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ブルー・スカイ  作者: 嶺司
18/31

第18話 夢

10月1日

端島。

島の沖合には第21揚陸艦隊が停泊していた。

旗艦には、全通甲板型強襲揚陸艦「ラルド」。他に、ドッグ型強襲揚陸艦2隻、輸送艦2隻、イージス巡洋艦1隻、イージス駆逐艦3隻、フリゲード艦8隻からなる艦隊だ。

ラルドだけでも全長250メートルはある、沖合は灰色の船で埋め尽くされていた。

彼らがここに来たのは補給のため、島にいる油船があっちに行ったりこっちに行ったりしている。

そして、飛行場にはC-5輸送機が10機、所狭しとひしめきあっていた。


今から何が始まるのだろうか。


13時、作戦室。

司令が今からモニターを使って作戦を説明するところだ。俺達はいつもの席、俺の左に水咲さん、その隣に啓、俺の右に荒木さん、隣にリンさん。そして後ろに黒木さん、左隣に白崎、五十嵐達は端にいる。

「第1、3艦隊の戦闘は消耗戦と化している、これ以上の続行は難しいという事だ。よって、少し強引ではあるが、第21揚陸艦隊によるベルツィオ揚陸作戦を強行することとされた。我々はそれの支援だ」

ローレニア本土への侵攻作戦、ついにこの手でローレニアを攻撃する時が来た、思わず手に力が入る。

「手始めに、我々第14飛行隊と空母艦載機による制空権の確保及び、指定された対空陣地を破壊。その後、C-5輸送機による空挺部隊の降下が始まる、そして、空挺部隊の内陸部及び海岸への配備が完了したところで、揚陸部隊が揚陸を開始する。揚陸部隊が来るまでは空挺部隊の航空支援がメインになるだろう。海軍の砲撃支援もある、あまり気負う事はない」

まさに大作戦だ、戦力は第1、3艦隊と第21揚陸艦隊で、空母が3隻もいるし、揚陸艦ラルドも攻撃ヘリを多数搭載している、イージス艦もいる、負けられない戦いだ。

「明日、第21揚陸艦隊が出港する、我々の出撃は明後日の13時、それまでゆっくり休め。なにか質問は?」

質問は特にない、任された仕事をやってのけるだけだ、皆首を横に振る。

「よし、以上だ、解散」


自室。

俺はベッドに座り、水咲さんから貰い左手首に付けているミサンガを眺めていた。水咲さんと、啓はどこかに行っていて今は1人だ。

前回のローレニア、アンタルツィオへの攻撃は荒木さん達が行ったから特に何も思わなかったけど、いざ自分が行くとなると少し息苦しくなる、いや、俺の祖国はエルゲートだ、しっかりしないと。

パンパン、と顔を叩いて嫌なことを忘れようとする。

しばらくミサンガを眺めていると、先に啓が帰ってきた。

「あぁ、おかえり」

啓はベッドでミサンガを眺める俺を見て、一瞬止まり、俺に近づいて来る。どうしたのかな?と見上げようとすると俺の右隣に座った。かなり密着していて、腕と太ももが当たっている。啓の暖かい人肌が飛行服越しに伝わってくる、少しドキドキしながら啓の様子を伺う。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫って、なにが?」

俺は大丈夫かと聞かれれば大丈夫だ、なんの事かな?

