表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/14

第10話 マリナはソフィーとライオの恋愛を応援しています

「いらっしゃいませー」

「お姉ちゃん、こっちエール追加で!」

「はーい!」


 研究時間が終わり、ソフィーに引きずられるように酒場に連れられたライオは酒場で食事をする事となった。


 とは言え今としては毎日通っているため、いつもと大して変わらない光景だと思っていたが……


「何だかさらにエールの寄付が増えてる気がするぞ……」


 もうすでにアンケートの回答依頼が終わっているはずなのに、確かに冒険者パーティーのエールの寄付が前よりも増えている事実にライオは驚きを隠せなくなってきた。


「いやー、冒険者さんのエール寄付がいつの間にか慣例になってしまったみたいよ」

「あ、マリナちゃん。」


 ライオの座った席に金髪を頭の上で一つに縛り、いかにも外で運動をする方が好きそうな活発な女の子、マリナがやってきた。酒場のウェイターをしているため、食事時はよく話しかけてくれる。逆にライオが食事中のソフィーは厨房で働いているため、あまり話をする機会が無いのだった。


「ライオさん、今日は何食べる?」

「いつもの」

「やっぱり飲み物はジュースでいいの? エールは要らない?」

「お酒は苦手だからね、ジュースで」


 マリナとライオのやり取りももはや同じである。ライオの頼むものはいつも、野菜のスープと固いパン、そして魚のムニエルに果実ジュースである。


「はいはい、ライオさん本当に好きだよねー。たまには違うものを食べたら?」


 マリナがライオのオーダーを書き込みながらどことなくニヤニヤを抑えるような表情をしつつライオにそう問いかける。


「いや、他の料理もいいんだけどね……なんというか、いつもの料理がどうしても慣れ親しんだ味というか、落ち着く味なんだよね」


 ライオがそう答えるのに伴って、マリナが押し殺していたニヤニヤな表情が段々と表に出て来ており、傍から見ると怪しいレベルでのニヤニヤ表情である。


「……どうしたの?」

「ライオさんの好きな料理って全部、今はソフィーちゃんが作ってる料理なんだよねー。ライオさんってソフィーちゃんと仲良すぎだよねー。胃袋掴まれちゃったかな?」

「……そんなんじゃないよ」


 確かにソフィーがライオの研究室にやってくる日は夕方、ソフィーに引きずられるようにやって来る上、ライオの所に向かう日はソフィーが手料理を持ってライオの所にやって来るのを知っているマリナとしてはそう疑うのもおかしな話では無いのかもしれない。


 だからこそ、特にソフィーに連れられてやってきた日は事あるごとにマリナにからかわれているのだ。……まあ、ライオが王国首席学者である事を知った上で態度を変えずに話しかけてくれたのは店主のガロア、ソフィー、そしてマリナくらいだったため、からかわれるようなやり取りもめんどくさいと思いつつも悪い気はしないのだ。


 そんなライオをからかってやろうという表情を崩さないマリナがふとマジメな表情になる。その表情はいつものいたずらっ子のような表情ではなく、どことなく母性を感じさせる優しい表情になり思わずライオはその表情に見とれそうになる。


「ここ最近ソフィーちゃんが悩んでいたみたいだけど、今日は何か吹っ切れた感じになってたよね。ライオさんが何かやってくれたんでしょ?……ありがとうね」

「……お礼を言われるまでも無いよ、ソフィーちゃんが悩んでしまったのも分かるからね。もし自分のやってる事が無意味なんじゃないかと思ってしまったら、その事を続けていいのか分からなくもなるよ。実際、ソフィーちゃんもこれまでの常識からすると意味がないと思ってしまっても仕方な勝ったと思うし」


 高ランクパーティーは強い魔物を倒す。この常識がある限りは高ランクパーティーに居る人が魔物退治の功績が多いだろう、冒険者パーティーのランクと個人の強さが完全に一致するだろうと思い込んでしまうのも分かるのだ。


「ふーん、でもソフィーちゃんって頭いいじゃない? そんな勘違いするの?」

「ああ、それは私も良く勘違いするし、意外と人間ってその勘違いを信じ込んでしまうものなんだよ」

「ふーん、まあアタシもこうやって客商売してるから偏見とかは無いから関係ないかな? それにライオさんがよくやってるのって、数字を計算してるんでしょ? 悪いけどお客さんと会計でお金のやり取りをしてるから、お金に絡む話の計算なら絶対に騙されないと思うよ?」


 ライオはマリナを見る。その表情は「騙せるものなら騙してみろ」といったような表情である。まあきっと、ソフィーが悩んでたのをどうやって解決したのかを知りたいと思ってるのだろう。それが「偏見を取り除いた」とだけ言われて納得できる訳もないのだろう。だがこれは頭が良い悪いの世界でも無いものだ。


「……つまり、そんな偏見があるのを信じられないから自分にやってみろ、騙されないぞ、ってこと?」


 ライオがそう聞くと、マリナは頭をこくんと縦に振る。


「だって女の子が悩むと言ったら大体恋愛の事だもん。私は、ライオさんに片思いしてたソフィーちゃんの気持ちをライオさんが受け入れたんだと思ってるし」


 ライオとしてもソフィーの事を好ましく思っている事は否定しないものの、ライオとソフィーはマリナの言ったような関係ではない。かといって否定し続けてもマリナは納得しないだろう。そもそも偏見が無いと言いながら、女の子の悩みは大体恋愛という偏見ではないのだろうか?


 そんな事を思ったライオであったが、流石にそこを指摘して論破とするのも大人げないだろう。仕方ない……とライオは折れ、マリナに提案をする。


「分かった、じゃあマリナちゃんの偏見を呼び起こす問題を作るから……その間にオーダー通して私の注文した料理を持ってきてくれないかい? 料理を持ってきてくれた時に出題してあげるよ」

「へー、わかった、じゃあちゃんと料理持ってくるから、勝負だよ、ライオさん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