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サトリ草を一年食べ続け、サイコなフレームがあれば隕石の一つぐらい押し返せます!!

「ん」

 アイリスの腕の中で気絶していたシリウスが目を覚ます。

 アイリスはどう状況を説明するか悩む。

 相変わらず褌男――今は全裸男は勝利の雄叫びをあげている。

 正直、早く褌を締めて欲しい。

「シリウス大丈夫?」

「……はい、大丈夫です。なんですこの声は」

「駄目、見ちゃ!!」

「えっ。キャャァァァ」

 妹分が見てしまった。

 助けて貰ってなんだが、早くしまえよ馬鹿野郎。


 感情のあまり、勝利の雄叫びを上げていた迅は悲鳴に何があったか振り向く。

 叫び声をあげた子どもとは対照的に、少女は子どもをなだめつつ変態を見るキツイ視線を向ける。

 その時点で迅は今の自身の状態に気づき、熊から褌を剥ぎ取った。

 褌を締め、服の乾き具合から着ても問題ないと判断し衣服を着用する。

 しっかりとした服装になったが、言葉もわからないこともあって気まずい状態である。

 どうすればいいかと悩んでいると、少女がバッグから袋を取り出し、葉っぱを左右に一枚一枚掌に乗せた。

「ダッツギオレワド」

 動作から左右のどちらかを選ぶよう指示しているのはわかる。

 なんとなくで右を選ぶ。

「ヒウ」

 右手に持っていた葉っぱを渡される。

 残った左の葉っぱは少女自身が食べた。

 ゴクン、と飲み込んだのを喉の動きでわかる。

「イニチマチボト」

 ジェスチャーで食べるよう指示される。

 同じところから出したことから毒を仕込んでいる可能性は低い。

 元々、偶発的な出会いであるため仕込む動機もない。

「シッシタケオ」

 悩んでいると、こどもに無理矢理口に押し込まれる。

 ゴクン、と押し込まれた飲み込んだ。


(食べてくれたね。これで会話できる)

(!? どういうことだ?)

 頭の中に声が聞こえ、驚く。

 あまりの事態に狼狽えるが、優しく親が子を諭すような声色が頭に聞こえる。

(ごめんね、今食べさせたのは[サトリ草]という食べたら他者の思念が聞こえる草なんだ)

(……そんなモノを何故?)

(そりゃ、こうして話をするためさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 別世界。

 やはりここが自分の居た世界とは別なんだと指摘され、実感する。

(別の世界か)

(あぁ。ちなみに、たまにあることなんだよね。君みたいに向こうから来るのも、行ってしまうのも)

(確かに、そういう噂のある場所からここに来たからな)

 迅の返答に、少女は子どもの手を借りて立ち上がる。

 その時に痛みの感覚を迅は感じた。

 やはり、足を怪我している。

 無意識のうちに迅は手を伸ばして少女を支えた。

(無理はするなよ)

(すまない。ちゃんと頭を下げて礼がしたかったんだけど難しいみたいだ)

(別に気にすることじゃない)

(いや、必要なことだ。君がどのような理由でここに来たのかわからない。だが、君のお陰でわた、……妾とシリウスの命は助かった。だから本当にありがとう)

 それは単純に命を救ってくれたことのお礼の言葉。

 だが、迅にとってはまた別の意味も含まれていた。

 その理由が迅自身にはこの時理解できてなかった。

 だから、自身が涙を流していることを迅は気づかなかった。


(大丈夫か?)

(こいつ何なの?アイリスお姉さまが色々してくれてるのに泣き出すなんて)

「シリウス!!」

 少女が子どもをたしなめる。

「ドマ、アノオシミ。ヲチスヒニスヲキリニウワドセヤ」

「イタドアスオレキリ、ウミヒノ」

「……ヒウ」

子どもが二人の目に入る範囲ではあるが少し離れる。

 思念が聞こえない位置に移動したのだ。

(すまないね。妾と君としでしか会話できない状態でだったから嫉妬されたみたいだ)

(いや、大丈夫だ……なんで泣いていたのか自分でもわからなかったし)

 互いの思考にも沈黙が流れる。

 先に思考が走ったのは迅だった。

(紹介がまだだったな。自分は迅だ)

(ありがとう、妾はアイリス。あの子は妹分のシリウスだ)

(妹分……女の子か)

(あぁ。まだ幼いから男女の区別がつかないと思うけど)

(そんなに歳離れてないだろ)

 見た感じ、シリウスという少女は六歳ぐらいだ。

 そこからアイリスも十歳ぐらいだと推測がたった。

(シリウスはまだ六歳だけど、妾は十八歳)

(十八!? その見た目で?)

(おいコラ!! 低身種のホビット族嘗めんな)

(低身種……そういうなのかすまなかった)

(こちらこそすまない。知らないのだから当然だ

 互いに深呼吸をして落ち着く。

 知識の違いによる争いが不毛なことを理解できてない訳ではない。

(とりあえず、君を妾たちの村に招待したいが、いいかな?)

(あぁ、お願いするよ。道案内してくれ)

 恩返しでもあり、帰宅までの足の確保という相互補助の面両方を理解しつつ迅は了解する。


 数分後、準備は完了した。

(出来た。調子はどうだ?)

(ありがとう。立派な固定品だよ。毛がもしゃもしゃしていて温かい……ってどうして獣の手で固定されるのかな?)

 見事なノリツッコミで切り取られた熊の右手で固定したことを非難する。

(土地勘のない場所で添え木になるのを探索するのは悪手だし、熊の肉を捨てるのは勿体ないだろ)

(まぁ、確かに)

 薬として使われる肝などは取ったが、肉の大半はその場に捨てるしかなかった。

 迅一人なら問題ないが、アイリスを抱っこし、シリウスをおんぶする状態ならば仕方ない選択だった。

「マッチニウニ」

「ミチクキウヒイレシ」

 お肉に執着をみせるシリウスを慰めるアイリス。

「肉ぐらい何度も狩ってくるさ」

 言葉はわからないだろうが迅は約束をした。


(凄い、速い!!)

 迅は二人を抱えながら森の中を走る。

 その速さにシリウスは興奮している。

 彼女の思念を感じながら、迅はある疑問が浮かぶ。

(ところで、これっていつまで続くんだ)

(サトリ草の効果だったら明日まで続くよ)

(長すぎる)


 第二話「鬼熊とサトリ草」

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