「ローレニアへの侵攻ですよ、祖国でしょ?」

啓だけが俺の出身を知っている、水咲さんはこの前を会話を聞いていない限りは知らないはずだ、その事を心配してくれていたのか、だが、俺は大丈夫だ。

「大丈夫、それに俺の祖国はエルゲートだよ」

俺は笑って彼女に言ってみせる、するとジト目の彼女は安心したかのように少し笑って、俺の肩に頭を乗せてきた。

え、どうしたの?心拍数がどんどん上がっていく、肩越しに啓に伝わってるんじゃなかろうか。

「それを聞いて安心しました」

啓は、ゆっくりと俺の右手を握る。どしたのどしたの、やめて!緊張して手汗がヤバいから!しかし、お構い無しに、ツルツルと暖かい啓の手が俺の右手を包み込む。

「無茶しないでくださいね」

啓は頭を起こし、ジト目で俺の目を真っ直ぐ見てくる。俺は照れ笑いしながら。

「みんなを守るためなら多少はするかもね」

ハハハ、とぎこちなく笑う。もう恥ずかしくて、啓を見ていられないし、心臓が爆発しそうだ。

「剣くん」

啓が優しく小さな声で俺を呼ぶ、え?と彼女を見ると、可愛いジト目を閉じて顔を少し上げてこちらを向いている。

「............っ!」

え、そういうことなの?マジで?ウソウソウソ、ホントに?ちょっと待ってくださいね、そういうの初めてで全く分かりませんよ!?

既に心臓は止まっていると言ってもいい、息も出来なくなって体は硬直している、アワアワとそうするべきかしないべきか、水咲さんもいるしと、遠のきゆく意識の中、必至に考えていると。

パチン

「いてっ!」

額にデコピンをされた、へ?と少し間抜けな顔で啓を見ると、悪そうにジト目で笑っている。

「ふふ、...バカ」

それはどっちの意味でしょうか啓さん?この根性無しめ、と思われたのか、よく我慢出来ましたと思われたのか、恐ろしくて聞けない。

しかし、あの悪い顔は忘れられないな、夢に出てきそうだ、死ぬほど可愛いかった。

「ただいまぁ」

水咲さんが帰ってきた、啓はまだ俺の手を片手で握っていて、バッと離す。それに彼女は気づいた。

「んー?啓ちゃん、どうしたのかなー?」

水咲さんは手を後ろで組んでゆっくりと歩いてきて、怖い笑顔で啓の顔を覗き込む。

「いえ、何も…」

啓は目を逸らして否定する、こんなにくっついているのに何も無いとは信じてくれないだろう。

「剣くん、何してたのー?」

ああ、標的は俺に...、ヤバい、めっちゃ怖い、普段怒らない人が怒るとヤバいと聞くけどこの事か。

「はい!何もしておりません!!」

新入隊者もビックリするようなハキハキとした声で否定する。実際何もしていない、しそうになったけど…。

「ほんとー?」

水咲さんは俺達の前を行ったりきたりしながら怖い笑顔で見つめてくる、なんか尋問されてるみたいで、2人で冷や汗をかいていると。

「ま、いいや」

さっきまでの恐ろしい笑顔が嘘だったかのように無くなり、いつもの可愛らしい笑顔に戻って。

俺の左隣に座った、啓と同じく俺に体を密着させてくる。

「2人とも近いって!」

我慢できずに2人を離そうとするが、離れてくれない、逆に腕を掴まれてしまった。水咲さんの大きく柔らかいものが左腕に当たり、啓のあるのか無いのか分からないものが右腕に当たっている気がする。

「いいじゃんちょっとぐらいー」

「です」

俺は抵抗を諦めた、さっきみたいな事がないことを祈る。あんなこと水咲さんからされたら多分、昇天してしまう、啓がタイプじゃないって訳じゃないけど、そんな気がするのだ。

