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Welcome to the deep abyss  作者: ペン先曲助
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第十七話

 エルガド西の森林。

 俺たちは今、ここの攻略を行っている。

 俺たち・・・というのは、フィールドボスに参加した面々ではなく、俺とカザキのペアとXepherのパーティだけだ。

 他のDizzyとラララ達は草原の方の攻略を行っている。

 なぜ二手に分かれて行動しているかと言えば、ひとえに効率が良いからだ。

 フィールドボスとは違い、ミッドボスは結界が張られないため逃げることも可能である。

 そのため、ミッドボスとたまたまぶつかってもいざとなったら逃げることも可能で、リスクがあまり無いためこのようになった。

 むしろ、「可能であれば倒せ」と言ってくるのだから大分ラララの正確も変わったものだ。

 まぁ、俺的にはやりやすいが。

 この森の中でも今は俺とカザキのペアと、Xepherのパーティの二つがバラバラで行動している。

 こちらも理由は簡単で、モブが現れたときに大人数だと俺が動きにくいからであった。

 ボス戦だと大鎌の戦いづらさというものは実感しづらかったが、ことモブ戦になると一体の敵に密集するようになるので、味方に攻撃を当てそうで動きが制限されてしまうのだ。

 そのため、それなら俺とカザキの二人で戦力的には十分なので別れようと言うことになった。

 まぁ、より効率的になったのでよしとしよう。


 


____________________


プレザント・グラスホッパー Lv.10 昆虫属

プレザント・グラスホッパー Lv.10 昆虫属

プレザント・グラスホッパー Lv.10 昆虫属

____________________


 「まぁ、最初に出てくるのはコイツだよな。相変わらず気持ち悪い」


 「キモいです」


 散々な言われようの巨大なバッタは3体以上の群れで行動しているため、必然的にエンカウント率が高い。

 

 「経験値効率わるいよなぁ」


 だからと言って無視してもターゲットから外れることは無く、追いかけられてしまう。

 仕方なく倒そう。


 ・・・虫を切ったときの感触嫌いなんだよなぁ。


 3体いるとは言え、1体1体の体力が低いので脅威では無い。

 今回は3体同時に飛び跳ねて襲ってきたので、その下をすり抜けるようにスライディングし、滑りながら体を回転させ、3体に対して横一文字に切りつける。

 斬撃を浴びながら俺を超えていったバッタたちは、カザキのファイアボールによって焼かれる。

 焼かれているとき、虫型モンスターは苦しむ様子を見せるためあまり行動を起こさない。

 その隙に後ろから俺が切りつけて終わりだった。

 

 「切りたくないな・・・」


 本当に気持ち悪いのだ。


 


 「あ、捕食の音!」


 「うへぇ」


 静かな森に響き渡る咀嚼音。

 さっきバッタにキモいと言っていたはずなのに、咀嚼音が聞こえたときは心なしかウキウキとしているような気がする。

 こいつ、サイコパスか?

 現実では聞くことの無い、食物連鎖の音が耳に残る。

 こういう時は大抵近くに・・・。


____________________


リッパー・マンティス Lv.12 昆虫属

____________________


 「カマキリですねぇ~」


 いるんだよなぁ。


 モンスターが近くにいる状況で探索を続ければ囲まれる恐れがある。

 それが簡単な敵、先ほどのバッタくらいの敵ならいいが、カマキリとなると話は別だ。

 特段強くは無いが、大ぶりの鎌は攻撃力が高く、何かしらの事故を招きかねない。

 カマキリがこちらに気づけば、バッタの死骸をしぶしぶ手放し、鎌を上にあげ威嚇をしてくる。

 食事の邪魔をされたことに腹を立てているのか、いつにも増して威嚇に気合いが入っていたようにも思える。

 ちなみに、手放されたバッタの死骸はポリゴンになって消えた。

 どのようなシステムかわからないが、モンスターに食べられている途中の死骸は消えないのに食べるという意志が消え、手元から離れたときには消えるという複雑なプログラムが組まれているんだろう。

 だが、この作られたモンスターに果たして意思なんていうものがあるのか。

 

 「攻撃、きますよ」


 考え事に没頭していた俺に、カマキリは容赦なく鎌を振るってくる。

 この攻撃は重く、避けるのが鉄板だが、俺の脳みそが余計なことを考えていたせいで回避は見込めない。

 クロスするような形で振られる鎌に対し、俺はアーツで対応する。

 大鎌を中段に構え、光のエネルギーを与える。

 自らがコマのように回転することでカマキリの鎌に高速で2連撃をお見舞いして相殺。


 「ハァ!!」

 

