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ブルー・スカイ  作者: 嶺司
16/31

第16話 告白

同日16時。

端島、格納庫。

啓が整備員を怒鳴りまくっている、いや、怒鳴るというよりも、冷徹に責め殺している。

て言うか、文句を言うなら俺だと思うんだけど...。

それに、整備員達も一生懸命やっている、元はと言えば故障の原因は、被弾した俺のせいだし、大きく言えたものでは無い。

整備員は、すいませんすいません、とペコペコと謝っている。なんだか見るに耐えなくなってきた、止めに行こう。

「啓、もうその辺にーーーっ!」

啓の左肩を叩いて、まあまあ、と宥めようとした、その時。

パチンッ!

振り向きざまに、左頬に思いっきりビンタを受ける。整備員は、あまりの速さに何が起こったのかと目を点にしていた。

俺は目を顰めながら啓の顔を見ると、完全に冷めきった、冷たい顔をしている。

「なんなんですか、あいつは。隊長...、剣くんの事、知ってるみたいな言い方でした」

え?あいつって、あの赤翼?なんのことだかさっぱり分からない。

「ちょっと、どういう...」

「とぼけないでください。また会おう、ツルギよ。って言ってました!」

冷たい声で言う啓、今にも殺されそう。他人に殺されるぐらいなら、私が、と言うぐらいの勢いだ。

しかし、どうやらあの通信、ノイズが入っていたのは自分だけだったようで、敵の混線があったのは分かっていたが、俺はノイズが入っていてよく聞こえなかった。気にはしてなかったが、そんな事を言われていたとは。

俺には、そのセリフに心当たりがあった。

「来てください」

俺は啓に呼ばれるがまま、連れていかれる。

着いたのは俺たちの部屋、中にぐいっと引っ張り込まれた。

「座ってください」

「はい」

ソファーに、座るように指をさされる、水咲さんは居ないみたいだ、こんな時にどこに行ったのかな。しかし、啓がそれを聞いたという事は、水咲さんも聞いているだろう、逆に2人に責められるよりはいいか。

