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17歳の遺書。  作者: UnO
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 ――悪いところばっかり見て、いいところを忘れてしまうから、世の中の人はきっとすぐに死にたくなってしまうんだと思う。かと言って、良かったことを思い出してみよう! きっと生きたくなるよ! とは言えない。私自身がそうであるように、そんな気休めの言葉を言われても鬱状態に入っている時は「あんないい事もあったな、こんな事もあったな。楽しかったなあ。良かったなあ、本当にありがたい! さっさと感謝だけを残して死のう!」になってしまうので。本当に何を言っても意味が無い。


 明るい状態の時でも、漠然と死にたいがベースにある。そんな人間と友達になりたい。うっすらと死にたいが付きまとってくる生活は楽しいけど、一瞬で意識がそっちに持っていかれそうになることがある。そっち、というのは死にたいという思いが強くなる、鬱状態のときを指す。もちろん人前でこのモードに切り替わることは無い。明るい私だけを見てほしいので、人前ではあまり弱音は吐きたくないのだ。


 死にたい、という感情を他人に露呈することはそうそうない。なのでこれを書いている。秘めたものを吐き出して、暇な誰かの目に止まって、少しでも共感してもらえれば幸せなのだ。あわよくばこれが伸びて、承認欲求が満たされれば嬉しい。けどそうやって評価ばかり気にするのも嫌なので、私は基本SNSで何かを発信する時は全ての通知を切り、投稿自体を忘れようと頑張って、無かったことにしてしまう。かなりひねくれている。


 私の友人に、私のような人がいる。


 その子は大勢で明るい話題を話す時に大きなため息を付いてから「しんどい、家族が嫌いすぎて全員殺してから死にたいと思ってる」と突然口にするタイプだった。


 正直面倒な奴だと思っているが、何故辛さや悩みは理解できるのに私はその子に情けをかけてあげられないのかが分からないのだ。けれど、これを書いている時に思い当たる節があった。その子は、私に共感を求めるように、暗い話を投げかけてくるから、嫌なのだと気づいた。


 私は、人前では明るい女でありたい。何も辛いことはなく、少し馬鹿で、辛いことなんてなさそうで、ただ笑っている女でいたいのだ。この先の未来も笑って笑って、のらりくらり生きて行けそうな女だと、そう思われていたい。のに、その子は私に、過去に一度口にしただけの、リスカしたことがあるかないかの質問にはい。と答えてしまったその一度だけの答えで、私をリスカ経験者として巻き込もうとしてくるのが許せなかったのだ。


「おまえは、どうやってリスカしたの?」


 その、大勢の前で放たれた一言が、多分許せないままでいる。そして今でもネチネチ引きずっている。結構、恨みを持っている。けれどもその子は、普通に根が良い子なので友達のままでいる。私を巻き込もうとするのはその子が悪いと思って信じてやまないけれど、その子が死にたいと思ってしまうのは死にたい、と思わせる社会が悪いので仕方がない。


 関係ないけど、趣味が人間観察なんてほざくやつに限って私に悩みがなさそうというのはやめて欲しい。これは普通に、ただの愚痴である。脳天気な女だとは思われていたいが、何も考えてない女だとは思われたくない。そんなどうしようもない、ただのわがままである。


 私が死にたいと思う時、それは家族関係のストーリーを目にした時だ。簡潔に言うと、私は親がいないと生きていけないので、親の体が悪かったり、親を失う描写があると未来が一気に暗く感じてしまう。


 親がいないと生きていけない、とはただのマザコンやファザコンもあるが、普通にただのスネかじりだからだ。


 私の家庭は、別に裕福ではない。両親は既に離婚していて、仲はかなりわるい。母親は生活保護で生きていて、父は週六で働き、たまに深夜の一時にも仕事に出ている。あ、サラリーマンではないので、鬼のブラック企業だったり、残業している訳では無い。あとは兄もいるが、兄とは仲良くないのでなんの仕事をしているかはあまり分かっていない。結構な頻度で出張として他県に行っていることは知っている。ただそれくらいの知識しか、本当にないのだ。


 兄も私も、ついでに母も散財癖が凄い方である。あればあるだけ使うタイプ。そんな私たちに父は毎回金を出して、助けてくれている。そんな状況に私はまた死にたくなる。


 父の負担を考えれば、さっさと働いて仕送りをして、楽にさせてやるべきなのに出来ないのだ。私は働くことが出来ない。何をやっても三日で辞める。何も向いていない。愛想だけが取り柄なのに、そもそもバイト先まで出向くことすら出来ない。また、頼めば深夜でも料理を作ってくれる母のように、毎度部屋をゴミ屋敷のように散らかしてしまっても、遊びに出かけて帰ってきた時にはホテルのように整理整頓されて綺麗にしてくれている母のように。指先も荒れて、たまに料理で怪我をしても家事を続けてくれる母のように、なにか家の事をしようと思っても何も出来ない。それがもう鬱になる。


なので、親関連のストーリーはからっきしダメなのだ。


 親が死んだ後、どうするのか。

 そういう話題が出てしまうから。


 いつも私は、こう言われた時「どうしようね、生活力なさすぎて野垂れ死ぬなきっと。誰かに養って貰わないと! あー! ヒモになりたい!」なんて言って、茶化して誤魔化しているが、実際は親が死ぬより先に死ぬしかないなと思っている。


 そして、これもまた急だが、上記のような事がある為に将来のことを尋ねられた時に、その時には死んでいたいので何も考えてない。と思いながらそう言うことが出来なくて、ただ困ったあと、在り来りな答えを返してしまう人と友達になりたいのだ。こんな人は将来どうするの?などとは、聞かないはずなので。

 




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