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RPGにおける乗り物って、リアルに当て嵌めると相当必須な話。

 カッファから王からの手紙を受け取った翌日、迅たちは支度を済ませ王都[アファイサ]へと向かった。

 徒歩で一週間かかる距離であったが、幸いなことに薬草の採取の帰りだった[牙狼の新生]の馬車に乗ることが出来て到着が数日早まりそうだ。

「すいませんね」

「いや、気にしなくていい」

「そうそう、この馬車も元々はキャンサーデビルの塩漬け肉の売却で買ったモノだし」

「いいタイミングで売ったみたいだな」

「あぁ。これからも増減はするだろうが、こいつで稼ぐ分で問題ない」

 [牙狼の新生]はデビューして二年目でありそれなりに功績は積んでいた。

 だが馬車を買うなど頭になく、当然ながらその資金もなかった。

 そんな時にキャンサーデビルの塩漬け肉の高騰化が起き、馬車代の資金を手に入れた。

 馬車を購入した理由も話し合いの末、仕事の幅を拡げるための先行投資となったのだ。

「これで護衛関係の仕事とか出来るようになったんだぜ」

「他にも単純な移動範囲や所持物品の増加もある。馬車があっていいことづくめだよ」

 馬車がある、なしで大きく変わるのは行動範囲である。

 徒歩で移動するのでは時間がかかるし、何より食料品などの生活必需品の問題がある。

 荷物が多く重ければ身体にかかる負担は高く、疲労によりペースは遅くなる。

 逆に軽装であれば身体にかかる負担は低いものの、食料品が枯渇した際の危険性は格段に高い。

 それらは馬車の使用によって解消される。

 また、移動は馬を気遣う必要があるとはいえ、歩かなくてもいいためパーティーの休養効果もあった。


「だけど、荷物を含めて三人分の荷重もある。馬の負担はでかいだろう」

「そのことなんだが、このまま王都に行くのではなく東の村に行ってくれないか」

「それはいいが、どうしてだ?」

 カッファの要求にロックは訊ねる。

「東の村に商会の支店がある。元々そこで食料品と馬車を調達する予定だったが、馬を借りるだけで済みそうだ」

「馬を休ませながら進むことが出来るってことか」

 馬車を引く馬を交代させ、疲れた馬は並走させる。

 それだけでも馬の疲労は軽減される。

 馬を休ませるためにも、早く進むためにも友好的な手段だ。

「そうだ。ついでに依頼の余剰分の薬草もこちらで買い取ろう」

「いいのか?」

「あぁ、馬車の代金と含めて相談だ」

「流石、[青の士族]気前がいい!!」

 無邪気なホクトの言葉に、和やかな空気が流れる。

 だが、それは表層だけでアイリスとカッファには緊張感が見える。

 それを感じたのは迅だけでなく馬の操作をしていて離れているトウガ以外の全員だった。

「……これとこの袋が納める分、売るのはこっちだな」

「結構採ったんだな」

「………正直、しばらくは地力をつけるのに時間を使いたい。馬車を買ったのも護衛や輸送をメインにするためだ」

「あの時迅さんという奇跡がなかったら、ホクト以外は死んでいましたから」

 純粋に地雷を踏んでしまったことに迅は気づく。

 モンスターハンターの仕事で最も稼げるのはモンスター退治だ。

 しかしそれはハイリスクハイリターン。

 そのため、モンスターハンターを辞めるのは珍しくない。

 いや、辞めたいと思ってもその時は手遅れなのが殆んどである。

 大量に入り、大量に消える。

 それがモンスターハンターだった。

 だが、主に金銭的な事情で辞めれないモンスターハンターは大抵採取や護衛にシフトする。

 それは退治するよりか危険性が下がるからだ。

 遭遇と戦闘が前提より、逃亡が許されるのは何より安全度は高い。

 そのパターンに入ってしまったかと思われたロックは真剣な顔で宣言をする。

「あくまで、今は力を付ける段階。このままで終わらない、終わらせるつもりはない!!」

「そう、[牙狼]の名前を名乗ることを決めた以上、こんなとこで終わらないよね」

「おーう!!」

 ロックに続いて、ケイとホクトもその宣言に賛同した。

 まだ折れる気はないようだった。


 それから軽い雑談をし、カッファの指定した村に到着。

 ロックたちの採取した余剰分の薬草を買い取り、馬の追加と食料品の購入をする。

