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「いらっしゃいませ」


噂の美少女が来店したけれど珍しく一人だった。


「お持ち帰りですか?」


「はい。ガトーショコラとガトーフレーズ、モンブランと…シフォンバニラ、イチゴタルト、バナナタルト、ナッツタルト…」


今日はたくさん買うんだ…彼女の言葉の通りにケーキをトレイに乗せていった。


「梨桜ちゃん、買えたか?」


高校生の男の子が入って来たと思ったら、美少女に声をかけていた。


「もう少し待って。えーと、あとはオペラ。2個ずつお願いします」


ケーキ16個を注文した噂の美少女はリオちゃんというらしい。

間近で見るとホントに可愛い。

そして話しかけている男の子も美少年。


名門高校の制服を悪っぽく着崩している。

今までの噂の彼達とは違う新登場のイケメンだ。


この美少女は三浦君の知り合い。ということは宮野君とも知り合いなのかな…


ケーキを箱に詰めながらボンヤリと考えた。


「アイツら喜ぶよ」


「それならいいんだけど…忙しかったから作れなくてごめんね」


「ダブルスクールなんて無茶するからなー」


「無茶はしてないよ」


ダブルスクール?

この美少女、厳しいことで有名な学校に通いながら別なスクールにも行ってるの…

世界が違いすぎる




「岡本、旅行の出欠とってるけどどうする?」


「不参加って伝えてもらえるかな」


分かった。と言いながら友達の長野君は私の顔をのぞきこんだ


「何かあった?」


「…別に」


「あのさ、勘違いだったらごめん。…松田先輩と付き合ってる?」


申し訳なさそうに聞く長野君に気にしないで、と笑いかけると、彼は思いきったように話始めた。


「松田先輩ってあんまりいい噂を聞かない。…この前の飲み会も同じ学部の先輩と飲んで酔った岡本を置いて二次会に行ったし…」


「うん。そうだね…」


「彼女を置いて行くっておかしいだろ」


「きっと私は付き合ってるうちに入っていなかったんじゃないかな」


私も恋愛だと思っていたけど、本当に好きな人じゃなかった。

今はそう思う。


「絶対に傷ついて泣いてると思った」


「泣いたよ。でも、おまえは馬鹿だろって怒ってくれる人がいたの。年下なんだけどスッゴく口が悪くてね…」


「へぇ…なんか凄いな。…旅行は行かない方がいいかもしれないな」


「うん、勉強に集中する」


「がんばれ」




「あ、ごめーん」


「いえ…」


学部の違う先輩にぶつかられる事が増えた。


「大丈夫か?」


「うん」




それはアルバイト中にも。


「岡本さん、オーダーをお願いします」


「はい」


同じ大学の上級生。

自分達はなにもしていないのに、休憩に入ろうとしていた私を持ち帰り客のオーダーを取るように言いつけた。


「いらっしゃいませ」


「あ、千尋さん」


「三浦君」


「この前うちに来てもらったのにいなくてスミマセン」


噂の彼の三浦君は一人でお店に来ていた。


「いいえ、本当にご迷惑をかけました」


「千尋さん、何かあった?」


「え?何もないです」


鋭い一言に声が上ずってしまった気がする。


「それならいいんだけど…」


にこりと笑い、ケーキをあれこれと注文していった。




「岡本さん、東青の副会長と知り合い?」


「少しだけお話ししました」


彼等の前で恥を晒しましたとは言えずに無難な答えを返した。


「今日は彼女と一緒じゃないのね」


彼女はダブルスクールがあるとこの前言っていた。

三浦君とは友達なのか彼女なのか…分からないけれど、彼女の周りはイケメンが多いということだ。


「ねぇ、二股かけてたんですってね」


「え?」


「松田君のこと、弄んだそうじゃない?」


更衣室で言われたその言葉で最近の理不尽な攻撃の意味を知った。


「松田君と年下の男を天秤にかけてたって聞いたけど」


「二股なんかしてません」


思わずそう言ったけれど、反論は聞き入れられなかった。


「図々しい女」


「松田君もかわいそうよね」





「長野君、私って二股かけてる噂があるんだね」


「岡本はそんなことしない」


「ありがと」


「むしろその逆。松田先輩にはずっと付き合ってる人がいる」


長野君の教えてくれたことにさほど驚かなかった。


やっぱりね、そう思った。


「お嬢様学校の女子大にいるんだよ…オレの従姉妹がそこに通ってて…」


長野君の従姉妹の友達が松田先輩の彼女だそうだ。


「彼女とは自由に会えないから他で遊んでるらしい。…本当に最低な人だと思う」


「彼女もかわいそうね」


授業が終わり、大学を出ると門のところに人がいた。

制服姿の男の子。


誰かの彼氏だろう…そう思って通り過ぎようとして、見覚えのある姿に立ち止まった。


宮野君

東青学院高校の制服を着ていた。ネクタイを緩めて着崩している姿がやけに、色っぽかった。


「宮野君」


「千尋、言ったよな?」


なにもしていないのに既に怒っていた。

私を見つけると長い足で人混みを横切り私の前まで来て、綺麗な顔で私を見下ろした。


「オレに何か言うことがあるだろ」


「…この前はありがとう」


大きなため息をついた。


「違う」


「お詫びのお菓子が美味しくなかった?」


「食べてないから味は知らねぇ。そうじゃないだろ、何かあったら言えって言ったよな?」


ああ、それ…


「宮野君を巻き込むわけにはいかないもの。心配かけてごめんなさい」


「…この後の用事は?」


「無いけど…」


「来いよ」



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