表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/31

ホビットの村は合ショタ・ロリ祭りだぜ!!

 トントントン

 時は寒気、ホビットの村。

 村共有の炊事場にて迅は()()()の朝食を作っていた。

 包丁で生野菜をカットし、酢で味付けする。

 七輪で串焼きにしている鹿肉はいい匂いを醸し出している。

 汁物としてこちらで教わったシチューが煮たれば朝食は完成である。 

 煮たるまで待っている間に物思いにふける。


 あれから1ヶ月が過ぎた。

 最初は全く言葉が通じなかったが今は何とか会話が出来る。

 村の人間――低身種のホビット族という種らしいが協力的だったのが幸いといえる。

 アイリスが村長の従妹だったのも影響しているが。

 彼女たちを救った英雄でもあるし、それを笠にやりたい方題しなければ友好的な環境は維持できる。

 問題はこれ以降のことだ。

 まず、こちらの言葉を完全に覚える。

 会話だけでなく識字も。

 その後はどうするか、だ。

 1ヶ月を「まだ」と捉えるか、「もう」と捉えるかの答えは出せずにいた。


 グツグツ。

 シチューが出来たようなので火を止めずに、鍋をどかす。

 炊事に使う火は固形燃料を使用しているため、待っている人が居る場合は火は消さないのだ。

「空いたよ」

「アリガトウ」

 待っていたホビット族の人妻が鍋を載せる。

 どう見ても子どもにしか見えないが、自分より年上で子持ちである。

 ホビット族は皆こういう子どもにしか見えない容姿ばかりだ。

 低身族は他にも居るらしいがまだ会ってはいない。


 シチューを汁物皿、野菜と串焼きの主菜と副菜を載せた皿、茶碗にお米をよそって完成した。

 食生活が自分の居た世界と大した差がないことは迅にとって気付かないレベルで安心感を与えている。

 三人分の朝食をお盆に載せ、自分が厄介になっている村長宅に向かう。

「オハヨウ、ジン」

「おはよう、ラーク」

「イイアサダナ、ジン」

「そうだな、ルフ」

 道すがらに会ったホビット族たちに挨拶を交わしていく迅。

 1ヶ月ではあるが随分溶け込むことが出来た。

「ソウダ、ジン。タノマレテイタノデキタゾ」

「凄いな、一昨日に頼んだばかりなのに」

「アレダケチミツナセッケイズト、ジツブツヲミセラレタラスグニデキル。ホビットゾクヲナメルナヨ」

「ありがとう。後で取りに行くよ」

 迅はホビット族の技術力に驚嘆しながら歩く。

 村について村長宅の一室を借りた迅が真っ先にしたことが鞘の解体である。

 紫電が出来るかどうかを調べるために解体したところ、予想通り部品が破損していた。

 熊との戦いの時に使わなくて正解だった。

 村で農業や雑用を手伝いつつ、その間に作業していたが[雷光衆]の里で使用していた専用の工具がないこともあり、製作作業は難航した。

 どうにも上手くいかないことに悩んだ迅は、この際技術をホビットの皆に提供し、協力してもらうことにした。

 本来なら禁忌である技術提供は単純に色々与えて貰っている分の恩返しもある。

 だが、何らかの都合で元の世界に生きていることをわかるようにしたかった、という気持ちが無意識にあったのを自覚できなかった。


 村長宅のリビングの机に作った朝食を並べる。

 次は同居人を起こすターン。

 村長であるリオンのドアをノックする。

「アイテルヨ」

「いえ、起きてるならいいです。朝食できましたのでアイリスを起こしていただけますか」

「ワカッタ。マッテテクレ」

 アイリスの起床を従兄であるリオンに任せる。

 この1ヶ月、朝は弱いアイリスが自ら起きたためしはない。

 異性が起こしに行くことの問題を考えると、リオンに丸投げするのが正解だった。


「いただきます」

「イタダキマス」

「コノヨノジュンカンニカンシャヲ」

 それぞれの形で食事の挨拶をする。

 アイリスは迅の日本人特有の「生命をいただく」という形の「いただきます」に感銘を受けてから使うようになった。

 リオンのは弱肉強食による循環を元にしたモノで、この世界では彼が一般的である。

 何故、アイリスがそちらに傾倒するようになったかは定かではない。


「トコロデサ」

 他愛のない談笑を加えた食事の最中、真面目な口調になるリオン。

「ジンハコノアトナンカヨウジアルカ?」

「この後はラークから頼んでいた部品を受け取って修理。あとは仕事の手伝いの有無を訊ねて手伝いするぐらいですね」

「ナラ、カイダシヲオネガイシタイ」

「アッ、モウソノ時期カ」

 アイリスが何かを思い出した。

 村ではアイリスと話す機会が一番多いため一番言葉がわかりやすい。

「時期っていうと?」

「イチガアルンダヨ」

「ソレデ、塩トカ必需品ヲ買ッテクルノ」

「アイリストフタリデタノム」

「了解です」

 買い出しするにもこの世界の商品価格を把握してないし、何よりまだ識字に難がある。

 また、地理の問題もある。

 誰か必要なのは当然だった。

 ホビット族の体格としては荷物持ちは当然居るだろう。

「そういえば、俺居ない時はどうしていたんです? アイリスたちホビット族の方々だと大変でしょう」

 ふと気付いた疑問。

 自分が来る前の対応方法はいったいどうして居たのだろうか。

「モンスターハンターヲヤトッテイタ」

「モンスターハンター?」

 元の世界では聞き慣れない単語が出てきた。

「モンスターハンタートイウノハ、名ノ通リモンスターノハンター。依頼トカデモンスターヲ狩ッタリ、色々ヤッテクレル。買イ出シデハ送迎ト荷物持チ両方ヤッテモラッテイタノヨ」

「ソノブンタカクツイタ」

「なるほど、相当節約できそうな話だ」

「ソウイウコト。ショッキハワタシガヤルカラ、ジュンビシテクレ」

 リオンの言葉に二人は頷く。


 昼前、二人は村の入り口に居た。

 そこには見送りに来た村人たちも居る。

「マニアッタネ。ハイ、オベントウ」

「ありがとうございます」

 用意されたお弁当を頂く。

 今から歩いて明日の朝に着く予定なので量も多い。

「ジャア、ジンオ願イ」

「了解」

 アイリスが杖を折り畳み、迅に抱っこを要求する。

 あの日以来、アイリスは足の負傷で杖を欠かせなくなってしまった。

 だからこそ、ある程度の距離を行くときは迅がアイリスを抱えて行くことは珍しくない。

 特に、今回は村の外、半日以上かかるのでアイリスの歩測だと明日の夜になるのは可能性は高い。

 この形は正解だった。

「行ってきます」

「行ッテキマス」

 二人は村の人たちに見送られて先に向かった。


「グギャャー」

 その深夜、市に売られる筈だった商品の家畜が姿を消した。

 あとに残ったのは大量の血痕と()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