19 纏雷の術
2023/1/13
加筆修正しました。
俺の使える最強の術は、纏雷の術。
この術は、文字通り、身体に雷を纏う術だ。
美紅ちゃんに使った静雷の術は、所詮風船と化学繊維で作って静電気をアルミホイルに貯めたものに過ぎない。
所詮は、バラエティ番組仕様の術である。
纏雷の術はただ静雷の術を強化した術では無い。導真様の説明によると、神力(=神通力)を宿していて色んな付加効果が期待出来るらしい。
知らんけど。
とにかく神力の基本効果として穢れを祓うという事を、この術を習う時に導真様から教えて貰っている。
穢れとか悪気とか違いは分からない。だけれども、ゆりゆりの悪気を焼き祓うには、これ程適当な術はない。
もしかして、導真様は、こんな状況を見越してこの術を俺に教えたのかな?
この纏雷の術は、かなり集中して神力を使わないと出来ない術で、所謂タメ技と言うやつだ。そのタメを動きながら出来ないのが欠点でもある。
導真様に言わせれば息をする様にこれくらいの術を使えるチート級の素質がこのぬいぐるみ体にはあるらしい。
この身体は息をしないのに、術は息をするように使える、これ如何に。
さておき。
ピカピカピカピカ~。
纏雷の術に、特殊な呪文はいらない。本当は「かけまくもかしこき天満宮菅原之大神~中略~慎み敬ひかしこみまおす。」なんて、導真様の祝詞を唱えて力を借りるらしいが、導真様がこんなことで祝詞唱えんでも良いなんて言うものだから呪文というか祝詞は無くなった。
『祝詞さえ唱えればオートで術が発動するのに残念。』(歩智)
『あの程度の術を使う毎にあんな恥ずかしい祝詞唱えられたら儂が恥ずかしいわ。』(導真)
ということで、どうやって術を発動するかというと、ズバリ、イメージ。
『それで良いの?』って思うけど良いらしい。
そこで身体に電気が流れるイメージで最初に思い浮かべたのが、静電気。それで出来たのが静雷の術。
こんな威力じゃ駄目だと、身体に雷を纏うイメージを色々試してその結果、纏雷の術が完成したイメージがあの黄色いネズミ。
だから・・・・俺の纏雷の術の呪文は、ピカピカピカピカなのだ。
ピカピカ言う毎に身体に電気が溜まって行く。バチッバチッっと身体の周りでスパークが発生している。既に雷と言っていいほどの電力がこの身に宿る。淡く黄色いオーラとスパークが全身を包み込む。
よし!後はゆりゆりに体当たりするだけだ。先程も不意打ちが出来たのだ、もう一度くらい出来るだろう。
身体を霊障浮遊で浮かし狙いを定める。
縦横無尽に飛び回るゆりゆりに体当たりするのは無理なので、チャンスを伺う。
美紅ちゃんとゆりゆりが何度目かの鍔迫り合いで動きが止まった。
「ピカピカピカピカ、ピカワーン」
自分を霊障浮遊と纏雷のスパークを利用して素早く打ち出す。
正しくレールガン歩智なんて余裕をかましての突進は、ゆりゆりにひょいと避けられてしまう。
まだまだ、今度は後ろから。
ひょい。
横から。
ひょい。
なら、頭上から。
ひょい。
ドカーン
虚しく床に叩きつけられた俺が。
「イテテ。何故だ、当たんねぇ。」
「おい、あやかし、何、遊んでいる。」
「体当たりさえ当たれば何とかなるんだよ。」
「それは、無理だろう。あやかし、お前の速さは全然足りぬぞ。」
「くっそ、どうすれば。」
俺では、スピードが足りない。でも、美紅ちゃんならあのスピードに付いていけている。
「俺を持ちながら戦えるか?」
「無理だな。両手で刀を持ってやっとあの爪を受け止められるのにどうやってお前を持つのだ。私の腕は二本しかないのだぞ。」
確かにどうすれば?
ガキン!
