俺の過去 決着
43話
「最悪な状況だな
俺はひとまず組に戻らせてもらう」
俺とは反対側の道から去ろうとしている
「おい、帰るんか?」
「あぁ喧嘩は嫌いなんでね」
「それじゃあ俺はこのガキと楽しく斬り合いでも
しておくぜ」
「この状況で背中向けるとはいい度胸だな!」
俺は鞘に入れている刀を
思いっきり振るう
「な!」
俺の振るった一撃は防がれてしまった
「先程喧嘩は嫌いって私言いましたよね
ですが、喧嘩が好きな人が残るので
斬り合いでもしてぜひ楽しんでください」
そう言うと去っていく...
「おうよ!任せとけ!
ガキお前は武器の扱い方に多少心得があるなら
斬り合いを楽しもうぜ!」
手元の腕時計を見ると16時55分になっていた
「(クソイベント開始時間に間に合うか分からないな)」
「俺相手によそ見をする何てバカだろ!」
持っていたナイフで俺の右肩を掠らせる
「ほら、もっと傷つけてやるぜ!」
肩・腕・腹などを細かに傷をつけていく
チッ、舐めんな!
俺はバク転してナイフを払い除ける
「ナイフを払っただけじゃあ俺は止まらないぜ!」
バク転の着地と同時にボディを殴ろうとしてくる
「ヤベぇ!」
すぐさま刀を地面に突き刺し、刀を支点として
空中で横回転する
「はぁ?何だその動き!」
俺はこの横回転を使い、遠心力込みの回し蹴りを
叩き込む
「あぶねぇ、あぶねぇ 防いでなかったら
気を失ったいい攻撃だったぜ」
男はそう言いながら、下っ端が落としたナイフ等を
回収している
俺は回収している隙を見逃さず体勢を整える
「ここから俺は本気を出すぜ」
コイツは最初の男よりは強い
武器の扱い方を俺以上に熟知しているのが
動作ですぐに分かる
それに本気を出すと言ってからは
まるで俺の動きを先読み
しているかのように攻撃が当たらない回数が多くなった
「何でこっちの攻撃が当たらないんだ...」
クソクソクソ
俺は自暴自棄になりながら単調な攻撃を繰り出していく
「何で当たらなくなったのか
それに気づけないようなら、お前は一生勝てねぇよ!
(と言っても、呼吸音や骨の音 動作する一つ一つの
音を聴いて避けているだけだがな
まぁ今の言葉で戸惑ってくれると助かるぜ...)」
攻撃が当たらない理由?
それが分からなければ俺は勝てない...
やっぱり、俺は現実じゃあ弱いままなのか⋯
加賀美 陸 はずっと、弱者であった
小学生の時はクラスメイトから虐められ、
友達からは無視されて散々な生活であった
中学校の時も小学校の奴らがまた虐めて
これがずっと続くのかと思い、
人と話すのがもう嫌になった俺は自暴自棄になり
不登校になってしまった
そうなると自然と中学時代の友達も離れていった
高校生の時は、高校デビューしようとしたがタイミングを見失い俺の高校デビューは失敗に終わってしまった
そんな落ち込む時に俺は現実から目を逸らし
父さんが『メイファン』で作りあげた新作ゲームで
遊び続けていた
小学生の時はRPGにハマり
本当にこういうのを使えることを夢見ていた
しかし、サンタが本当は実在しない架空の人物と
知った時に俺は現実というものを知ることになった
だが、中学生になる頃にはVRゲームが世の中に浸透
していき
VRという仮想世界ならRPGの時に憧れていたものを
自分の身体で体験できるという
新体験に出会った時は驚き、心が弾んだ
そういう理由から
俺の引きこもり時代は
VRゲームに熱中して現実から目を逸らしていた
しかし、VRゲームを遊んでいたおかげで
高校生になった時はオタク友達も作れるようになって
少しは中学時代の嫌な記憶も薄れていた
俺は確実に成長したはずだ
こういう大事になった時にはいつも目を逸らしていた
だが、今の俺は人助けをしようとしている
俺は弱くなくなったはずだ
いやそんな事は無い
俺の弱い部分を受け入れて成長していけばいいだけ
なんだから
「弱い部分...」
先程の俺は攻撃が当たらない理由をきちんと考えずに
自暴自棄になり、攻撃を繰り出していた
考える...
「これか、俺の弱い部分は」
俺はもっと考えて動けば良かった
絶望しても俺は一人ぼっちのじゃないのに...
不登校になる時も、先生や家族に相談せず
(俺の事を理解なんてしてくれない)
勝手に絶望して、周りの意見に耳を貸すことをせずに
不登校になった
VRゲームで遊んでいた時も
幾らでも現実と向き合う機会は沢山あったのに
俺はそれら全てから目を逸らし続けて生きていた
「俺自身を見直すいい機会だな、これは...」
「さっきから何1人でブツブツ言ってんだ!
もういい、さっさっと片付けて俺も組に戻る...」
俺は何度も深く深呼吸する
「1度落ち着かないとな」
さっきから攻撃が当たらない理由は
自暴自棄になりながら、攻撃していた為に軌道が
見え見えだったからか?
それとも呼吸音や一つ一つの動作の音を聴いて
避けていたのか?
いや多分違う、
攻撃の癖が気づかないうちに俺にもできていたのかも
しれない
「それならその癖を直せばいいだけの事...」
だが、癖を直すのは簡単な事ではない
単調な攻撃も悪いことではないが、それに頼るようでは勝てる相手にも勝てなくなる
それなら
その都度、引き出しのように攻撃方法を変えればいい
コイツはこっちの攻撃を見てから攻撃する
カウンタースタイル
「なら、俺からは連続で攻撃を繰り出さない」
カウンターを得意とするやつは急に攻撃が止まると
動きが止まる
「(なかなか、攻撃を仕掛けてこないな 仕方ない
俺から仕掛ける!)」
ナイフを俺に向けて投擲してくる
俺は刀を抜刀して、鞘でナイフを地面に向けて弾く
「殺る気になったのか?
だが果たして俺を殺れるのか?」
俺は刀を構え相手の懐へと走り続け、刀の間合いに
なった瞬間
思いっきり逆袈裟斬りで刀を振るう
「はは、そんな攻撃が当たるわけないだろ!
死にやがれぇクソガキ!」
刀を振るった隙を見逃さずに、俺の心臓を貫こうと
ナイフを刺そうとしてくる
「分かってたよ カウンターが来るってことは...」
俺は刀を手から離し、鞘で相手の鳩尾を突く
「な!クソガキが一丁前にカウンター返しを
しやがって...」
男はそう言うと崩れ落ちる
俺は現実でも、確実に成長することができたのを
実感できた
「って!時間ギリギリ17時5分ヤバイヤバイ
イベント間に合わない!」
すぐさま隠密で姿を消して疾風で
街中を駆け抜け自宅に戻る
「あの人は...
って私もヤバイわね ゲームのイベントに間に合わなくなるわ!」
めっちゃギリギリに完成しました