希望したら、お彼岸とのことで断られた。
「あーちゃん、勤労感謝の日は避けて独自の日がいいな。十一月二十四日とかどう?」
私は二十四日に籍を入れて、町にあるホテルでお食事をした。母が白鳥のように真っ白なワンピースの生地を買って作ってくれた。レースの襟がついたボレロもお気に入りだ。
歳月はおそろしく過ぎゆく。
「いい夫婦の翌、十一月二十三日だよ。ママ」
夫と私の記憶がずれていった。構わないだろうと十一月下旬でお祝いしていた。尤もお財布事情でお祝いが難しいこともあった。
今年は、とうとう我が家の戸籍謄本を取りにいった。夫に運転免許証にある本籍地を聞いたが、番地は書かれないことになっているそうだ。青田県の実家へと電話をした。「おう、どうした?」と、義父が応じてくれて、番地を教えてもらえた。書類に加筆して再提出をすると、デジタル化された戸籍を取り寄せることができた。
息子の冬眞は雨の降る日に、娘の春美はよく晴れた日に産まれてくれた。二人とも高校生だ。
「いい夫婦の1122じゃないの?」
「ざーんねん! ママの正解だよ!」
三十年近く結婚記念日が不明瞭なままって。
「——呑気なものね」
白鳥のようにきらきらと仲良くしたい……。
【了】
こんにちは。
いすみ 静江です。
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。
感謝_(._.)_ペコリ。
母を想う気持ちに褪せるということはない……。
ありがとうございました。