 その後空中に飛び、より光の増した一撃を重力も上乗せしてたたき込んだ。

 3連撃光属性アーツ「トライ・オレオール」。

 このカマキリは攻撃力が高いが、動きはあまり速くないため、このような大技を打っても避けることは出来ない。

 真っ正面から切りつけられたカマキリはそれでもひるむことなく、目の前で止まっている俺に追撃を入れようとしてくる。

 

 「私もいます・・・よ!」


 そこにカザキが通常より大きい火球を打ち込む。

 チャージしていたファイアボールだ。

 その威力は絶大で、俺の一撃を食らっても追撃の意思を見せていたカマキリが、今やとても苦しんでいるように見える。


 「すぐ楽にしてやるからな」


 俺はその首に優しく沿うように鎌を構え、落とした。


 


____________________


シュトルム・サーペント Lv.13 魔獣属

____________________


 「運が悪いよなぁ」

 

 黒い大蛇。

 その目は黄色く、俺たちの力量を探るかのようにこちらをじっと見つめている。

 コイツは経験値がうまいが、とても強い。

 普段エンカウントすることもほとんどないので、まだ行動が完全に理解できていないところもある。

 故に、非常に厄介だ。

 横を見ればカザキも珍しく真剣な表情になっている。

 

 「気引き締めていきましょう」


 彼女のその一言に頷き、戦闘は始まった。


 速攻。

 見合って3秒くらいの後、一気にアクセルスレインを発動させ、詰める。

 俺たちがやられて嫌なことは、後衛であるカザキが狙われることだ。

 なのでとりあえず出来るだけ接近し、ヘイトをずっと俺が買うようにする。

 

 「ハァッ!」


 俺の切り上げた鎌は、黒蛇の丸太のような尻尾に阻まれ、刃が通ることは無かった。

 お互いがぶつかり合い、相殺した後に先に動き出したのは黒蛇だ。

 這うように接近し、噛みつきを行ってくる。

 今までの敵ならば、噛みつきなどの動作はわかりやすく、速度が無い攻撃は簡単に躱せた。

 だが蛇が相手になると、「這うように」というのがネックで、行動が読みづらい。

 そのため、最後の最後、噛みつきの瞬間まで目を離すことが許されず、ギリギリで回避しなくてはならない。

 

 「危ねえな」


 なんとか回避することは出来るが、集中力が切れたら簡単に死ぬだろう。

 噛みつきを躱し、シュトルム・サーペントと俺との距離が空いたとき、黒蛇は大きく口を開いた。

 この予備動作は風属性魔法だ。

 暴風を一点にまとめたような攻撃が俺に襲い来ることになるだろう。

 だが、その時を待っていた。

 

 「今だ!」


 「ファイアボール!ライトニング!」


 カザキによる、炎と雷の魔法が黒蛇を襲う。

 3日間の探索とレベリングでカザキが得たパッシブスキル"高速詠唱"。

 魔法を打った後、通常ならクールタイムが発生する。

 これのせいで、魔法使いは魔法を連発することが出来ず、1発の力を増大させる"チャージ"を多用していた。

 だが、この"高速詠唱"はクールタイムを無視してもう1発魔法を打てるというものだ。

 もちろん、デメリットは存在する。

 1発撃ち、2発目の消費魔力が1.3倍になってしまうことだ。

 総合的に見て、"チャージ"と"高速詠唱"どちらが良いかはわからない。

 そもそも、差別化されているのだ。

 "チャージ"はその場で数秒間動けなくなるのだが、魔力を下手に使わずに大ダメージを与えられるので、大人数でのボス戦や、フィニッシュ技として使われていた。

 その一方、"高速詠唱"は使い勝手が良い。

 特に今回のような動き回る敵に対しては、常にヘイトが前衛にあるとも限らないので足を止めていればやられてしまうこともある。

 

 色々脱線もあったが、その攻撃によって蛇は魔法を阻害され、ついでに俺は追撃の一撃を首元にたたき込んだ。

 

 「硬すぎだろッ・・・」


 蛇は元来筋肉の塊だ。

 相手が鱗や甲殻を持っていなくとも、その筋肉は自然のアーマーになり得る。

 

 「・・・!」


 今一瞬、カザキの方を見たな?


