Bleach of your ωing【真っ黒な羽】
この話は書き直しされました。
修正前を読んだ方へ、、、申し訳ねぇっす、、、
教祖様、とは退屈な仕事である―――一日の凡そ九割を教会で過ごし、定型文と化した懺悔に真面目な体で返答しなくてはならない。
この国―――アシフィアの教会の最奥にて、一人の亜人がため息を付きながら、そう日記に記した。
『亜人は悪です、彼らは神に背いたから』
『亜人を殺しなさい、それがあなた達の業を祓うための善行です』
『亜人は人と似て非なる、災禍の象徴です。殺しなさい』
それがこの宗教の『善行』で、主神が世を統べるための『正しい行い』なのだ。
あんな主神、死んでしまえばいいのに―――と心の中でそう呟きながら、日記をつけ続ける。
最近、自分の翼が真っ黒に見える。
本当は紫色なのに。
それは自分が翼を隠しているからか―――或いは、自分が裏切り者だからか。
明確な答えなんて返ってくる筈ないのに、自分に問いかける。
当然、答えは返ってこない。
否、既に持っているのだから返ってこよう筈がない。
自分が裏切り者で、嘘つきで―――穢れている事は誰よりも自分が一番知っていることなのだから。
■■■■■
「ねぇ、アル、、、私は何種の亜人に見える?」
「、、、すまん、分からない」
ミモアからの質問は突発的で、その上で答えようのないものだった。
彼女は耳が長いわけでも、羽が生えているわけでも、獣の耳が生えているわけでもない。
はっきり言ってわからない。
強いて言うならこの辺りじゃ珍しい銀髪であることと、真っ赤な目以外に彼女の身体的特徴は無かった。
「そう、、、」
「何種なんだ?」
「それは、、、内緒」
「そうか」
別に気になるわけでもないので、そこで会話を終えた。
「、、、人の瞳には何が映るか知ってる?」
「随分哲学的だな、、、分からない」
「人の目に映るのは現実と本性。自分の瞳の中には現実しか写り込まないし、瞳の外側は感情しか映さない」
「へぇ、、、それで?」
「私の目は真っ赤。赤は元来嘘つきを意味している、、、だから私はこの目が嫌い。自分自身が立てた目標に背いてしまいそうだから」
真っ赤な嘘、って言葉を表すとでも言うのだろうか。
「目の色なんてそんな気にするものじゃないさ―――別にミモアは嘘つきじゃないだろ?」
「、、、そうね」
そう言って立ち上がると、未だ煙が遮る星空の―――その煙にも負けぬ一等星を瞳の中に写し込む。
「星が好き。星は罪人でも富豪でも―――きっと同じように見えているから」
「、、、そうか」
星を見るのを止めて、今度はこちらに目を向ける。
「あの少女、、、オルカ、だったっけ―――あの子を行かせて良かったの?」
「あぁ」
あの後オルカはスパイとしてあの国を監視しに行った。
秘匿通信で定期的に報告する、と言い残して。
「そう、、、無事だといいね」
「そうだな」
その後、取り留めのない話をしながら夜を明かした。
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罪悪感が収まらない。
その罪悪感が好意からくるものか、それとも『正しくない』行いをしているからか―――最早、答えなどどうでも良い。
大切なのはどちらかを裏切る判断をしなくてはならないということだけだ。
「私は―――」
なんで引き留めなかったんだろう、という言葉が喉元で止まる。
引き止めてはいけないことは、自分が一番知っているからだ。
何が懺悔だ、馬鹿馬鹿しい。
あんな神に祈ってなんになる。
真っ赤な夜空が、瞳に映っている。
やっぱり私は、、、嘘つきだ。
翼はすっかり真っ黒に染まった。
瞳は相変わらず自分の嘘を映している。
それでも護る。
ただただ護る。
それだけが私に許された最後の抵抗なのだから。