 村での予定を済ますと、更に先に進む。

 夕方になったところで野営となった。

「女性陣は馬車、男性陣はテント。見張りは俺とトウガで行います。いいですか?」

 指示を出すロック。

 それに対し、挙手をする迅。

「すいません、迅。パートナーとお楽しみになりたいのはわかりますが控えてください」

「いや、そういう意味での提言ではないから。単純に二人だけじゃなく俺も見張りをやる話。カッファは戦闘力ないから外して貰うのはありがたい」

「そうですか、それはありがとうございます。二人だとやはり負担はありますので」

 ロックがお礼をいう。

 トウガは馬車の運転もあるので、野営の見張りはロックの割合が大きいからだ。

「あと、俺とアイリスはそういう関係じゃない」

「そうじゃな。妾と迅はあくまで仕事仲間に近い」

 迅とアイリスの告白に衝撃を受ける[牙狼の新生]の面々。

「付き合ってもないのに、一組の若い男女が一緒の部屋に泊まるのか?」

「そうだが」

「あっ、あの、あくまでそういう行為だけの関係ということですか?」

「違うよ。まったく何もないよ」

「ケイさん、そういう行為だけの関係って?」

「あっ、あのそのね」

「ホクト、もう少し大人になればわかるからな」

「はーい」

 ロックを皮切りに怒濤の流れで質問される迅とアイリス。

 ちなみに、二人が交際してないことを確認し、カッファが絶望顔から笑顔になっていくのを会話を客観的な立場で観賞していたトウガは見ていた。


 その後は村で購入した夕食を食べ、女性陣は馬車、男性陣はテントと分かれた。

 深夜、迅とロックが見張りをしている。

 見張りは二人制で交代要員が入ると一人休む。

 それを三人で回すローテーションだ。

 三度目かのローテーションで見張りの自分たち以外は寝ているだろうと確信した迅は、ロックにあることを訊ねることにする。

「ロック、少しこちらの世界で訊ねたいことがある。いいか?」

「内容次第ではあるが、大抵のことはいい。何だ?」

「こちらの士族についてだ」

「こちらでわかる範囲だったら」

 深夜のため、お互い小声で会話する。

 ロックとしては士族の話をするのは正直意外だった。

「それでなにを知りたいんだ?」

「士族の数と何をやっているかだな」

「そうですね」

 思い出そうとするロック。

 元々士族なんてモノは現状、商人やっているカッファぐらいしか関わりがない。

 それぐらい一般人と解離している立場なのだ。

「士族は五組というとこだな。それで、現状居るのは二つか三つ」

「居ないというのは?」

「二つとも六年前から居なくなっている」

 六年前、昨日アイリスが話したことだと迅は理解する。

「聞いたことがある。モンスターに街が襲われた件だろ」

 ロックは頷く。

「街の設計をした建築関連で[黄の士族]の称号を得た一族と、そこの[青の士族]同様に行商で[赤の士族]の称号を得た一族だ」

「その二つがなくなった理由は?」

「モンスターと交戦したのが原因と言われている。徹底抗戦を唱えた二つの士族が[赤の士族]と[黄の士族]だ。[黄の士族]は全員が行方不明になり、[赤の士族]の生き残ったヤツに責任が集中した」

 その先は昨日アイリス自身の口から聞いた。

 だが、そこにある疑問が生まれてくる。

「[赤の士族]の生き残りは知らないのか?」

「あぁ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「なるほど」

 すぐそこに居ると言う気になどなかった。

「あとは[緑の士族]が何をやっているかは忘れた。だから、今も居るかわからない。[青の士族]はそこに居るカッファの一族、[赤の士族]同様に行商の一族だ」

「行商の一族が二つあるのか」

「功績が違うからな」

「功績?」

「あぁ。販売のルートを作った青、商品を発掘した赤という違いだな」

 その説明に納得する迅。

 商品を販売する場所を作ったカッファの一族。

 その商品を用意したアイリスの一族。

 相互に作用する関係だといえる。

「最後に、王都守護隊にもよく人材を排出している歴史と家系の大きい戦士の一族[黒の士族]だ」

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