無能
<標的確認、思いのほか近くにいた!>
と言って帰ってきた青い鳥。わたしの青い鳥は今頃索敵を終えたようで、いつも通りダビデの頭の上に留まった。ポンコツはバディのダビデだけでなくわたしの青い鳥もポンコツなのだ。
「これは参りましたね。またしても負けてしまった」
ダビデの言う通りわたしたちは負けた。負け続けて負け続けて、今回で記念すべき三十連敗。それもこれも、わたしが教育することになったこのGG国出身の新人――ダビデが十割悪い。
<負けた負けた、ハハハハ。雑魚雑魚、イェーガーチームはワタシがいないと雑魚>
索敵ドローンのくせに仕事していないこの子も十割を超える悪い子。この機械鳥どうしてやろうか? 焼いても食べられないし、廃棄して新しい索敵ドローンを買うにしてもお金が足りないし……ほんと、今月は娯楽を捨てて衣食住で限界。ん? 娯楽が無くても思いのほか幸せか。いやいや、娯楽無くしてヒトはこころを満たせない。
あぁ、《古事記》の一ページだけでもいいから欲しかったな。昔の本って、今の時代もの凄く高いのよ、と言うよりデジタルしか出回らなくなってからの書籍は木ノ國からの輸入だけになっちゃったから高額なの。あぁ、わたしの古事記わたしの娯楽、欲しかった。
「いやいや、ある意味勝ちましたよ。大穴狙いでぼくに賭けた人が数人いたらしく、ぼくの口座へ賭け金の五分の入金がありましたよ」
<やったなダビデ、やったなダビデ。今日も猫まんま猫まんま、先週からずっと猫まんま>
「あはははっ、先週から猫まんまを食べていることを知っている君はぼくのストーカーなのかな? 随分と優秀な青い鳥になったものだね」
<ハハハハ、ワタシには高級オイルを頼む。ダビデには猫まんまがお似合いだ>
「食べられるだけ素敵な生活だよ、働かないで食べるご飯は最高なんだよ。あはははっ」
<ふむふむ、イェーガー、ワタシも猫まんまを食べてみたいぞ。ハハハハハ>
とダビデと青い鳥は笑う。負けても笑ってドローンにバカにされても笑って何かあれば笑ってと、笑ってばかりいるダビデは諦めるとして、どうしてわたしの青い鳥はダビデに似てきているのかしら……飼い主はわたしなのだけど、どうしてAIがこんなにも感情豊かになったのかしら。高級オイルじゃないから働かないとか? いっそのこと猫まんまを食べさせてみるとか? そもそもどうして上位の中の上位だったわたしが中位の下まで落ちているの?
「…………はぁ、もうどうでもいいわ」
わたしは深く息を吐き、諦めの言葉を口にしたのだ。ついでに明日の朝食に猫まんまを口にしようと決めたのはわたしだけの秘密。
さて、一息つきたいところではあるが、観客の御方々にわたしがどのような生物かを語る約束をしているので、休憩なしで残業といきましょうか。残業代は出ない? もちろん分かっている、これが大きくも小さくもないわたしの会社の歩合制であり裏社会に首を突っ込んだ者たちの上か下かのランキング制。