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第0話 パーティー追放が国にもたらすもの

「君はこのパーティーに殆ど貢献していない、だから君はこのパーティーから去ってくれないか?」


 とある酒場の一角で1名の男と2名の女が1名の男を冷めた目で見ている。そして、その2名の女に囲まれた男が冷たい口調で男に対しそう言い放つ。


「な、何故だ!! 何故俺がパーティーから追放されるのだ!!」


 クビを宣告された男がそう叫ぶ。その声はとても悲壮感が漂っており、初めて聞いた人間はそのあまりの悲壮感にギョッとし、視線を男に向けるだろう。


 だが周囲の人間はその様子をわざわざ目で追ったりはしない、このようなやり取りはもはやこの国のどこでも行われているのである。その証拠に、この後に続くやり取りも大体定型化されていて、声の主の発言と声の悲壮感に対して周囲の反応は驚くほど冷ややかである。


「俺はこのパーティーに貢献してきた!! 俺が居なきゃこのパーティーは回らないだろ!?」


 だがそう訴えられた元パーティーのメンバーは訴える男を歯牙にもかけない。追放に対しての異議申し立てをする男と相まって、訴えられる側、そして周囲の視線が異様に冷ややかだ。


 パーティー追放、これがここ最近の王都で流行っているやり取りであり、このために冒険者はいつパーティーメンバーから首を切られるかを警戒するようになった。


 そのため、いつ命を失うとも分からない冒険者は今までその職業特有の「明日を顧みない豪快な消費行動」を取っていたのだが、命を失うよりもクビになる可能性の方が高くなった昨今は過剰とも言えるほどの節約に励むようになり、全体的に酒やギャンブル等につぎ込む層が少なくなったようである。


 結果として税収が減少し、この冒険者の大量解雇時代が王国の勢力すらも削ぐ結果となってしまっているのであった。



「ライオよ、お主に依頼したいことがある。この税収減を解決してくれ」


 ある日の王城の謁見の間、国王フリードは王立政策研究所の首席学者であるライオを呼びつけ、そのように告げる。ライオは国王から告げられた内容をその場で軽く考え、そしてこのように返した。


 王立政策研究所の首席学者ともなればそれなりの学問を納めた年配の人間を想像するだろうが、ライオはまだ20代前半といった若さでその地位にたどり着いた人材である。


 張りのある黒々とした髪の毛が切れ長の目と相まって、若々しさをこれでもかと主張している。


「陛下、恐れながらお伺いします。『税収減の解決』と申されたということは、原因の目途は立っているのでしょうか?」


「うむ原因は分かっておる。庶民、特に冒険者の中で過剰な解雇が横行しており、冒険者全体の収入が減ったことと、財布の紐が固くなった事に起因する」


「……私に命令するよりも、過剰な解雇を止めさせればよいのではないでしょうか?」


 ライオの考えは尤もであったものの、流石に原因が分かり解決をする方法も分かり切っているはずのこの状況を、首席学者であるライオに解決策を国王が問いかけるのにもまたちゃんとした理由があるのだ。


「うむ、流石に原因が分かった後には対策を講じたのだが、上手くいかずにな。まずは単純に冒険者の解雇を禁止したのだが……冒険者というのはある程度は流動的な雇用なようでな、今度は雇い止めが発生してしまった」


「それなら、解雇された冒険者を一次的に受け入れる仕事を用意すればよいのでは?」


「お主の言う通り雇い入れの場所を用意したのだが、冒険者というのはどうも冒険以外の仕事が出来ないようであってな。用意された仕事になかなか適応しないのだ」


 はぁ、とライオはため息をつく。確かに簡単には解決しそうではない。国王が望んでいるのはただ単に雇用を守れとかそういう事ではなさそうだ。


「つまり陛下は私にむやみやたらな冒険者解雇を防ぎ、それでいて今までの冒険者の雇用の流動性を確保する方法を考えろという事ですか?」


「その通りだ、お主の頭なら何か考え付くのではないかと思ってな。期待しておるぞ」


 はぁ、とため息を吐きたい心を必死で抑え「承知いたしました」と返答するライオ。果たして国王はライオに何を期待しているのだろうか。


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