「で、なんであの赤翼は、剣くんの事知ってるんですか?」

冷たく聞いてくる。

「......」

俺は何も言えない。ローレニアのパイロットで俺を知る人、か...。

「誰なんですか!」

啓が俺の肩を持って大きく揺さぶる。顔が近い、少し涙目なような気がする。

「やめなよ、啓ちゃん」

いつの間に部屋に入っていたのか、水咲さんが啓の手を掴んで止めていた、俺が彼女を見るとニコッとしているが何か寂しそう。

「言ったじゃない、剣くんは剣くんだって」

水咲さんの優しい一言に俺はもう、どうでも良くなった。隠し事はやめだ、全部言ってやる。

「俺はーー!」

水咲さんが人差し指で俺の口を止める、言わなくていいと言わんばかりに。

「バカ!」

啓がダッと走って部屋から出ていってしまった、俺は、追いかけることが出来ない、水咲さんも追いかけようとしない。水咲さんは啓が出ていったドアから俺に目線を移す。

「翼くんから聞いたんだ。彼、ノースエル出身らしいね」

ああ、水咲さんには全てバレてる。やっぱりこの人には敵わないなと実感した。しかし、白崎の野郎、大事なことを話すとは...。

「特務階級は傭兵に宛てがわれる、そうだよね?」

全部話しちまったのかあの野郎、俺の秘密が全てバレていると思っていい。

俺は観念した。さっき全て話そうと決めたし、いいだろう。

「うん...」

俺は短く肯定する。

「剣くんも、そうなんだよね?」

「......うん」


そう、俺は傭兵。

祖国を捨て、エルゲートに渡ったのが4年前。そして俺は、祖国で空軍の学校に通っていたため、エルゲート空軍傭兵部隊を紹介され、入隊し特務少尉となった。

端島に来たのは2年前、ここは静かで良かった。

しかし、癖の強い人達が多くて馴染めずにいて、俺は、空を飛ぶことに必死だった。

飛行テクニック、模擬戦の成績も上々、司令の推薦もあり、あっという間に大尉になることが出来た。そして、ちょうどその頃、水咲さんと啓に出会ったのだ。

傭兵だと知って彼女は幻滅しただろうか、国を捨て祖国でもない国を守っている俺、不安で仕方なかったが水咲さんの目を見てみると、優しく笑っている。

「不安そうな顔しないの。私、剣くんの事、信頼してるし、一生懸命な...」

水咲さんは俺の頭を撫でて安心させようとしてくれる、全てを知って尚、なんて優しい人なんだ。

「剣くんが好きだから」

「え?」

水咲さんは頬を赤らめ全てを誤魔化すように、俺の額にキスをして。

「啓ちゃん探してくるね!」

と、言い残し逃げるように部屋から出ていってしまった。

俺は何が起きたのか理解出来ずに、キスをされた額を右手ですりすりとさする。え?とまだ頭が混乱している。

あ、啓みたいに隊長として、って事だ。自分に言い聞かせる。しかし、隊長として好きでも今まで隠し事をしていた。

これから、どうやって接していこう...。

水咲さんは優しい人だから大丈夫そうだけど、啓とか口を聞いてくれなさそうだ。逆に俺もどうやって彼女と接していいか分からない。


しばらくして2人が帰ってきた。

水咲さんは自分のベッドに座り、啓は何故か俺の隣りのソファーに座る、何を言われるんだろう。

「剣くん?」

「なに?」

落ち着いているが小さな声で彼女は俺に聞く、さっきまで隊長呼びだったのに名前で呼んでくれている。

「貴方の出身はどこなんですか?」

俺は既に覚悟を決めている、ゆっくりと静かに答える。

「...ローレニア......、ローレニア連合王国」

「そう、ですか...」

俺の出身はローレニア、今、俺たちエルゲートと戦う敵国だ。

訳ありで、ローレニアに居られなくなりエルゲートに亡命したのだ。亡命した理由までは言いたいが、躊躇われる。

「私は...」

啓は何か言いたげだが、何故かもごもごとこもってよく聞こえない。ん?、と顔を近ずけると。

「…決めました。剣くんが、どこの誰であろうと、どんな理由でここにいようと、私は剣くんが好きです。だから、死なないで」

え?俺は慌てて水咲さんの方を見る、彼女は貼り直したばかりの窓の外を眺めて聞こえていない様子。またすぐに啓を見ると、ジト目で見てくるが口角が上がりニコッとしている、カワイイ。俺はどうしたらいいのか...。

「お、俺は...イテッ!」

言葉に詰まっていると額にデコピンをされた、えぇ、と目に点にして啓を見るとジト目で悪そうに笑って、返事はいらないと言わんばかりに水咲さんの座るベッドに移動し横に座り、何やら楽しそうに話している。

俺は、水咲さんにキスをされた額、啓にデコピンされた額を両手でさする。短時間に色々ありすぎて混乱しているがこれだけは分かった、俺は彼女たちに嫌われていない、と。


「カフェ・スカイ」

チリンチリンと、俺たちが入るとドアにつく鈴がなる。

「いらっしゃい、剣くん、水咲ちゃん、啓ちゃん」

マスターは相変わらずコーヒー豆を挽いる。

「わっ!いらっしゃーい!」

暇そうにカウンターに両肘をついて、手に顎を乗せていて両足をバタバタさせていたリュウ、慌てて俺たちの元に駆け寄る。

「いやぁー、海軍がいなくなって暇で暇で」

えへへー、と笑顔が可愛い。最近までいた、第3艦隊は少し前からここから西の海域に出張っている。今ここにいるのは陸軍の防備隊と整備員、少しのパイロット、町からも遠いし、そんなにお客は来ないだろう。

いつもの窓際の席に案内され、俺の前に水咲さんと啓が座り、いつものミルクコーヒーとチョコワッフルを注文する。

しばらくするとそれが運ばれてくる、しっかり4つづつ。

リュウは自然に俺の隣に座り、悪い笑顔でニコッと俺を見る。

「ったく、しゃーないなぁー」

「え?マジ?ありがとー!」

別に笑顔にやられた訳では無いが、察しよく俺が言うと、リュウは嬉しそうにニッコニコだ、彼女は嬉しさのあまりか俺に抱きついてくる。水咲さんよりは大人しめの胸だがしっかりと俺の腕に当たっている。ほんのり香水の香りがして、いい匂いだ。

「ちょっ!」

そんなヤラシイ事を考えている場合ではなかった、やめろってマジで、2人に殺されるから!近い近いとリュウを俺から剥がそうと試みる。

「えー、いいじやなぁーい。奢りのお礼!」

これみよがしに胸を押し付けてくる、ホントやめて、2人を見るとなんか冷たい笑顔でこっちを見ている、ああ、怖い。

「リュウちゃん、聞きたい事があるんだけど?」

水咲さんが口を開く、リュウはどうしたの?と俺から離れて肘を着き、前かがみになって水咲さんに耳を傾ける。

「剣くんが初めてここに来た日、覚えてる?」

何かと思えばその事か、初めて来たのは2年も前、自分でもよく覚えていない。何で水咲さんはそんな事を聞くんだろうと思うが、リュウは。

「あー、覚えてるよ!」

しっかり覚えているようだ、少しの昔話が始まる。


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