8.魔法の才能。
神「手違いで君を死なせてしまった……好きな加護をあげるから、別の世界で好きに生きてくれないか?」
男「じゃあ、魔法の才能を下さい!俺、ファンタジー大好きなんですよ!」
神「はぁ……(扱いやすい奴で良かった)」
「す、凄い……魔力値9999なんて!こ、こんな素質を持った方は初めてです!」
目の前の受付嬢は思わず立ち上がり、作成されたばかりの俺のステータスカードを見て目を丸くする。
「この冒険者ギルド始まって以来……いえ、大昔、人類史上最高の魔法師と言われた大賢者様をも上回るでしょう!あ、貴方は一体、何者なのですか?さぞかし高名な冒険者様なのでは?」
「ハハハ、いえいえ。僕は田舎から出て来たばかりの只の若者ですよ」
異世界テンプレの王道のやり取り!
これだよこれ!これがやりたかったんだ!
「なぜ貴方のような人材が冒険者に!?望むならば王国お抱えの魔法師にもなれる数値ですよ!!」
「フッあまり目立ちたくなくてね……それに……冒険者は昔からの憧れでして」
「はぁ……変わってらっしゃるのですね」
戸惑う受付嬢を尻目に、壁に掛けられたクエストリストを見渡す。
何やら……奇怪な文字が並んでいるが、神様からの加護なのか、書いてある内容は大まかに把握出来た。
「すいません……では……この『ゴブリン討伐』クエストをお願いします」
「え…………えええ!?い、いきなり討伐クエストですか?ちょ、ちょっと待って下さい!お仲間は?」
「群れる事は嫌いなんですよ。それに、これなら僕だけでも大丈夫そうですしね!ではっ」
「あ、あの!」
こうして僕は一人、冒険者ギルドを後にした。
件のゴブリンの巣が確認された場所は、村から離れた森の奥深く。洞窟があるという。
日が落ちるまでには帰ろうと足早に向かい、ようやく目的地にたどり着いた。
「GYAGYAGYAGYA!!」
「JIRORORORO!!」
「GEGEGEGEGE!!」
なるほど、あれがゴブリンか。
身長1m強。緑色の醜悪な生き物が、こん棒らしき物を手に周囲を警戒している。
ひ弱な存在だと聞いているが……大勢で来られると厄介に違いない。
だが─────僕には神様がくれた魔法の才能がある。どんな魔法でも使える。そして、魔力が尽きる事なんてあり得ない!
冒険者ギルド受付で貸与された杖を持ち、勇気をもってゴブリンの前に飛び出した。
「ゴブリンども!僕の魔法をくらえ!」
「GYA?」
攻撃魔法は……火炎魔法だ。
火球を飛ばして攻撃しようと呪文を思い浮かべる。
『天におわします我らが神よ どうか非才なる我人の子の願いを聞き給え
灼熱の炎をこの手に宿し 我を取り囲まんとする悪しき魂を燃やし尽くさん
大気より集いし風の精霊の御力を受け 闇を晴らす力となり給え
浄化の光を放ち 立ちふさがる神の敵を打ち果たさんことをここに誓う
我が身よりその力発現せよ 火 球 魔 法』
え。呪文長くない?
─────ボヒュンッ
凄まじい音を立ててゴブリンの一体に命中した。あっ、凄い、消し炭だ。
でも……どうしよう。呪文を唱えている間に、集団で囲まれてしまった。
「GYAGYAGYA!!」
「KIROKIRO!!」
「GRARARARA!!」
凄まじい怒気を感じる。そりゃそうだ。
震える唇でもう一度呪文を唱えた。
『天におわします我らが神よ どうか非しゃ……』あ、噛んじゃった。
─────ばきばきっごきっぶちゃっみしっめきめきっぷちん
受付嬢「あ、あの……魔法使いって本当に凄い職業なんですよ!魔力が高い程、優れた魔法を放つ事も出来ますし、何よりも貴重な存在なんです」
受付嬢「ただ、ソロで旅するには隙が出来やすくてですね……効率が悪すぎるので。土木工事とか、式典のハク付けに魔法師になる方が多いんです。そっちの方が安定して暮らせますし」
受付嬢「あの子、大丈夫かしら」