横から爪のなぎ払いを受け止める。
「ボサっとするな。役立たずはここから離れろ。いざとなったら私は・・・切る!」
「駄目だ!何とか、何とか出来る筈だ。」
今度は爪が振り下ろされるのを刀を横にして受け止める。
強い力を受け止めたのだろう。美紅ちゃんの身体が小刻みに揺れる。
胸も揺れる。
『俺のバカ、今は丘のことを考えずに、攻撃を当てることを考えないと。』
また、丘が揺れた。
そのとき俺は天啓を得た。
『そうだ、これしかない。』
俺は、美紅ちゃんの胸元に思い切って体当たりをする。
「キャー。」
美紅ちゃんは、その反動で後ろに大きく飛び退いて、ゆりゆりとの距離をとった。
俺は、そのまま胸元から胸の谷間挟まる。
「コラ、変態あやかし。出てこい。出てこい、叩き切って殺る。」
美紅ちゃんは、顔を真っ赤にしながら俺の頭を掴んで引きずりだそうとするが俺は必死に抵抗する。
その隙をゆりゆりが逃すはずも無く、一気に間合いを潰し両手を突き出す。
美紅ちゃんは、危なげなく刀を爪と身の間に滑り込まし、そのまま身を右に翻して横をすり抜ざまにゆりゆりの背中を押す。
ゆりゆりは、自らの勢いに加え背中を押されたことで前のめりに姿勢を崩して転がる。
やはりそうだ、美紅ちゃんは状況は悪いと言っていたけど、それはゆりゆりを殺さないで止めることが出来ないだけだった。スピードにも力にも付いて行けてる。殺すだけなら何時でも出来るのだ。
だから、俺が胸元に居るにも関わらず動けている。
これならゆりゆりを助けられる。
「聞いてくれ、悔しいが俺は二人の速さについて行けない。だから、このまま俺を運んでくれ、そして鍔迫り合いになったら腕をはね上げてくれればいい。後は俺が助ける。」
「変態あやかし!本当に出来るんだな。」
『それは私が保証する音。だから美紅ちゃん、歩智に協力してあげて。』
「静音姉さんがそう言うなら。」
「勿論だ。任せておけ!」
「いいわ、私じゃ救えない。その話、乗ってあげる。」
俺は、瞑想を始める。
纏雷の術は、雷を纏う術だから、発動すれば美紅ちゃんが感電してしまう。
そう言えば、黄色いネズミの飼い主は、技の前後に迂闊に触って感電していた。
さておき、美紅ちゃんの感電を防ぐ為には、術を身体の中に留めてゆりゆりに接触した瞬間に発動させなければならない。
イメージするのだ。身体の中心に雷の珠を創り、接触の瞬間解き放つ。
ピカピカ~
感じろ自分の中の神力を。
ピカピカピカ~
縦横無尽に暴れる雷をコイルのように束ねる。
ピカピカピカ~ピカ
コイルに沿って雷が廻る。始めは横たわる雷の輪から縦の輪っかが交わり、
今度は斜めに雷の輪が交わる。
また1つまた1つと幾重にも交わり、円から球になる。
ピカピカピカ~ピカピカ
俺が集中している間に、美紅ちゃんとゆりゆりの攻防は激しさを増す。両手を地に付け四足歩行で獣のように駆け回り美紅ちゃんを翻弄しようとする。
しかし、美紅ちゃんはその場に留まり最小の動きで避ける。
「よし、準備出来た。」
「やっとか。しくじらないでね。変態。」
美紅ちゃんは、そう言うやいなや駆け出す。
ゆりゆりは、方向を変えようと屈んだところだった。
ゆりゆりは、咄嗟のことで反射的に爪を振り下ろす。
美紅ちゃんは、それを待ってましたとばかりに合わせて刀で受け止め、押し上げる。
美紅ちゃんとゆりゆりの胸元に明らかな動線が出来る。
ピカピカ、ピカピカ~
俺は、美紅ちゃんの胸の谷間から飛び出して向いの虎の毛皮に包まれた胸に張り付く。
美紅ちゃんは、俺が飛び出すのにあせて距離をとる。
ふわ、ぷにょん。
ゆりゆりの胸の思ったよりボリューミーで柔らかい感触にドキリとする。
「このおっぱいを(俺が)助けてやるよ。双丘守護雷陣の術、ピカワォーン!」
『術名が変わっている音!』
俺を中心に雷の球が広がり、ドームになる。
ドームの中は雷の豪雨が降り注ぐ。
ゆりゆりがその一つの雷に打たれる。
「グッ、グァアアアアアア。」
絶叫と共に口から黙々と黒い靄が出てくる。
靄が虎と人がひとつになったら様な姿に変わる。先程までのゆりゆりの姿に似ている。
対してゆりゆりは、口から黒い靄が抜けて行く毎に元の姿に戻っていく。
黒い靄は、ドームから逃れようとするが絶えず降り注ぐ雷からは逃げきれず幾度と雷撃を受けて最後には燃え尽きていった。
ドームも黒い靄を焼き尽くして消えてしまった。
ゆりゆりの中の悪気とやらは完全に燃やし尽くした筈だが、ゆりゆりの姿は完全には戻らなかった。
でも、静音ちゃんは導真様なら完全に元に戻せると言っていた。なら、それを信じるしかない。
俺は、霊障浮遊を使う神力すら使ってしまって地面に転がっている。
「終わったの。」
「あぁ、これで大丈夫だと思いたいね。」
正直、これ以上何も出来そうにない。伝心の術ですらもう辛い。
ズドーン!!
爆音が響く。
「そうだった。まだ黒幕がいる。律ちゃんが心配だ。」
「行くぞ、歩智。」
「おっ、やっと名前を呼んでくれた。デレたか。」
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