ギルドの洗礼2
ギルドには少し広めの中庭があって、歩成たちはそこで向かい合った。
ドムの武器は、大剣。
そのガタイでぶん回せばそれなりの威力になるだろう。
対して歩成は、何も持たなかった。
それは、扱い慣れていない武器で負けるかもというよりは、まだ未熟な剣術で相手を殺してしまうかもしれないという方の不安からだ。
圧倒的な戦闘経験から、歩成は一目見て、その人の強さがなんとなくわかってしまう。
ドムは見た目こそ普通の人なら気圧されてしまうだろう。
だが、歩成からすれば、ただのガタイのいい人くらいであった。
ドム「武器も持たねぇで俺に勝てるってのか?とことんナメくさりやがって。気にくわねぇ。」
「気にすんな、やればわかる。」
ほかの冒険者は、ギルドの窓から戦いを見ている。
ニヤニヤと笑って見てるやつや、歩成にありとあらゆる罵詈雑言を浴びせている奴ら。
うるさいなぁ。
ディーン「ではこれよりドム君と歩成の試合を始めるよぉ。ルールは、相手を戦闘不能にするか、先に参ったと言わせた方の勝ち。もしくは、私が勝敗がついたと判断すればそこまでだよぉ。」
静寂が二人を包んだ。
歩成は、肩幅より広めに足を開き、右手を腰の位置で優しく握った。
ドムは、頭の上にその大きな剣を構え、縦一線を最速で振り抜く型をとった。
隙だらけのようだが、はなから一対一の人間相手に大剣を使う事自体がありえない。
その姿からは、確かに隙が感じないことから、ただのバカではないことはわかった。
よほど戦い慣れているのだろう。
ディーン「はじめ!」
スパーンッ!!!
歩成の拳が空を切った。
今歩成はドムの懐にいる。拳はドムの腹スレスレのとこで止まっている。
振り上げてあった大剣は、まだピクリとも動いていない。
後を追っかけてきたように吹いた風は、ドムやディーンはもちろん、観戦していた冒険者たちにまで、吹き付けた。
ドム「何が起きたんだ…。」
ディーン「そこまでぇ!」
観戦していた冒険者たちが目の前の光景に膠着している中、歩成はその突きつけた拳を下げ、ドムの顔をフッと見るとそのまま背を向け歩きだし唐突に思う。
あっぶねぇ。
殺すところだった。
ついカッとなってちょっと力が入っただけなのに、なんだよあの威力。
なんとか止められたけど、当ててたら弾け飛んでたぞ。
思わなぬ光景に、一番驚いているのは、どうやら歩成のようだった。
胸に手を当てゆっくり呼吸をし、落ち着いたのでまたドムの方に体を向けた。
ドムはいまだに動けずにいた…。
ディーン「結果はわかっていたけど、まさかここまでとはねぇ。」
ディーンは落ち着いた様子で歩成の方へきた。
結果がわかっていたなら、試合なんてやらなければいいとも思う歩成だったが、
冒険者たちの先ほどのナメた表情がなくなっていることに、
ギルドマスターとして、俺に気を使ってくれたんだと納得した。
「いいのか?あいつ固まってるけど。」
ディーン「ドムのことなら心配いらないよぉ。他の連中と違ってそこまでやわじゃないからねぇ。最近は調子に乗りすぎていたみたいだから、丁度よかったんじゃないのかなぁ?」
ニコニコと優しい表情とは、全く合わない厳しいセリフだ。
ディーンはドムや他の冒険者たちをそのままにし、歩成をまた受付に連れて行った。
歩成は、少しやり過ぎてしまったかと反省をしつつ、中で観戦していた連中を気にしないようにディーンの後をついていった。