第十二話
めちゃくちゃ短いです。
ブラッディリリー討伐から3日後。
Dizzyの掲示板や広場での募集により、フィールドボス討伐会議が行われる。
場所は多くの窓がついた白い教会のようなところだ。
本来は死んだプレイヤーがリスポーンするための場所であったが、NPCの神父もおらず、完全にその利用価値を失っている。
集まったのは33人。
見てみれば発案者のDizzyや、Faker、サエコさんなど顔見知りも少なからずいた。
「少ないですね~」
突然、隣の魔法使いもとい、相方のカザキが呟いた。
装備はガイが作ったシャドウバードの素材のものに変更されていて、より魔女っぽく感じる。
その装備を見て、ガイにカザキを紹介したときのことを思い出す。
案の定何か勘違いされ、ニヤニヤされたものだ。
しかもそのときは酒のようなものでも飲んでいたのか酔っ払いのようで、俺もカザキもだるがらみされた。
そんな光景が記憶の片隅にありながらも、カザキに尋ねる。
「これで少ない方なのか?」
俺はβ経験者でもなんでもない。
また、ボス討伐は少人数でしか行っていない。
それ故、これだけの人数が集まれば良い方ではないか、と思ったのだ。
「えーと、フィールドボスのエリアに入ると結界が張られるんですけど、その中に入れるのが36人なんですよ。1パーティが6人のそれが6つで。だから今回はフルレイドで行けなさそうですね」
「エリアボスと難易度はやっぱり変わるのか?あれくらいならこの人数でも十分だと思うが」
「私は花としか戦ってないんでわからないんですけど、βでやったときはあれの数倍の体力に攻撃と範囲が大幅に強くなったやつって感じでしたね」
「まじか・・・」
少人数でいけるだろ、という甘い希望は即座に砕かれた。
「言い忘れてたんですけど、フィールドボスだけがこのレイドを組んで挑めるものなので、ミッドボスとの戦闘では2パーティまでしか行けないですね。普通はボス相手にソロでなんて行きませんけど」
カザキはあきれた顔でそう言った。
今思えば、俺がソロで勝てたのは相性が良かったというのもあるが、あのボス自体が初心者用に作られたものだったのだと思う。
レベルが低く、何より体力が低かったような気がするのだ。
見つけにくい場所にいたので、見つけるための手間も合わせての難易度だったのかも知れない。
「そう言えば、土竜、花ときていて今回のボスはn・・・」
こここまで聞きかけたが、ちょうど良いところで内陣の主祭壇にいたDizzyが声を響かせた。
「集まってくれてありがとう!ここから会議をはじめさせていただくで!」
ブラッディリリー戦でも思ったのだが、リーダーシップがある男だなと思う。
指示もできるし、戦闘能力も高い。
皆が求める理想の司令塔だろう。
エセ関西弁さえやめれば、だがな。
「みんな知っとると思うが、ワイはDizzy。このボス討伐会議の発案者やな」
ここにきているほとんどがDizzyからの誘いや掲示板を見ての参加だからか、皆うんうんと頷いている。
「んで、こっちがこのボス戦の指揮者。ラララさんや」
「どうも、ラララです」
紹介された人物はまだあどけなさが残るようなナイトの青年だった。
だが、黒髪で礼儀正しく、気品すら感じられる。
また、顔つきには少し余裕があるようなβテスター特有の雰囲気も感じられた。
一瞬、こいつが司令塔か・・・などと思ってしまったが、そんな考えはどこかへ消える。
「まず、パーティを組みたいと思います。僕の部隊は、ヒーラーの部隊になりますので、理想ではアタッカーが4パーティ、後方支援があと1パーティほしいですね」
となると、俺とカザキは別のパーティになるということだな。
「私、後方支援のパーティに行ってきますね」
カザキはそう言ってサエコさんの方に向かった。
そうか、サエコさんも弓使いだから後方支援なのか。
知り合いがいるなら大丈夫そうだな。
「さて、俺は・・・」
アタッカーのパーティの方を見てみれば4パーティ中3パーティは組み終わっていた。
どうやら元からパーティだったらしく、余った残りのソロ軍団で最後の1パーティが組まれた。
面白いことに、ラララのパーティにはラララも合わせてナイト2人と女プリーストが4人。
後方支援パーティにはサエコやカザキ、その他の弓使いやウィッチの女性に槍使いの女性もいた。
きっと後方支援の人数が足りず、女性ばっかであったのでそちらに入ったのだろう。
アタッカーの4パーティには、女性はFakerただ1人だった。
むさ苦しい男の中での彼女は紅一点とかいうレベルではないほど目立っていたが本人は気にしていないようである。
ちなみに俺のパーティは、俺、Dizzy、Fakerの3人。
人数は少ないが1パーティ分の活躍は出来そうだ。
「ワイら少なくなってもうたな~」
「いや、私たち最強だから勝てるよー!」
Dizzyはなぜか申し訳なさそうに、Fakerはなぜかテンションが高く、かなりカオスだ。
「さて、パーティが決まったところで、今回のボスの説明をします」
ラララの言葉によって、騒いでいた人々は一斉に静かになる。
「ボス名はグランドウルフ。その名の通り、デカいオオカミです。基本的には草原にいるオオカミの大きいバージョンですが、尻尾には大型の刀のようなものがついており、尻尾によるなぎ払い攻撃も行ってきます。また、体力が半分以下になると土魔法を使ってきます。尻尾をたたきつける攻撃の延長線上にとがった土の塊が生えてきます。注意してください。他にも・・・」
ラララの説明はまとまっており、とてもわかりやすかった。
直接ボスを見たことないような元βテスターでない俺でも、姿や形、行動までも頭でイメージできるようになっていた。
会議が終わり、教会からゾロゾロと人が出て行く。
こんな中でカザキと合流することは出来ないので、「お互いに出たところで待とう」というメッセージを飛ばしておいた。
教会から出てしばらくすれば、後方支援のパーティの子と話していたカザキがこちらに歩いてきた。
「もう良かったのか?」
「はい。にしても、人と話すのって意外に楽しいことなんですね」
ダウナーっぽかったり、おちょくったりで性格的に合わない人も居そうだが、なんとか仲良くなれたようで、珍しく満面な笑顔だった。
「良かったな」
なぜかぶっきらぼうに答えてしまう。
心というもの難しいもので、自分が少しイラついているのはわかってもなぜかがわからない。
幸い、カザキは俺の違いに気づかず、何も言わなかった。
その代わりに、
「クレンさんと旅することで何か変わりそうです。ありがとうございます」
といつものおちょくるような笑顔では無く、素直な笑顔を見せてくれた。
それだけで何か、いらつきは収まり、心が和んだ気がした。