 濁った黄色の目が、魔法を打った後のカザキの方に少し動いた気がする。

 

 「カザキ!そっちにヘイト言ったかも知れない!!攻撃しないで良いから回避を優先で頼む!!」


 「了解!」


 カザキよりダメージが出ていないことに悔しさを覚えながら、俺は鎌に光を纏わせた。

 

 「こっちを・・・見ろッ!!」


 カザキに向かって突進中の黒蛇。

 それに回転しつつ近づいて側面に2連撃。

 その後空中へ。

 俺に敵意を向けた黒蛇は途中で行動を止め、頭を持ち上げてこちらを睨む。

 

 「首を見せてくれてありがとう」


 重力を帯びた光の一撃が、先ほど首の表面に傷をつけた場所に吸い込まれるようにして当たる。

 今回は手応えありだ。

 硬い。確かに硬い。

 だが、その中にある肉を断つ感覚はあった。

 HPは目に見えるように減り、先のカザキの攻撃と今のでまだゲージは4分の1程度を削っている。

 蛇は切られた状態で下を向き静止していた。

 怯んでいるのか?

 何にせよ、隙だった。

 俺はもう一度首を切ろうと接近したところで、違和感を覚える。

 何か、口元が輝いていないか?

 そう思ったときには遅かった。

 

 「避けてください!!」

 

 黒蛇の風ブレスの後、カザキの魔法も放たれる。

 その火球と稲妻は黒蛇に命中し、風ブレスを妨げる。

 

 「ぐぁッ・・・」


 だが、俺の体に風ブレスは当たっていた。

 カザキのおかげで少しの時間しか喰らわなかったが、それでもこの攻撃力はとてつもない。

 少しの間触れていただけで全身に切り傷のようなものを多くつけられた。

 この傷、痛みは前に味わったことがある。

 そう、あれは。

 シャドウバードの風魔法だ。

 最も、あれの上位互換のように感じたのでもっと痛いのだが。

 

 それにしても、この威力。

 自分のHPを見て驚愕する。

 4分の1程が今の一瞬の攻撃で削られていて、恐怖を感じた。

 もしこれが、クリーンヒットしていたら・・・と。


 だが、ここで怖じ気づいてはいけない。

 蛇は捕食者だ。

 弱いところを見せれば、獲物としてすぐに襲ってくる。

 勝つことだけを考えて、強く行動しろ。

 一回勝っているはずじゃ無いか。

 



 「きたか」


 数分間、さらなる相手の行動をインプットし、修正し続けながら戦ってきた俺たちは、ついに相手のHPの半分を削った。

 そして、このHPからはあることが起こる。

 そう"激昂状態"だ。

 攻撃力、スピードが上がり、敵意むき出しで襲ってくる。

 この状態になれば魔法は忘れたかのように使ってこない。

 イレギュラーな行動に気をつけるだけで、攻めやすくなっている。

 さらに、ヘイトも管理しやすくなった。

 

 「そっち行きます!!」


 カザキはここ最近でとても成長しているように思える。

 その一端として、回避力の上昇がある。

 今までは、命を大切にしないような、どこか雑な戦い方であったが、万年樹を見てからか初日の出を見てからか、とにかくその時から変わった。

 自分の命を守る手段としての一番大切なこと。

 特別なアーツなどは必要ない。

 ただ、相手の行動を観察し、避けるという回避のテクニックを一気に開花させた。

 その結果、ヘイトが彼女の方に行ったときに死ぬ確率は前に比べて低くなり、俺は焦らず大きい攻撃を与えることが出来るようになった。

 そして今回は、


 「新技使ってみるか」


 カザキとすれ違いざまに入れ替わる。

 大鎌に闇を纏わす。

 上段の斜めに構えて、その闇を解き放つ。

 一撃。

 振り下ろしその首を切り裂く。

 やはりアーツだからか、いくら硬い筋肉を持っているとは言え肉を断ったときの感触が良い。

 そのままの勢いに身を任せ、回転を続ける。

 二撃。

 一回目に振った鎌の遠心力を使い、先ほどよりも強く、重い黒の斬撃をたたき込む。

 2連撃闇属性アーツ"デスハーベスト"。

 敵のHPはレッドゾーンに突入している。

 追い打ちのように、カザキのチャージライトニングが頭を直撃し、黒蛇は怯む。

 

 もう、逃さない。


 これは風属性魔法の予備動作では無い。

 完璧な隙だ。

 目は白目をむいており、頭からは煙が出ている。

 これほど弱っているところを見過ごすわけにも行かない。

 俺はMP切れが怖く、アーツを発動させられなかったので代わりに通常攻撃で閉めた。

 

 「強かったよ」


 最後の一撃は、切ない。

 哀れだ。

 ボス級に強かった黒蛇は、ただの横薙ぎで首を飛ばした。

 

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