プロローグ、第一話
「人生は不平等だ。」
誰もが一度は考えたことがあるこの思考。あいつは周りにちやほやされて人生バラ色まっしぐら、だけど自分は・・・人脈もない、出会いもない、そこまで容姿がいいわけでもないただのNPC(ノンプレイヤーキャラクター、いわゆるモブ)の存在ではないか、と。
私は考えた。もしかして、この世界はゲームの世界なのではないか、だから不平等な格差ができるのではないか。そんなわけはないと思った私はそのまま寝転がって自分が一番推しているシミュレーションゲームをやり始めた。「こんな世界嫌なんだけどな・・・仮想の世界はいいよなあ」でもまさか、この何の意味も持たない一言が私の未来を変えたのだった。
第一章
ピピピ、ピピピ。いつものうるさいアラームが鳴っている。もう朝が来てしまったのだ。「・・・まだ眠いんだけど」沙月は起きなかった。このアラームが嫌いな理由はただでさえうるさいのに某ゲームみたいにだんだん大きい音へとなっていくのだ。そして、このまま起きないでいると・・・「沙月!アラームまたうるさいんだけどいい加減止めなさい!朝ごはんできてるしもうそろそろ準備しないと遅刻するわよ!」これが私の母のいつもの決まり文句だ。ああ、うるさいうるさい。お前の声じゃなくて推しの声で目覚めたいんだけど。いつものこのゲーム風に言うとログイン時のセリフみたいな言葉を推しが話してくれるだけでどれだけ頑張れるか。そう頭の中で思いながら布団に丸まったままでいると、「いい加減にしなさい!さっさと起きなさいよ!まったくまだ若いんだから・・・」そう言って母が下へ降りる。この言葉も母の朝のセリフの1つだ。そろそろこの「若い」っていう脅しも通用しなくなっているだろ。だってもう17歳、成人年齢が下がったこの時代ではもういわゆるシニア領域に達しているのに。でも、これ以上ベッドの中にいるのは良くない選択肢だと分かっているのであくびをしながら下へ降りた。いつものトーストと目玉焼きというシンプルというべきか質素というべきか迷うこの朝食。そして、その食卓の前には鬼の形相のような母。「やっと降りてきたのね。早く食べなさい。私もう行くんだから」母の仕事は、高校の教員といっても私が通っている高校のではない。私は気にしてないのだが「母」としてというよりむしろ「高校教師」としてこの朝もまともに起きられない成績も全体の中間区域の順位で満足している何のとりえもない娘に世間体的に苛立ちと呆れがあるのだろう。しかし、この毎朝の出来事はいつもそこまで苦ではない。そう、朝は・・・。
「それじゃあ、先行くから沙月も遅刻しないように。いいですね!」はいはい、いい加減とっとと行けよ・・・そう思いながらも「行ってらっしゃい」と愛想笑いをしながら見送った。
「いったい、どれだけこの思っていることを心にしまっていなきゃダメなのかな。でも、いいか。ゲームの世界じゃ思考回路バレバレだしね。」そう言いながら、学校へ行く準備をした。ピロンッ。通知音が鳴っていた気がした。いつものゲームの通知かなと思い支度を続けた。
「宮野 沙月様 おめでとうございます!あなたは人類が最も望むものに選ばれました。詳しくはこちらを・・・」