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迷宮日誌② 〜バニーハント〜  作者: ケット・C・ニャンガード
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夢から醒めた戦乙女

彼女の話を要約するとこうだ。


野営中、愛用の槍を抱えたまま眠りに落ちてしまい、目覚めたと思ったら俺やパストアが召喚されたような寺院に喚びだされていた。


寺院の僧侶による迷宮がどうこうとか長い説明に静かに耳を傾けて聴いてあげていると、幾分かのお金をもらえた。


これは絶対に夢だと思ったので、この素敵な夢を少し楽しもうと思った。


寺院を出ると、すぐに武器屋が目に止まる。


彼女はもともと戦場に生きているような人物で、様々な武器に目を引かれた。主な武器は槍だったのだが両手それぞれに剣とかも格好いいよなと常々思っていた。


だから2本の対の美しい剣(俺からはただの簡素なショートソードにしか見えない)がお手頃な価格で売られていた為に、受け取った持ち金を全部はたいてこれを買った。


彼女は大変満足した。


だがまだ夢は続いてくれそうなので、街を回ってみることにした。


賑やかな街並み、美味しそうな食べ物の匂い、槍とそして剣の箱を両腕で抱えながら歩き回っているうち、夢にしては妙に腕に伝わる重たさや脚の疲れなどが現実的であると理解しはじめた。


ちょっと夢ではないかもしれないと思い、せめて食事代くらいはあったほうがと不安になって武器屋に戻り2本の剣を返品するというと、買値の半額でしか受け付けないと言う。


それはとっても嫌だったので、いったん武器屋は後にして、とりあえず水だけでも飲ませてくれそうな場所を探した。


店主に事情を説明すると、ただで食事をだしてあげるわけにはいかないが、ちょうど今日は5人組のパーティーが来ているはずだから、彼らと一儲けでもすればいいと勧められた。


そうして、俺達に声をかけたというわけだ。













































異世界適正が低すぎる!






いや、俺のいた時代が特殊だったのかもしれない。


確かに小説や物語といった文芸作品が発展していない時代や世界であったなら、はい異世界ですなんて飛ばされたらまず適応できないのが普通なのかもしれない。


そう考えると、異世界転移直後に全財産を1軒目の武器屋の一目惚れで使い果たしてしまった目の前の彼女は非常に自業自得ではあるのだが、彼女にも罪はなく、むしろ召喚したほうが悪いのは言うまでもない。


かといって、では帰してあげてくださいと言って帰してくれるような世界でもないし、同じ"喚ばれし者"として協力の手を差し伸べたっていいだろうと思った。


気がつくと、ちゃっかりと食事に手を付けている。


「私は寺院の人によると、"戦乙女ヴァルキリー"というものらしいよ。もっとも私自身としてはルーンにはあまり通じていなくってね、もっぱら槍働きのほうが得意なんだ。それでも役にたてると思うよ。」


"戦乙女ヴァルキリー"。言われてみれば、女戦士と言えば女戦士なのだが、まさに絵画やイラストなんかにでてきそうな戦乙女ヴァルキリーそのものだ。確かこの王国と迷宮においてはかなり総数の少ない希少な高位職業ハイクラスではなかったか。戦士や僧侶などといったなんらかの役割を熟練していくと、聖騎士や侍、司教ビショップなどといった高位職業ハイクラスへの転職クラスチェンジの儀を行う権利を得ることができる。そういった高位の職業は熟達した戦闘力の高さはもちろん、魔術や奇跡も使用することができたりなど、パーティーにおいて複数の役割をこなすことができる。6名が定番とされているこの迷宮探索において、一人二役が意味するところは非常に大きいとされる。取れる行動の選択肢の数は、そのまま命綱の本数なのだ。


書物や老魔術師から得た知識の通りならば、"戦乙女ヴァルキリー"は奇跡を使うことのできる戦士のような高位職業ハイクラスだ。彼女がルーンと言ったのは、きっと"奇跡"のことを指すのだろう。


アレクシアとチャンスはこの女性のあまりに考えなしの行動の一部始終を聞き、絶対に仲間にしないほうがいいという無言の訴えを強く俺に送っているが、パストアとシルバは少し彼女に同情しているようだ。


ちょうど前衛も探していたし、これも何かの縁だ。


次の探索は彼女も加えることにした。


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