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ブルー・スカイ  作者: 嶺司
14/31

第14話 北の要塞

1ヶ月が過ぎた。

9月25日、10時。

ローレニア東海岸の戦闘は荒木さん達のおかげで陽動は成功し、順調に空爆が進んでいたが、現在は敵の増援により拮抗状態、上陸作戦までは出来ていない。しかもそこに、第1、3艦隊は付きっきりで他地域への支援はできない。

第2艦隊、ソリューの修理はまだ終わっておらず、内海にて残存艦隊も停泊中。

第11艦隊は、南方海域のエルゲート周辺国の動きが活発となっているのでそちらに展開している。海軍はいっぱいいっぱいといった状況だ。


そして今、俺達は。


アバシ基地南西300キロの海の上空。

俺は空中給油を済ませて、編隊の後ろで待機していた。今は水咲さんと啓が空中給油を行い、大きな2機の空中給油機の後ろ、給油ホースを繋げてピッタリ飛んでいる。

参加隊は端島基地第14飛行隊から早期警戒機スカイアイ、ブルー隊3機、オメガ隊2機。ファーニナル岬航空隊からロメオ隊6機、ケベック隊4機。そして、ファーニナル岬を経由して来た、ライエンラーク第101飛行隊からソーサラー隊6機の計21機の大編隊。

目的地はアバシ基地。

ローレニアからの空襲で甚大な被害を受けていたアバシ基地だが、もう少しで復旧が終わるという頃に。

突如、北の隣国、ノースエル人導民主教国から宣戦布告を受けた。

敵の電光石火の如くの攻撃、戦車隊が雪崩のように国境を越え、アバシ平原を前進、航空攻撃を行う暇もなくアバシ基地まで前進され、最低限しかいなかった、エルゲート陸軍の配備も間に合うこと無く、基地は陥落。空軍と陸軍は、同じアバシ地区、アバシ基地の南20キロにある、旭要塞へと敗走していた。

もともと、エルゲートと、ノースエルは仲が良くなかった、大昔から宗教的、領土的な問題でいざこざが絶えなかったが、近代では国境付近、アバシ平原に存在が判明した、石油資源がある土地の領有問題で争っていた、そこがアバシ。この問題については国際会議の場で決着が着いていたのだが、彼等は諦めきれなかったのだろう、どさくさに紛れて侵攻してきたのか、はたまた、ローレニアと組んでいるのか。

《2面作戦なんて戦えるのか?》

思ったことがつい口から出てしまった、エルゲートは他国に比べると軍事力は強力な方で、ローレニアとほぼ対等かちょっと上、ノースエルとは比べ物にならない差があったが、今はローレニアとの戦いで疲弊している、なかなか厳しいものがある。

《ブルー隊か、私語は慎め、戦うために我らが呼ばれたのだ》

すんごい偉そうな声が聞こえる、ソーサラー隊の隊長だ。彼等は先頭を悠然と飛んでいる。さも、皆が忠実なる部下かの如く。

青迷彩のF-15ストライクイーグルが6機、垂直尾翼には、今にも魔法を発動させそうな、光の渦を巻いた魔法の杖が描かれている。偉そうな彼が今回の編隊長だ。

《りょーかいです》

少し嫌味っぽく俺は答える、誰かの下につくなんて性に合わない。

《イエローラインめ、生意気な...》

俺達はこの1ヶ月、各地の戦闘に引っ張りだこだった、いろいろな隊と共に作戦に参加し戦果を上げていると、いつしか俺達の部隊マーク、黄色の一本線にちなんで、『イエローライン』と呼ばれるようになっていた。自分でも思う、中々にカッコイイ通り名だ。考えた人に花束を贈りたい。

《白崎も大変だな、あんなやつの下につくとは》

《くっ...》

白崎の元上司だったのか、俺の悪口はどうでもいい。しかし、白崎は悔しそうに舌打ち混じりに声を漏らす、あんな偉そうなやつに付いていたなんて同情する。

《隊長、給油が終わりました。後ろに着きます》

2人の給油が終わったようだ、啓は未だに名前で呼んでくれない、それは作戦中だからなのかは分からない。まあ、まだろくに説明もしていない、仕方ないか。

続いてオメガ隊の給油も終了し、全機の給油が完了した、空中給油機は右に旋回して離脱していく。

《各機、進路050、アバシに向かう》

ソーサラー隊に続き、ロメオ隊、ケベック隊、オメガ隊が空を駆け、最後に俺達ブルー隊が追従する。

敵が陣取る、アバシ基地空襲のために。


眼下に旭要塞が見えてきた、要塞というだけあって中々にデカい。聞いた話によると、もともと旭山という高さ150メートル位の横に大きい山があったそうだが、その山を切り崩して周囲を断崖絶壁へと変え、山頂を平にし、1キロないぐらいの滑走路を作ったらしい、断崖絶壁には各所にトンネルを堀り大砲が隠されているとか。

