当然の結果
追う側のわたしたちに報酬が用意されているように、追われる側にもわたしたちを逆狩りした報酬がある。ということで今回の標的はダビデを逆狩りして報酬を獲ようとしたのだろう。
「おやおや、最下位の者が有名になってしまうとはこれ如何に」とダビデ。
「あなたって逃げるの得意でしょ。ケガもしないし何も役に立たないし」
「チームなのでお互い様でしょ。社会貢献なんて実際はチームでやっていることですからね」
こいつ、いつの日か絶対に引っ叩いてやる。
そしてわたしは自分を引っ叩くのだろう。なぜ引っ叩くのかって? 落ちぶれたイェーガーとして有名になったからです、ブランドからハート、ハートからダイヤと落ちてしまいましたとさ、まったくめでたくないけど、上位の中の上位でいた時よりなぜか有名になったな……中位って最低に輝いているのかも。
「そうね、わたしが悪かったのね、ごめんなさいね」
「悪いことはありませんよ、悪いのはセカイです」
いや、あなたが悪い。悪いのはダビデって言ってやりたい、教えてやりたい諭してやりたい。
ダビデと組む前はずっと独りで頑張っていたのに、どうしてこんなにも使えない新人を教育しなくちゃならないのよ――いや、わたしが悪いのだけど。というか紹介するなよ、これまでのわたしの成績を見たうえで紹介したなら文句言えないけど、このまま良い暮らしをしていたら再来月には貯金が底を尽きてしまうでしょうよ。
「接敵が多いあなたは観客の目を引くのよ。通りの曲がり角でごっつんこって天然な接敵はあなたくらいしか実現不可能でしょ。つまり、ヒトのこころが見せる幻想的な恐怖があなたなの。だからね、もうちょっと責任を背負ってくれる?」
禍津祓では何が起こるか分からない、だから観客は面白がる。そしてプレイヤーのわたしは観客を楽しませて報酬を受け取る。面白いか面白くないか、賭けているか賭けていないか、そんな感じで将来何が起こるか分からない。
「責任取りなさいよってことですか……ではこの後ご飯を奢りますよ」
あ、ほんと? ラッキー。なら少しくらい木魂術を使っても大丈夫ね。
<――決まったー! ロールハイツだ!>
『え?』とわたしとダビデは声を揃えた。
<後ちょっとのところまではいく、それがイェーガーチーム。ということで、今回の禍津祓勝者は――最上位十人のドクが率いるロールハイツだ! このチームはウケモチだけのメンバー構成だというので、賭け金の倍率はいまいちだ。しかし活躍活躍の番狂わせ、少なく賭けては儲からないが大きく賭ければ儲かる、それがロールハイツ! 賭け初心者にもおすすめできるスペードブランド。いやー、今回のイヴィル・ハンティングはいかがでしたか? 元スペードブランドのアドラさん>
<そうですね、今のロールハイツは司令塔のドクの鼻が良すぎる印象です。情報を隠したところで追ってくる点は流石ですね。メンバーのビショップとマスコットも裏方としてドクの鼻が裏目に出ないようにサポートできているので、このまま行くとロールハイツは今後のハンデでより一層難しい課題を背負うことになるかもしれませんね。それか独立するか、新たなメンバーを集めてかつての仲間と相対するとか、ロールハイツは今の時代注目するべきチームなのは間違いありません>
と、わたしとダビデが会話に花を咲かせている間に、丁度下の階で標的が削除されてしまったらしく、次の禍津祓開催まで実況が雑談をしている。
このビルも可哀想に、これで自殺者の他に死者が六名追加だ。ヒト喰いのビルと言われるだけあってヒトが死んでいくなぁ。
(いや、そうじゃなくてこの状況はなんだ……)