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Memories ∑den【Prelude to Moment】  作者: Victory Declaration,
第一機械:World Changer
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Bleach of faith【魔女による魔女の為の魔女狩り】

 集落が移動してから凡そ一週間が経った。

砂漠と言っても案外食料は豊富で、そこら辺の魔獣やら植物を狩るだけでも充分生活できた。

夜には毎日宴会が開かれ、亜人達と仲良くなるのにそう時間はかからなかった。



そんな集落が、燃えている。

雲一つ無い星空が、真っ赤な炎と煙によって徐々にくすんでいく。


「何が―――」

「アル!軍が、、、調査隊が来た!」

「随分早い、、、お前らは逃げろ!ミモアに連絡を―――俺は連中と一戦交えてくる!」

「了解!」


改めて状況を確認する。

燃えているのは集落の西のテントだ。

音からして既に戦闘が始まっている。


「『虚弾(セミリアル・バレット)』!」

「―――っ!」


()()()()()()()()()()()()()()()

この声を聞いて絶望したのはこれが初めてだ。


「アル、、、どうして裏切ったの?」

「、、、さぁ?どうしてだろうな」

「真面目に答えて!『(溝よ、この場を)(外界より隔てよ)』!」


俺とオルカを真っ黒な膜が包み込み、月の光を遮る。


「おいおい、、、なんでわざわざここに結界を張ったんだ?俺を足止めしたところで無駄だぜ?―――今頃外の連中は死んでるだろう」


亜人の身体能力は人以上であり、先の襲撃で警戒もしていた。

その上武装までしていたとなれば、人間程度に負ける要素はないのだ。


「知ってる。ここは私とアルの二人だけの空間―――いや、アルと私が話すための空間なの。わかってくれる?」


自信も明るさも無い笑顔をこちらに向けて、彼女はそう言った。


「わかった」

「ありがとう、、、ねぇ、アル。なんで突然皆を殺したの?」

「、、、その質問に答える前に俺の質問に答えてもらおうか、、、なんでお前らは亜人を殺そうとするんだ?」

「やっぱりおかしいよ、アル、、、なんで神様の言うことが聞けないの?」

「お前は神に言われたら仲間であっても殺せるか?、、、いや―――」


こいつにするべき質問はこんなものじゃない。

こいつの行動をよく見ろ―――()()()()()()()()()()()()()()()()


「なぁ、アル―――何時であろうと邪教ってやつは異端者を殺そうとするらしいが―――お前らのところはどうなんだ?」

「―――っ」


ほらやっぱり―――息を呑んだ。


「お前はこの場所を俺と話すための場所だといったが―――お前は本来俺を殺さなきゃならないんじゃないか?」

「、、、」

「その上で聞こう―――お前は神に命じられたら俺を殺すのか?」


時が止まった様な感覚が、空気感という言葉で表される。

相棒にこの言葉を放つというのは―――あまりにも残酷だと思う。


「、、、殺せる訳ない」

「ならどうして―――」

「おかしいのはアルだよ、、、なんで皆を殺したの?仲間でしょう、、、?」

「亜人が何をしたんだ?殺す必要なんてあるか?」

「ある、、、だって亜人は機神様に逆らったんだから―――」

「逆らった?」

「そう。機神様が死を望んだのに亜人は死ななかった、、、だから亜人は叛逆者―――そうだって決まってる」

「おいおい、、、それじゃあお前がやってることと亜人のやったことになんの違いがあるんだ?殺したくないから殺さないのと死にたくないから死なないことにそれほど大きな差があるか?」

「それは―――」



「ほら、俺を殺してみせろよオルカ―――オルカ・アシモフ!!」


オルカに自分の銃を握らせ、額につける。

リボルバーには六弾弾が入っており、もしオルカが引き金を引けば俺は死ぬ。


けれどその『もし』は起こり得ない。

そう、起こり得ないのだ。


「殺せる訳無い、って言ったでしょ―――アル」

「ならお前は亜人を殺せないな―――何せお前も神に逆らった叛逆者なんだから」


がっくりと、膝を折り―――そして地面に手を付き項垂れる。

彼女が感じているのは自責か、それとも後悔か―――なんにせよどうしようもないという諦念に繋がり、心が砕ける。


「ねぇアル―――私を殺して」

「何のためにだ」

「何のために?そんなの決まってる!私が背信者だから―――」

「ならお前を殺すのは信者の仕事だろう」

「それは―――」


数秒、沈黙する。


「やっぱりお前は戦場に向いてないな、オルカ」

「こんな時に何を―――」

「楽観的で情動的で、何より周りが見えてない。虚勢で笑顔を向けてくるし、無理やり明るい声を出して周りを元気付けようとして自分のことが見えてない。盲目なんだよ、お前は」


目を見開いて、こちらをじっと見ながら―――涙を一筋流す。

それと同時に周囲との関わりを根絶していた結界にヒビが入り、光が互いの間を照らす。


「ならどうして私とペアに―――」

「お前以上の善人なんて居ないからだ。俺から見ればお前は機神様とやらよりずっと善良だ。だからペアに選んだ」

「善良な事と役立つかなんて―――」

「関係ない。けれどお前のその善良さが俺を救ったんだ―――戦いの後にお前が笑顔でこっちに駆け寄ってくるって、それを心の支えにして戦ってきたんだ―――お前は俺の日常を守るために戦ってくれたんだ」


オルカが息を呑むのと同時に、結界が完全に壊れる。

明るい月の光は互いを写し、足元に影を作った。


「ねぇ、アル―――私ともう一度ペアになってくれる?」

「勿論だ」


その言葉とともに、聖戦の狼煙が上がった。

Bleach of faith……意味:背信(自らの神に背く事)

魔女による魔女の為の魔女狩り……意味:(無意識な)背信者による(無意識な)背信者の為の背信者狩り

暗渠……人工的な堀

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