作られたのは100年前、ノースエルとまだバチバチしていた頃だ、最近はアバシ基地が出来たこともあってほとんど使われず、史跡同然だったらしいが、まさかまた役に立つ時が来るとは。

もう少しでアバシ基地だ、久しぶりに思い出す、水咲さんの元同僚、本田さん達は元気なのだろうか。いるとしたらこの旭要塞だが。

目をこらすと旭要塞の滑走路に戦闘機2機、滑走し離陸しているのが見えた、旭要塞から誰か合流するとは聞いてないが。

要塞から飛び上がった2機はすぐに、俺達と合流し編隊の真横を飛ぶ、青迷彩のF-16、かなり機体は汚れていて部隊マークもよく見えない。

《こちらアルファ隊、一緒に行かせてくれ!》

ハッとした、彼等は生きていた。編隊長が応答するよりも早く水咲さんが反応する。

《本田くん!榊原くん!》

《え、吉田!生きてたのか!?》

こんな所で感動の再会、まさか本当に生きていたとは、半ば諦めていた俺は恥ずかしい。

《どういう経緯か知らないが、私語は慎め。戦力は多いことに越したことはない、歓迎するぞ》

偉そうだ、まあ、本当に偉いのかもしれない。ちょっとぐらい余韻に浸ってもいいじゃないかと思う。

《了解、感謝する》

本田さんも編隊長に怖気付くように、嬉しさを抑えて、旋回し俺の後ろについた。

《水咲さん、彼らに付いたら?》

水咲さんは元々彼ら、本田さん達の1番機だ、気を使って今回は彼らと飛んではどうか、と言ってみる。

《いいえ、私は剣くんの2番機、貴方を守る》

《あ、ありがとう》

義理堅いというかなんというか、そう言ってくれてちょっと嬉しかった、水咲さんは動くことなく俺の後ろを飛ぶ。

《私語を慎め。まもなく敵地だ、各機、特殊兵装使用許可。無様な真似をするなよ》

ソーサラー隊に続き、俺達は敵地に乗り込んだ。


《3、2、1、弾ちゃーく、...今!》

地上が物凄い爆発に包まれる。

エルゲート陸軍による、155ミリ滑空榴弾砲の雨だ。

アバシ空襲から始まり、奪還作戦に移行、既に攻撃を開始してから3日が経っている。火力に物を言わせてジリジリと戦線を押し上げてはいるが、なかなか、思うようにはいっていない。

俺達も3日間端島を行ったり来たりで正直なところしんどい。しかし、そんなことを言っている場合でもなく、今、総攻撃が始まった。

先程の榴弾砲の雨を皮切りに、エルゲート戦車部隊が北上を開始、俺達の任務は制空権の維持と、敵戦車部隊への攻撃だ。

《爆撃しても爆撃しても湧いて出てくるな...》

黒木さんが愚痴る、本当にいったいどこから湧いて出てくるのか攻撃してもキリがない。

《無駄口をたたく暇があったら攻撃しろ》

相変わらず偉そうな声で、黒木を叱る編隊長。しかし、彼も疲れているのだろうか、初日のような余裕そうな声では無くなっている。

《スカイアイより各機、方位340に目標探知、大型機だ》

スカイアイの報告からまもなくそれが見えた、プロペラエンジンを翼の後ろに4つ付け独特な形をしているB-36爆撃機、否、ドローン母機、やつが10機現れた。わざわざローレニアから、北極海を越えてこの地に来たのか。しかし、これでハッキリした、ローレニアとノースエルは組んでいると。

《くそ、マジかよ...》

早く終われせて帰りたかったのに、そうもいかなさそうだ、対空装備のブルー隊とオメガ隊が集合する。

遠目に見ると、奴らは既にドローンの投下を始めていた。

《イエローライン、あいつは任せたぞ。白崎、足でまといになるなよ》

なんだかんだ偉そうな編隊長も、俺達のことを信頼してくれているのか、意外と頼ってくれるが、元部下の白崎への嫌味は忘れない、一体何を考えているのやら。

《ブルー隊了解、各機、2人1組で行動して》

《隊長は?》

啓の心配そうな声が聞こえる。

《俺は、囮になる》

ドローンとは何度も戦っている、その度に大切な仲間を亡くしているが、3度目の正直だ。

今回は大丈夫、そう信じる。

《ブルー1、交戦!》

迫り来るドローンの中に俺は突っ込んだ。


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