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「岡本さん、顔色悪くない?」


「そうですか?」


「頬が赤いよ、医務室に行ってきて?」


朝から体が変だな、と思いながらバイトをしているとスタッフから指摘されて医務室を訪れた。

お爺ちゃん先生が私を診てくれ、頬や喉に触れて確かめながら私を見て優しく笑っていた。


「…インフルエンザの陽性は出ていないから風邪かな…今日はこのまま帰りなさい。スタッフには私から伝えておくから」


熱が下がらないときはインフルエンザの可能性があるから病院に行くようにと言われて家に帰る事になった。


インフルエンザにはかかったことがないけれど、もしもそうだったら…その可能性も考えて買い物をして家に戻った。





…振動する音がうるさい…


朦朧としながらスマートフォンに手を伸ばしたけれど、固いソレが手に当たらなくて、手を彷徨わせているうちに音が止んだ。


私…何してたんだろう?


いつの間にか眠っていたようで、ベッドの上に横になっていた。

起き上がろうとしたらグラグラと頭が揺れて体が熱く、起き上がるのを諦めて横になったまま見ると、枕元に水や熱を冷ますシートが置いてあり、熱が出たときの為に準備をしていたことを思い出した。


携帯…


もう一度手を伸ばしてシーツのあちこちを探したけれど見つからない。

後で探そう…そう思って目を閉じた。



頭の中でモーターが動くような音が響いている。

携帯を探そうと思っていたことを思い出して体を起こすと、さっきよりはマシになった気がしたけれどまだ 身体が熱かった。



ここにいた…


床に置いてあった携帯を手繰り寄せて着信履歴を見ると、3件の着信があった。


宮野君だった。


何かあったんだうか?

宮野君からの着信に折り返しの連絡をした。


『はい』


「千尋です。連絡もらったみたいで…」


自分の声が別人の声に聞こえて笑いそうになった。

掠れて聞き取りにくいかな…


『あ?すげー声だな。どうした?』


「熱を出して寝てたの。…下がらなかったら病院に行くように言われてて…」


『はぁ!?バカかおまえ!!病院に行け!』


相変わらず容赦ない毒舌にインフルエンザの検査は陰性だったことを伝えたけれど、オレ様な彼には上手く伝わらなかった。


『グズグズ言ってないで今すぐ行け!』


「…うん」


どうしようかな…


『…千尋、迎えに行かせるから今すぐに行け』


迷っているのが分かったのか、宮野君が『分かったな?』と諭すように言い、その真剣な声に素直に「分かった」と返事をした。


電話を終わらせて、何か食べるものはないかと買ってきた袋をゴソゴソと探してゼリー飲料を手にした。


宮野君にはああ言ったけど、ふらつくのが治まったら病院に行こう…




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