White Anser【ω】
オルカ・アシモフは探索する。
探索しているのはこの国の中心たる教会であり、『正しく』されど『間違った』行いによって赦しを得るための場所だった。
毎朝定型文と化した懺悔を行い、顔も知らぬ神官から教えを授かり―――亜人を狩る。
オルカがここに来たのは単なる興味と、ほんの少しの恐怖に由来する。
顔の見えない神官の正体に興味を持ち、教会に住まうそれを盗み見てやろうと思ったのだ。
「誰?」
「―――っ」
見つかった。
完全に目が合った。
「貴方は、、、オルカ・アシモフ?」
「なんで知って―――」
「毎朝ここに懺悔に来ていたから、、、ここになんの用?」
興味本位で神官の姿を覗き見に来ました、とは言えない。
「特に用は―――散歩です」
「そう、、、早く寝なさい」
暗闇から現れた神官の姿をよく観察する。
麗しい銀髪に、真紅の瞳―――そして蝙蝠の翼。
「貴方―――亜人じゃ、、、」
「気づかれた以上は貴方を逃がす訳にはいかない―――【■■■】」
静かになった教会の中で、誰にも聞こえない声が虚しく響いた。
やっぱり私の瞳の色は嘘つきの赤だ、と。
■■■■■
「アル様、お時間よろしいでしょうか」
「大丈夫だ、、、君は確か―――」
「アリラです。夜分遅くに申し訳ございません」
夜中に砂漠に適さないであろうメイド服を着た少女が俺のテントにたずねてきた。
「それで、、、なんの用だ?」
「ミモア様が行方不明になりました。現在エイアが集落の外を探しています。最後にミモア様と話したのは貴方でしょうから―――どこに行ったかご存知かもしれないと思いまして」
「残念ながら俺は知らないな、、、探しに行くか?」
「お願いします」
テントの外に出ると、もう日が出始めていた。
「一先ずミモアのテントから―――」
「二人共どうしたの?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
驚いて声の方を見ると、ミモアが立っていた。
「ミモア、、、今までどこに―――」
「散歩。もしかして探してた?」
「あぁ、、、まぁ無事ならいいんだが、、、」
「そう―――」
軽い足取りで外の朝焼けを見に行く彼女は、何処か憂いを帯びたような表情を浮かべた後、晴れやかな笑みを浮かべた。
何故笑ったか、何故憂いを帯びたような表情を浮かべたかは分からない。
「ねぇ、アル。なんで私が喜んでるか分かる?」
「さぁ、、、わからないな」
「それはね―――喜んでいる振りをしないといけないから」
頭の中に疑問符が浮かんだ。
横のメイドも目を見開き、硬直している。
「改めて、自己紹介をしようと思うの」
そうして、涙を流しながら―――されど晴れやかな笑みを浮かべ、自己紹介を始める。
「私の名前はミモア・アシモフ。先祖返りの蝙蝠族にして、オルカ・アシモフの隠匿された姉。それから―――」
そこで、彼女は何を思ったのか―――苦しそうな、水の外の魚のような、或いは水の中に沈んだ獣の様な表情をそっと浮かべて―――それでも尚笑顔を浮かべ直し、言った。
「機械神の眷属にして、貴方達を殺せと命じた教皇であり―――神官」
次回投稿:2025/01/28/23:50
いいねが欲しいかもしれない今日此の頃。
(作者の精神状態的に)