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「……」


ふかふかのベッド…

見慣れない高い天井


ここ、どこ?私の部屋じゃない


ガバッと起き上がると、頭が痛んだ。


「起きたか酒乱」


しゅらん?


声がした方を振り返ると、壁に背を預けて腕組みをして男の人が立っていた。


「あの…」


この人、誰?

凄くカッコイイ。


「覚えてない、とか言わないよな?」


とても綺麗な顔をした男の人が苛立ちを隠そうともせずに凄んだ。


「怖がらせるなよ、バカ」


綺麗な人の頭がペットボトルでパコッと叩かれた。


「お前に凄まれたら、大抵は何も言えなくなるってわかるだろ」


「うるせぇな、覚えてるか聞いてるだけだろ」


「だったら凄むな。…気分はどう?」


イケメンの頭を叩いたペットボトルが私の目の前に差し出された。

この人…


「東青学院の人…副会長さん?」


「は?」


思わず言ってしまい、慌てて口を噤んだ。

噂になっているイケメン高校生が目の前にいた。


「愁、おまえ有名人だな」


綺麗な人が笑い、愁と呼ばれた彼は私をジッと見ていた。


「すみません、アルバイト先で…」


「どういうことか説明してくれる?」


笑顔なのに背筋が寒くなってしまった。

なんだろう?この威圧感は…


アルバイト先で彼と綺麗な彼女が噂になっていることを説明すると、二人はそれぞれため息をついた。


「アイツに餌付けするからそうなるんだよ」


「煩い。美味しそうに食べるのを見ていると幸せな気持ちになるんだよ。いいだろ」


「おまえ達が甘やかすからアイツの体重が増えなくてオレが叱られるんだからな」


よく分からない言い合いをしている彼等を見ていて、ふと気がついた。

東青学院の彼のお友だちっていうことは、この綺麗な彼も高校生?


「…何見てるんだよ。思い出したのか?」


話を戻した彼に頭を下げた。


「スミマセン、覚えていません」


「道端で寝てたんだよ。起こしても起きないから仕方なく連れてきたんだ」


「…スミマセン!」


顔から火が出るというのはこういうことなんだ、

恥ずかしくて死にたくなった。


「申し訳ないと思ったけど身分証を見せてもらった…大学生だけど未成年だよね?」


高校生の彼に聞かれて頷くしかできなかった。


「面倒だったから警察に届けて行こうかと思ったんだけど、未成年だったから…一緒にいた人達は?」


「…覚えてません」


松田先輩は私を置いて帰ったんだ…

悲しくて涙が出た。


「泣くなよ、面倒くせぇ」


「葵、口が悪すぎ。…岡本千尋さんでいいんだよね?」


「はい」


「オレは三浦愁。こっちの口が悪いのは宮野葵。…とりあえずシャワーを浴びておいでよ、スッキリするよ」


噂の副会長が三浦愁君。

とても綺麗だけど、毒舌な彼が宮野葵君。


二人に頭を下げて首を横に振った。


「ご迷惑をおかけしました。帰ります」


「泣いてるのに帰せないだろ、いいから風呂に入って来い!」


宮野君にバスルームへ追い立てられてシャワーを浴びた。


飲み慣れないお酒を飲んで眠り込んだ私を先輩は送ってくれなかった。

彼女だと思っていたのは私だけなんだ…



「オレのシャツしかなくてごめん」


三浦君はフェミニストだ。


「ありがとうございます」


「葵、何か作って」


チッと舌打ちをして、宮野君はキッチンに立った。


「岡本さん、昨日なにがあったのか聞いてもいい?」


三浦君に問われるまま、昨日のサークルでの飲み会のことを話すと、彼は優しく相槌をうちながら聞いてくれ、話すつもりはなかったのに松田先輩の事も話してしまっていた。


「あんたさ、馬鹿だろ」


「葵!」


宮野君の言葉が胸に刺さった。


「松田って奴の事、本当に好きなのか?」


「好きだと思って…た」


ドン、と宮野君はテーブルにお皿を置いた。

フワフワなオムレツと鮮やかなサラダ。


「食え」


クロワッサンとバターロールが入った籠を三浦君が置くとスープボウルが置かれた。


「思ってた。って過去形だろ。くだらねぇ男に掴まってる暇があったら違うことやれよ」


「ごめん、葵は口が悪くて…」


確かに口は悪いけど、悪い人は初対面の馬鹿な女を相手にこんなに美味しそうな食事を作らないんじゃないかな…


「宮野君は優しいね」


「ゴチャゴチャ言ってないで食え。愁も食えよ」


頂きます。と手を合わせて美味しそうなオムレツを食べた。


「美味しい…」


「食べたら送って行くからな」


彼等の良く理解できない会話を聞きながら食べる食事は昨日の居酒屋での食事とは違って凄く美味しかった。


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