しかし、この逆セクハラは心臓に悪すぎる、早く飽きてくれないかなー。


夜。

俺は夢を見ていた。

なんで夢って分かるのかって?ありえない場所にいるからだ。

俺はローレニア連合王国の王都にある、アブルニツィオ宮殿の前にある広場にいた。

宮廷はまさに王様に相応しく豪華絢爛でバカでかい、ひろばの噴水はぴちゃぴちゃと音を立てながら、次々に形を変えて凄く幻想的だ。

俺は綺麗にレンガが敷かれ、花壇には色々な花が植えられた道を歩く。

「わー、めっちゃ綺麗」

これは、本物の宮殿なのか、それとも夢で補正された宮殿なのか、考えても分からない、俺はただ景色を楽しみながら道を歩いた。

ふと、瞬きをすると場面が変わる

ここは?屋内のようだが部屋は広く、その奥には階段があり、上には誰かが豪華な椅子に座っていた。

近づくが、逆光で遠目からはよく分からない。

少しづずつ近づく。

自分の足音が大広間に響く。

「よくノコノコと、ここに来れたな」

椅子に座るその人が言った、よく来れたな?どういうことだ?彼の声は少し怒っているようで、歓迎はされてなさそうだ。

逆光で見えなかったが大広間に灯りが灯され。彼の顔が照らされる。

お前は!!

「ツルギ・アルシュール・ローレ、よ」


目を開けると心臓が爆発しそうに痛い、息も切れていて、フルマラソンを走った後のようだ、ここは。

いつもの部屋だ。

視界がぼやける中、誰かが汗だくの額を拭いてくれている、よく目をこらす。

「大丈夫??」

水咲さんだ、俺は彼女を見ると安心して大きく呼吸する。はー、夢だと分かっていたけど、夢でよかった...。

「大丈夫、ありがとう」

薄明かりの中見える彼女は、凄く心配そうに俺を見ている。うなされる度に彼女は心配そうに見てくれている、本当に申し訳ない。大丈夫大丈夫、ただの夢だから。

「わ!布団びちゃびちゃだよ、替えるね」

「え、いいよっ!」

啓は起きていない様子、啓を起こさないように2人でヒソヒソと話す。そんな、おもらしした子供じゃあるましいし、と断っていたけど。

「風邪ひいたらどうするのよ」

これで観念して、彼女に言われるがまま俺はソファーに移動して、水咲さんが音も立てずにシーツごと替えてくれた。なんか申し訳ない。

その間におれは寝巻きを着替える。

「いいよ、シーツは朝洗うね」

お姉さんと言うより、お母さんみたいな感じだ。

俺は、「ごめん、ありがとう」と言って布団の中に入る、柔軟剤のいい匂いがする、これは水咲さんが洗ったシーツか、彼女と同じ匂いがする。

はー、いい匂い。と布団にくるまっていると、背中の方がゴソゴソする。

「ちょっと、水咲さん何やってるの!?」

水咲さんが俺の布団に潜り込んで来た。

「え?怖い夢を見たあとは、誰かと寝ないとまた見ちゃうよ?」

そんな迷信初めて聞くわ!確かに子供とかは、怖い夢を見たあとは親と一緒に寝るだろうけど、俺はいい歳だ、いくら弟系っぽいからって一緒にしないで欲しい。

俺はドキドキする胸を抑えて、壁を向いたまま動かない。いや、動けない。

「何もしないから」

「それ、こっちのセリフ」

水咲さん程の美人と添い寝なんて、夢みたいだが、ここは男の見せ所、絶対に問題を起こすわけにはいかない、それに啓にバレたら間違いなく殺される。

「啓ちゃんが起きるまでには戻るからさ」

戻れと言っても戻ってくれなさそうだったので、渋々俺は了承した。彼女は可愛く、やった!と言ってさらに深く布団に潜り込んでくる。

背中に水咲さんの体温を感じる、向かい合って寝てしまうと絶対何かやらかしてしまう、俺は動かないと決めた。

そして、緊張して絶対寝れないと思ったが、布団と水咲さんのいい匂いと、彼女の温かさで安心しきってしまい、思いのほか爆睡してしまった。


「え、何してるんですか?」

啓の冷たい声で目が覚めた、彼女はジト目でドン引きしている顔で俺を見下している、部屋は太陽の光で明るい。

左腕に重みを感じる、ふと、左を見ると自分のベッドに戻っているはずの水咲さんが、俺の左腕を枕替わりにスースーと寝ている。寝顔がかわいい。

「あれれ?」

この後、めちゃくちゃ怒られた。



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