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約束に疲れた私に待っていたのは、いつもコーヒーをくれる人でした  作者: サトウアラレ
第2章

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1

瑠生さんの宣言通り、瑠生さんはまた仕事が忙しくなっていた。


「鳥飼さんの部署、外部の人間も多く入ってるわねえ」


「凄いですね。忙しくなるとは聞いてましたけど」


「大きなプロジェクトみたいよ」



田中さんと話しながら、瑠生さんの部署に色々な人が出入りしてるの見たが、他の部署もすぐに少なからず忙しくなった。



「鳥飼さんの所の課長、本当、人を使うのが上手いのよね」


田中さんが回って来た仕事を見ながら、つぶやいた。


「人の出入りが凄いですね」


「まあね。今回は鳥飼さんが課長と取って来たって話も聞いたわね。まあ、二人で詰めた仕事かしらね」



田中さんがそう言いかけた所で瑠生さん達が歩いてエレベーターの方へ向かっていくのが見えた。


(瑠生さん)


呼びたいけれど、呼ぶことも出来ず、田中さんの背中越しに目線を送って歩いて行くのを目で追った。


瑠生さんが何人かと連れ立って歩いていて、ロングヘアーの女の人が瑠生さんの腕に手を置いて、話しているのが見えた。


モヤっ。


胸の中がモヤモヤとしたが、ボディタッチが多い人はいる。見慣れない人達だったから、今回の仕事関係の人なんだろうな。



「あ。楠木ちゃん。私、来週から、またリモートなの。多分これから、週二出社になると思うわ」


「そうなんですね。ああ、山本さんと交代ですか?寂しいですが、了解です」


「ええ。山本君と交代出来そうなのよ。暫く姉が出張が多くてね。急ぎの仕事は終わらせて行くわ。楠木ちゃんに迷惑掛けないようにしていくつもりだけど、フォローをお願いします」


「ええ。任せて下さい。山本さんにも画面越し意外に会うのは久しぶりです」


田中さんと仕事の確認をし、日吉田が田中さんの仕事を一部共有する事になった。日吉田は田中さんがいない間は、田中さんのデスクを使うらしい。


「ワーイ。せんぱいの隣だー、嬉しいー」


「日吉田君。私がいない間、だけだからね。こっちの方が仕事の効率がいい時だけよ?普段は自分の机を使っていいわよ」


「はーい。田中さんも、心配しないで安心してリモート頑張ってくださいねー」


コテンと首をかしげ、ニコニコ笑う日吉田は、お姉様達に大人気らしい。


「はあ。まあ、いいわ。これくらいの刺激は大丈夫でしょ。楠木ちゃん、宜しくね。山本君にもしっかりお願いしとくから」


「はい。大丈夫ですよ」


それからあっという間に週末になり、瑠生さんは珍しく休日出勤になったと連絡がきた。最近は用がなくても私の部屋に来てたのに、今週末は一気に予定が空いてしまい、私は部屋の掃除をする事にした。


『ユイさん、俺、ユイさん不足よ。暫く俺、出張が続きそうなのよ。来週は福岡に行ってくるけど、お土産は何がいい?』


ショボーンとした猫のスタンプと一緒に瑠生さんからメッセージが送られてきた。


「え。瑠生さん、福岡行くんだ」


『気をつけて行って来て下さいね。お土産は、無理しないで下さい。期間は長いんですか?』


『んー。一週間行って、こっちに戻ってきて、で、今度は近場をウロウロと回らなきゃいけないのよ。福岡土産何がいい?』


「お土産は別にいらないけど・・・。元気に早く帰ってきて欲しいって送るのは、ダメかな・・・。ああ、誕生日の事は聞かない方がいいのかな」



メッセージを読み、カレンダーを確認する。


一ヵ月半後が瑠生さんの誕生日。


大きな仕事と言っていたから、一ヵ月で終わるとは思えない。


半年位は出張でいったり来たりするのかな。



『もう少ししたら、落ち着くと思うのよ。そしたらまたユイさんちに行ってもいい?』


『瑠生さん、忙しい時は疲れてませんか?家でゆっくりしたほうがいいんじゃないですか?』


『あれ?忙しくて、疲れてるからユイさんに会いたいのよ。俺、ユイさんに今でもすぐに会いたいもの』


「はわ。瑠生さん」



瑠生さんからのメッセージで、ニヤニヤしてしまう。ベッドの上で枕に顔を埋めた。


瑠生さんはすぐに好きとか会いたいとか、気持ちを真っすぐに伝えてくれる。それが恥ずかしくて嬉しくて、私は一人で足をバタバタしてしまう。


学生でもないのに瑠生さんの言葉一つで浮かれてしまう。



『私も、会いたいです』


そうやって送ると、ゴロゴロ猫が転がってるスタンプと、投げキスをしているスタンプと、『お土産にはご当地お菓子を買って来るからね』と送られてきた。


「はは」


瑠生さんに会えなくても、こうやってメッセージを送ってくれたり、電話をしたり、私は胸の中のモヤモヤもどこかに飛んで行ったと思っていた。


でも、それはやっぱり気のせいで、モヤモヤの種はしっかり根付いていたのだった。



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