第十話
もしかしたらキャラが崩壊してるかもしれません(深夜テンションで書き上げたので許してほしいです)
俺が動けるようになったときには、すでに戦闘は終わっていた。
横たわりながら見ていた戦闘は、駆け引きなどは無く一方的なものだった。
様々な魔法を駆使して、相手を殲滅する。
その魔法は何かの芸術かと思えるほどに美しく、虹色の弾幕は俺の目に焼き付いていた。
「結構疲れたなァ~・・・」
155センチ程度の小柄な少女は呟きながら、ふらふらな足取りのままポーションを取り出し、飲み干す。
良い飲みっぷりだ。
そのままウィンドウをいじり、何かを操作している。
俺もステータスの確認を・・・!?
地面からの震動・・・いや
触手か!
「動けるようになりましたか?ってなんですかこっち走ってきて!?」
だるそうな口調の彼女も、急に突っ込んでくる俺にはびっくりしたらしい。
臨戦態勢をとろうと杖を俺の方向に向けたが遅い。
俺は彼女を乱暴に肩に担ぎ、突っ込んだ勢いのまま大きく前方に跳躍する。
咄嗟の判断だったがかなり素早く動けた。
称号様々だ。
その後1秒もしないうちに、つい先ほどまで彼女が立っていた場所から触手が生えてきていた。
徐々に地面から体全体が出てくる。
赤い花、口裂け女を思わせるような口、きもち悪い触手。
「またこいつらか・・・」
相変わらず不気味な笑みを浮かべながら触手をゆらゆらと動かしている。
「助けてくれてありがとうございます。でも、もうそろそろ下ろしてください」
「あぁ・・・悪い」
どうやら敵を観察するのに集中しきっていたらしい。
言われて気がつき、急いで彼女を下ろす。
持ち上げるときに思ったのだが、小柄とは言え軽すぎた。
本当に食事を取っているのか?と疑問に思うほどに。
だが、こういうことを女の子に聞いてはならないということくらいは知っている。
心配だが、とりあえずは色々終わってからだ。
「今度は5体ほど出てきたが・・・どうする?」
「私はあいつら倒したいですね~」
「理由を聞いても?」
普通に考えれば逃げるのが正解だろう。
なんせ自分たちは2人、相手は5体だ。
数の差もあり、相手は厄介なものも持っている。
ドロップ品に興味があるとか経験値効率がよいとか、何かしらの理由があるに違いないと踏んでいた。
だが、それに対する答えは俺の斜め上をいった。
「こいつら何体出てくるのかな?っていう単純な興味ですよ。好奇心です。もしかしたら全部倒しきったら報酬もらえるかも知れませんし」
これは命がかかっているデスゲームだ。
普通の人であればこの理由を馬鹿馬鹿しいと言うのかも知れない。
「命に変わるものなんて無いんだから、好奇心を抑えて逃げましょう」という人もいるだろう。
それが正しい行動なのだ。
だが、俺は知っている。
どうしても好奇心を抑えられない人間は存在するということを。
かつての俺がそうだったように。
そのような人間に、説得は通用しない。
そんな言葉で落ち着かせられるほどのものではないのだ、好奇心というものは。
「私は1人でもやるんで大丈夫ですよ。撤退したければどうぞ」
その凜々しく自信満々な反面、儚いような表情を俺はまたしても知っていた。
自分が好奇心を抑えられないばかりに急ぐ、いや、もしかしたら、その呪いから解かれようと死に場所を探すように急いでしまう。
そんなときの表情。
1人にしたら、確実に死んでしまう。
何の確証も無いが、ふとそう思った。
ならば、1人にしなければいい。
「いや、俺も行くよ」
この子には、目先の好奇心にとらわれてはいけないと言うことを教えてあげたい。
お節介だとしても、死ぬことよりつまらないことはない、ということを教えてあげたい。
だが、何よりも。
俺もこの先の景色が見たい。
白髪の彼女は驚いた顔を見せたあと、少し笑みを浮かばせた。
「カザキです。魔法使いなので後衛やります」
「クレンです。大鎌使いなので前衛で」
「大鎌って珍しいですね?」
「ソロだから周りを気にしなくて良いんでね。結構強いんですよ?」
「お手並み拝見させていただきます」
「任せてください」
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ボタニカルリリー Lv.8 魔植物属
ボタニカルリリー Lv.8 魔植物属
