第3話 コーダー、理解する。
右も左も分からないまま、超テンプレのファンタジーな世界へ送り込まれて二日にして、俺は貰ったスキルの凄さに気付き震えている。
レティちゃんが落とした穴が繋がっていたのは、森だった。そこで何かと戦っている一行と出くわした……と言うか、そのパーティーが戦っている場の上に俺が落ちた。派手に落ちた先にはおっぱいがあったおかげで、俺はあんまり痛みを感じることなく着地することができた。
俺は出来る限り神経を研ぎ澄ませて大きな弾力のあるふわふわおっぱいを堪能し、その凶暴なおっぱいを持つ魔女っ娘に「お願いですから、降りてください」と、恥じらいながら言われるというご褒美まで戴いてしまった。
戦い方なんて良く分からない俺は、そこらへんの石ころを投げて魔女っ娘たちの敵だろう奴らに投げつけた。百発百中のスキルのおかげで全ての石が敵に当たり、それが加勢になったらしく劣勢に見えた彼女達は勝利した。
俺の加勢で勝てたからとラッキースケベについては特に何も責められることもなく、剣士と槍使いの男二人・白魔道士と女戦士と弓使いの女三人というそのパーティーに、街まで同行させて貰えることになった。
それからが凄かった。
休憩時間にうっかり女の子らの水浴びに行き当たる。薪を拾うために森に入れば女戦士の排尿行為に出くわす。冷めたスープを温めようとして蹴躓き、弓使いの子に白濁液を頭からぶっかけたばかりか、ぶっ倒れた反動でスカートの中を堪能させてもらう……という、思いつく限りのラッキースケベを俺はぶちかました。
なのに、これだけやらかした俺を誰も責めない。むしろ哀れな目で見てくる。何も知らない事を説明するのが面倒で、記憶喪失としたおかげで「かわいそうな人」という立ち位置になっているようだ。
俺的には、もうちょっと「キャー!」ってビンタされたりとか、女戦士に投げ飛ばされたりとか、そういうのも悪くないんだが……まあ、なんだか知らないが俺は相当なラッキーみたいだ。移動の合間に聞いたこの世界の仕様はこうだ。
まず、この世界には魔法がある。魔導士という職業があるのだから、あるのだろう。実際に俺は魔女っ娘が魔法を使っているのを見ているし、剣士が火を纏った技を使っているのも見たので信じるしかない。
それから、一人一人にステータスボードがあるらしい。これは教わった通りにしたら俺にも出現したので疑いようがない。
俺のステータスは割と高い方らしく、レベルは36。職業は希望通り「コーダー」だったが、そんな職業は誰も知らないと言われた。スキルの欄には、ここにも俺が頼んだ「百発百中」のほかに「ラッキースケベ」という項目があった。なるほど、レティちゃんが勝手にスキルを追加したらしい。
ちなみに、ステータスボードは人に見える部分とそうでない部分があるそうだ。スキルは能力の開示が必要な時以外、他人には見えないらしいのでセーフだったが、これを同行の女子三人に見られてたら絶対アウトだと思うぞ。
しかし、このステータスボードというのは本当に見にくい。全く整理されていないばかりか、装飾もないから表計算ソフトの画面を見ているみたいだ。この画面を何とかしたいと思った事が俺の無双の始まりだった。
見やすく手を加えたいと思ったその瞬間、何もなかった目の前に一台のノートパソコンが出現した。そのパソコンを手にすると、俺の頭の中にこの世界の構成が流れ込んで来て、全てを理解することが出来た。
この世界がウェブでプレイするタイプの横スクロール型ゲームの世界で、多くの構成がHTMLとJavaScriptで出来ていると言う事を。
コーダーという職業の俺は、ある程度の物の形なら修正・変更することが出来るという、事実を。