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第8話 指標を作る意義

「ふぅ……よし、これでいいかな」


 とある日の昼下がり、ライオはソフィーが片付けて広くなった自室の居間兼研究室のど真ん中に特殊な模様を掘った大きなテーブルを設置する。


 ソフィーが酒場で情報収集を初めて約2か月、その間ソフィーは週3回ライオの家に集めたデータを持って来た上でライオがやっている情報の集計を手伝う、そんな生活を行っていた。


 これにはライオとしても大助かりであった。何せ最初の想定では全4,000人のデータを得るつもりであったのだが、既にそのデータの数は4,000を超えている。


「おいおい、最初の想定より多くないかい? 流石に追加費用は払えないよ」


 ライオは4,000人分のデータを超えた事に対して追加で費用が発生することを心配していたが


「大丈夫です、追加費用はかからないですよ」


 ソフィーは驚くライオの顔に満足げに微笑む。


「え? 謝礼無しでアンケート答えてくれたのかい?」

「上級パーティーのエール寄贈状況を表示させていたじゃないですか? あれを見て『自分たちもエール代払ってアンケートに答えるからあそこに名前を載せてくれ』って冒険者さんが多くてですね。結果として謝礼無しでアンケートに答えてくれる冒険者さんがたくさんいらっしゃったんです」


 自分の身銭を切ってでもアンケートに答えたい、そんな話になるとは思わなかったライオとしてはデータが増えた事は非常にありがたかったものの、その反面困惑も大きい。


 確かに冒険者は見栄の職業と言った面がある、だからこそ上級ランクのパーティーからアンケートの答えをもらうには高い報酬で釣る必要があると思っていたのだが、どうやら彼らの見栄はライオの想像以上だったらしい。


 自分の同格の冒険者が街の人の為に1杯のエールを寄贈しており、そしてその名前がお店に掲載されている。それだけで「自分たちも負けるか」とエール1杯の料金を寄贈する。そして街に住む人は冒険者が寄贈した1杯のエールをいただき、冒険者に感謝をする。


 そしてデータが増えた事によりライオは情報をまとめ、より強く1人1人の能力を可視化する事が有意義であるだろう事を確信する事になった。


 だが一方で、ソフィーは冒険者が自信満々にアンケートに回答するところを見ており、ライオのやっている事に意味があるのか、疑念を持ち始める結果になっていった。



 ガチャガチャガチャ……ガチャッ。


「ライオさん、こんにちは~……あー、部屋を片付けて広くなったと思ったら、何か変な大きなテーブルなんて置いてる!」


 ライオの家の鍵が外から開かれ、ソフィーが部屋に入ってきた。そしてソフィーが部屋の中央の大きなスペースを閉めている大きなテーブルを発見しどことなく批難めいた声色で文句を言う。


 ちなみにライオは家の鍵をソフィーに渡している。ライオは一度研究に集中してしまうと周りが見えなくなる傾向があり、下手したらソフィーがやってきても気が付かずに鍵を閉めたままにする可能性も考えられたからだ。


 ソフィーの初勤務時にたまたま鍵を閉めるのを忘れていてよかったとライオは思っている。おかげで優秀な助手に助けられながら予想以上に順調に話が進んでいるからである。


 もっとも、ソフィーからは鍵も閉めない不用心と寝食を忘れて熱中するライオの性格を怒られはしたが……。


「いらっしゃい、ソフィーちゃん。いや、これはこれからの仕事に必要なんだよ」

「えー? 本当ですか? あ、ライオさん、これアンケートの追加分です」

「ありがとう……いや、予想以上にデータが集まって来たな」

「ええ、私もここまでとは流石に思いませんでしたよ」


 ライオにそう話ながら、慣れた感じでソフィーはバスケットをライオの机の前に置く。ライオは本当にズボラで、最初の頃はソフィーがやってくるまで食事を放置してずっと研究をしているのだった。


 見かねたソフィーがまずは自分の出勤日、帰宅時にライオを酒場に引っ張って行き食事を食べるように促したのだが、今度はその食事以外を食べていないという事が判明し、出勤日に昼ご飯を作って持っていくようになったこと、そして毎晩酒場に来て食事をするように申し伝えたのであった。


 ライオはそんなソフィーには頭が上がらない。実際に集中を始めると寝食を忘れるのだが、ソフィーに言われ寝食は最低限取るようにしてからいつもより頭の回転が速いようであるのだ。


「いつもありがとう」


 ライオはそう告げ、持ってきてくれたバスケットの中身をいただく。一方のソフィーは急に部屋に出現したテーブルが気になるようだ。


 よくよく見ると不思議な模様が掘られている。テーブルは正方形になっており、テーブルの横と縦にテーブルの辺と並行になるように矢印が掘られている。そしてその矢印はテーブルの四隅の1点あたりで直角に交差しており、まるでテーブルの四隅の1点から上方向と右方向に広がっていくようなそんな模様である。


「ああ、その矢印が重要なんだよ」


 ライオはソフィーの持ってきた食事を食べながら説明するが、ソフィーとしてはそのテーブルと研究内容の関連性が分からない、いやそれどころか……ソフィーはライオに対して聞かなければならないと思っていた事を口にする。


「ライオさん……その、私たちが人の能力を数値で測るような、そんな事をする必要があるのでしょうか?」


 最初は冒険者の助けになればとライオを手伝っていたソフィー、だがアンケートに答える冒険者は皆自信満々で、傍から見ると自分の力をきちっと認識した上でその力に誇りを持っているように見えたのだ。


 もしかしたら今のまま、冒険者パーティーのランクだけで上手く冒険者の間の人材移動は上手く行くのではないか、今の追放ブームはただの一過性のブームではないか、そう考える度にソフィーは自分のやっている事の意味が分からなくなってくるのだった。


 ライオはそんなソフィーの質問を聞き、食事を口に頬張りモグモグと租借し、そして飲みこんでから特に驚いた様子もなくいつものトーンでソフィーに告げる。


「そんな事は無いよ、冒険者は自分の実力を理解していない。いや、理解していても能力と所属パーティーのランクが合ってない冒険者もたくさんいるよ。何なら、見せてあげようか?」

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