ボタニカルリリー Lv.8 魔植物属
ボタニカルリリー Lv.8 魔植物属
ボタニカルリリー Lv.8 魔植物属
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アイカーソルを合わせてみれば、さっきのよりもレベルが高いことがわかる。
さっきの失敗は痛いほど身に染みた。
集中力を切らすな。
行動パターンはわかっているはずだ。
1発も喰らわず、効率よく倒せ。
「攻撃、きます」
レベルが一つ上がっているせいか、触手のリーチが伸びた気がする。
10メートルほど離れていたが、そこはやつらの攻撃範囲内だった。
5体の触手がネットのようになり、俺たちを捕らえようとする。
避けることは出来ないだろう。
「迎撃します。ファイアボール」
カザキもそう感じたのだろうか、避けるということはせずすぐさま触手を迎撃するように炎の魔法を打ちだした。
だが、火力が足りなかった。
双方がぶつかりあって出た煙の中から、3本ほどの触手が襲ってくる。
俺は大鎌を振り回し、その触手を切り刻む。
回転しながら、駆けながら。
そのまま中距離への対抗手段がなくなった口のついた花に接近する。
「はぁ!!」
無理に攻撃することはせず、1体ずつに1撃程度斬撃をいれ、また距離をとる。
俺が下がるタイミングで炎の魔法をぶつけてくれているところを見ると、カザキはパーティの経験もあるように思える。
とてもやりやすい。
「なかなかやりますね~」
感情は薄いが、少し笑いながらカザキは言う。
これは褒められているのか?おちょくられているのか?
感情がいまいち読めない・・・。
「褒めるんなら倒してからにしてください」
そろそろ敵の触手も復活したんで。
「なかなかやりますね~」
「君の方こそ」
あれから敵の行動パターンは変わらず、自分たちもスタンスを変えずに戦うことで簡単に勝つことができた。
気をつけたところと言えば、花の部分を直接攻撃しないことくらいだろう。
経験値はレベルと難易度の割にはおいしくない。
だが、5体も倒せばいつの間にかレベルは8に上がっていた。
草原に座りこみながらカザキの方を見れば、彼女もこちらを横目で見ている。
「あ、今更ですけど、私年下だと思うので敬語なしで大丈夫ですよ~。目上の人に敬語使われるの苦手なので」
「あ、はい」
ダウナー系とはいったがクール系なのか・・・?
気だるそうに言ってはいるが話すのは好きなのかも知れない。
いや、むしろ魔女のロールプレイの一種のように思えてくる。
白髪のボブで、目元が隠れるか隠れないかの前髪。
いかにもな木の杖に黒いローブに大きな魔女帽子。
小柄ではあったが、ミステリアスで何やら不思議な力を感じさせるような格好であった。
「クレンさんって掲示板頻繁に見る人ですか?」
「頻繁がどれくらいのことを指してるかわかんないが、1日で合計1時間見るくらいだな」
そう答えるとカザキは驚いた表情でこちらを見て何かを納得する。
「掲示板で話題になっていましたよ。はじめてボスを倒した人だ!って」
「まじか・・・」
目立つとソロで行動できなくなりそうだから、嫌だな。
「掲示板見てないときは何やってるんですか?」
「狩りだな。装備の素材手に入れないと行けないし」
またもや驚いた表情。
相変わらずだるそうな口調だが、表情はコロコロ変わることがわかった。
「気になったんですけど、その装備ってもしかしてプレイヤーメイドですか?」
さっきまでより、声のトーンが上がった気がする。
どうやら好奇心がこの装備に向いたらしい。
「ああ。これはg・・・!?」
ガイってやつの作った装備だ、というのは最後まで言えなかった。
地面が揺れる。
それも、さっきの揺れの2倍近く。
「動けるか!?」
咄嗟にカザキに向けて叫ぶ。
「立つことくらいしか・・・!」
目をやれば、彼女は杖に体重をかけてなんとか体を支えている状況だ。
この状況でまた触手が生えてこれば、流石に避けられない。
・・・もう一度担ぐか!
カザキが居る場所は10メートルほど離れているだけ。
揺れる地面の上を駆けても3秒あればたどり着ける。
普通に走ればそうだったのかも知れない。
だが俺は人の命がかかる状況で非常にくだらない、どうでも良いことを考えてしまっていた。
さっきは急だったから担いだけど、横で抱いたほうがいいのか?
一瞬の迷い。
それはこの世界では命取りになる。
「ぁ・・・」
たどり着き、行動に移そうとしていた俺の前でカザキは触手にとらわれた。
「ッ!」
今更焦っても遅かった。
触手はすさまじい速度でカザキを連れていく。
それと同時に揺れが強くなり、触手が縮んでいく方向にその全貌が見えてきた。
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ブラッディリリー Lv.9 魔植物属
ミッドボス セグメール草原
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ボタニカルリリーの2倍はある体。
白い花には返り血のような斑点があり、大きく裂けた口が開けられていた。
悪寒を感じる。
「やめろぉぉぉぉぉッ!!!」
俺はアクセルスレインを発動させ、縮む触手に追いつこうとする。
地面が揺れているからか、いつにも増して加速しているように感じる。
追いつける・・・!!
だが、伸びは無かった。
アクセルスレイン1回では届かず、何も無いところに振り上げる。
「クソ・・・!」
それを狙っていたかのように、振り上げた直後何本かの触手が群がってくる。
触手共の相手をしている時間は残されてはいない・・・!
「邪魔だ!!」
冷静な判断なのか、狂っているのか自分でもわからない。
だが、俺はダメージ覚悟でアクセルスレインを連発した。
対象はやはり、縮んでいく触手。
他のものには目をくれず、一心不乱に追い続ける。
その中で、脳では無く体が、追いつくための一つの法則を作り出した。
『自分が斬撃を繰り出すタイミングであえて被弾する』
アーツはシステムで登録されている行動なので、一度発動させてしまえばその行動が終わるまで止まらない。
だが例外として、体制が崩れるほどの攻撃を受けた際は中断される。
そのシステムを利用して、自分が足を止めて無駄な斬撃を放つときにあえて被弾するようにしたのだ。
頭は冴えきっていて、触手の行動パターンを瞬時に理解することができた。
過去最高に集中をし、アーツのタイミングは完璧だった。
運も味方して、不確定な行動パターンでも俺の都合通りに触手が飛んできた。
20秒の内に4回のアクセルスレイン。
その全てが斬撃のキャンセルに成功し、もう目の前にカザキはいた。
同時に、クソみたいに大きな口を開けた花も。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
おおよそ人では無く、獣のように叫びながら最後のアクセルスレインを放つ。
5回目のそれは、斬撃まで入れた。
白い花の口の前で、カザキを捕らえていた忌々しい触手を切り落とす。
「下がるぞ!」
カザキが受け身をとったのを見て、俺もバックステップで距離をとろうとする。
だが、思うように足に力が入らない。
「魔力切れ・・・か・・・」
アクセルスレインの連発。
カザキを助けるために必死すぎて、MPのことなど完全に考えていなかった。
この世界に来てから死にかけることが多かったが、今回は人のために死ねるのだ。
それはもう悔いはないだろう。
・・・。
自分にそう言い聞かせるが納得できない。
まだ見たい。
この先の景色が!!
カザキの足音が聞こえる。
はやく逃げろ。なんとか君は生き延びてくれ。
そんな希望は届かず、足音は俺の方に近づいてくる。
「何やってる!はやく逃げろ!」
俺は死ぬんだから、この命を無駄にしないでくれ!
「私はこの世界に死に場所を探しに来たのかも知れませんね」
やっぱりこの子はかつての俺に似ている。
この世界では好奇心に嫌悪を示しながらも、抗えない。
現実では嫌気が差し、それならここで自分の全てを終わらせようとしているのだ。
だが、命を捨てるのはあまりに惜しすぎる。
この世界にはまだ、楽しいことがたくさんある。
現実で生きたくないのなら、この世界を生き抜いてから死ねば良い。
「君も俺も好奇心に振り回されすぎた。嫌に思うことだっていっぱいあるさ。だけど命を捨てて良い理由にはならない。もっと、この世界の先を見よう。今を生きて、この世界での全てを生き抜いたら死ねば良いんだから」
俺の本心を語った。
理解してくれたかはわからない。
俺と同じような境遇の人であるかもわからない。
だが、もし俺と似たような悩みを持っている人間なら届くはずだ、この思いが。
「・・・わかりました。諦めたらそこで試合終了ですもんね」
カザキは帽子のつばを上げ、正面の敵を見据える。
「もう少し、抗ってみましょうか!」
杖を握りしめ、ブラッディリリーに向ける。
対する白い花は、俺たち二人を「いつでも殺せるぞ」と言わんばかりに笑っていた。
「ファイアボール」 「ファイアアロー」
火の玉の他に炎を纏う矢も放たれた。
その二つは交わり、大きな爆炎となる。
「gy・・・!?」
それはブラッディリリーも予想外だったようで、小さい悲鳴を出し、大きくよろめいた。
「ギリギリ間に合ったかな?」
俺はなんとか立ち上がり、声の方向へ視線を向ける。
そこには、茶色のロングヘアーで身軽そうな格好の女性が弓を携えて立っていた。
「クレン君にカザキちゃん、2人だけど増援を呼んできたよ!」
「サエコさん」
サエコと呼ばれた女性の奥から、2人が姿を現す。
「まさかここのモブ倒すとボスが出てくるとわな~」
「全然思わないよね~」
片手剣使いの男と、鉤爪のようなものを腕につけている女が見えた。
男は糸目で金髪、エセ関西弁とうさんくさい印象を持つ。
女は赤髪でスタイルが良く美人だが、どこか頭の弱そうな感じがあった。
「でぃじーさんとふぇいかーさんはヘイト買っといて!私とカザキでクレン君運ぶ!」
「「あいあいさー」」
サエコの指示で二人はボスの元へと駆けていった。
その一方で俺は自力で立つこともままならず、女性二人に運ばれていく。
なんとも不甲斐ない光景だ。
近くの木に運ばれ、MPポーションをこれでもかと渡される。
俺は木にもたれかかり、ポーションを飲みながら感謝を伝える。
「本当にありがとうございます。来てくれなかったら、俺たち死んでました」
サエコは優しく微笑み、カザキに目を向けていった。
「お礼ならカザキちゃんにしてあげたら?彼女が掲示板に書いたんですもの」
「え?」
いつの間に!?
思わずカザキの方を見ると冷静に答えた。
「一応、あれだけモブが出るんだから何かあると思ってました。なので掲示板の方にあらかじめ書かせていただいたんですよね。もっとも、触手に捕まってるときはフレンドのサエコさんに高速で助けを求めましたけど」
「触手に捕まってたの!?なんだかエッチねぇ」
サエコさんはほんわかしていて天然な様子で、自然と"さん"をつけたくなるようなお姉さん味も感じる。
この会話だけでわかるほどそのようなオーラを持っていた。
天然さをわかっているのか、カザキは何も言わずにスルーしている。
「じゃあ、私も戦闘に加わってくるから」
「私も行ってきます」
サエコさんに続いてカザキも立ったが、すぐさま拒否された。
「ダメよ。カザキちゃんはここでクレン君を見ててあげないと。もし攻撃が飛んできたら危ないじゃない」
「はぁ」
「それに良い雰囲気だし・・・」
笑いながらそう言うとすぐに矢をブラッディリリーに打ち始め、戦闘に参加しに行った。
・・・・・・。
取り残された俺たちは少し気まずい雰囲気が流れた。
この状況は俺が招いたことだ。
とりあえず、自分がすぐに担げなかったことを謝るべきだろうか・・・。
「またもや助けていただきありがとうございます。はじめに言っておきます。怒ってないです。怒ってないんですけど、なんであのときすぐに私を担がなかったのか聞きたいです」
沈黙を破ったのはカザキだった。
うつむきながら考える。
答えたくなかった。
もしかしたら彼女が死ぬかもしれなかったその原因が「担ごうか、横抱きにしようか迷った」というものなのだから、情けないというか、自分が許せなくなりそうだったのだ。
「何も怒りません。正直に言ってください」
俺の顔が曇っていたのを見てカザキはもっと興味を示したのか、そのビー玉のような碧眼を見開きのぞき込んできた。
逃げられない。
こんな理由でもし彼女が死んでいたらと思うと申し訳なくなったが、言った。
「君を担ごうか、横抱きにしようか迷ったんだよな・・・」
恥ずかしさと、自己嫌悪がぶつかり合い、感情がぐちゃぐちゃになる。
失望や罵倒は覚悟した。
だが、肝心のカザキは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になり、その後爆笑した。
「何ですかそれ。もしかして童貞ですか」
「はぁ!?そんなはずないし!?」
自分を許せないという、自分への怒りが一転、彼女に対しての怒りになった。
思わず童貞という言葉に反応してしまったのだ。
目が見えないこともあって、現実では15から何もしていない。
しょうがないと思いつつもコンプレックスではあったのだ。
自分が悪かったことは忘れて、ガミガミと言い返す。
「声裏返ってますよ」
それを返すようにカザキも煽るようにグチグチと言う。
そんなことを繰り返していればいつの間にか、ボスのゲージは半分まで削れており、俺のHP、MP共々回復しきっていた。
文章構成とストーリーが下手すぎる気がする。




