表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/73

71. 殺人鬼の目的

『……王都で誘拐殺人犯「食人鬼」出没。昨夜、30代の女性を誘拐、付近の雑木林にて殺害。遺体は肉片が……』



 ()()新聞【ラムダ・タイムズ】の一面は、連続殺人犯『食人鬼』。

 老若男女問わず、標的を攫って殺し、その死肉を食べる。正体不明の犯罪者である。



 最初の被害者は大柄な中年男。次は痩せぎすの若い女。

 狙われた者達に共通点などなく、無差別殺人を繰り返す。

 連日、王都ではあらゆるメディアで騒がれているものの……犯人の影すら追えていない。




──────恐ろしい世の中になったものだ。

──────犯人は頭のおかしい奴だろ?物取りじゃねえってのがやべえよ。




 毎晩1人、また1人……誰かが必ず殺される。

 その度に王都の人々は恐怖し、眠れぬ夜を過ごしていた。




『……「食人鬼」は元傭兵との噂。これまで15人の被害者が連れ去られている様子から、凄腕である事は明白……』

『……夜、灯を完全に落として眠るのは危険。咄嗟に助けを求める事が困難である。傍には護身用のナイフを置いて眠る事を心掛け……』




 新聞には、元軍人やらのインタビュー記事が載り、誰もが熱心に一面記事を読む。

 この狂気の殺人犯の目的は何なのか?

 何の恨みがあって殺人を繰り返すのか?




──────女だけ狙うってんなら、臆病な糞野郎だ。それが大の男まで殺してるとなると分からん。

──────人の肉を喰らうってのが気味悪いよ。背教者か、悪魔信仰でもしてるんだろうさ。怖いねぇ。





 民兵団が何も対抗する事が出来ず、被害者の数が30人を超える頃になると、いよいよ民衆の不安は爆発する。

 武具を抱えて眠る者、家族を連れて王都外へ避難する者、家に鍵を掛けて出ない者。様々だ。

 集団で固まり、自衛を兼ねて騎士団の駐屯所に詰めかける者達も出て来た。





──────民兵団って頼りにならねえのな。つっかえねえの。

──────王宮から騎士団が派遣されるそうだぞ……大丈夫かな。

──────いよいよって感じだな。どんなヤバい殺人鬼が相手でも、さすがに騎士には敵わないだろ。






 皆が皆、この凶行が終わる事を一様に願っていた。

 犯人が早く掴まるよう、騎士団の活躍に期待する。

 夜、王都に住まう皆が厳重に戸締りし、朝が来るのを待つ中……ついにその時が来た。








──────────────────






 号外!!

 国営新聞『ラムダ・タイムズ』


【連続殺人犯『食人鬼』ついに逮捕!】


 昨夜、騎士団はスラムの裏路地に潜む不審人物を発見。極秘裏に調査を進めていた所、犯行の瞬間を抑える事に成功した。『食人鬼』は抵抗したものの、騎士団長の一刀を肩に受け、そのまま捕縛された。

 詳細は、また明日の新聞で明らかになるだろう。






 一面を賑わせているのは、殺人鬼逮捕のニュースだった。

 その正体、犯行の目的、依然としてまだまだ分かっていない事が多く、多くの者が注目する。

 人々は安堵した瞬間、誰もが口々に噂の殺人鬼の事を知りたがった。



 犯人はどこの誰だ?



 性別は?男?女?



 何の恨みがあって?どうやって?



 なぜ誰にも見つからなかったの?



 様々な疑問の数々が残るものの、犯人は黙して何も語らず。

 平和な王都に大混乱を招いた危険人物がどこの誰なのか……徐々に明らかになる新情報に、誰もがこぞって注目した。






──────────────────






【シェーダ商会、テーゼ商会と合併か】

【新国立劇場、完成迫る!お披露目は半月後】

【数年振りの不作、野菜の値段昨年の2割高に】






──────数々並ぶ記事の端の端。



【異民・難民の入植開始。労働力の底上げは確実。国民は喜びの声多数】

【第一王子フィリップ様、本日付けで政務復帰「贈賄疑惑は事実無根」国民は喜びの声多数】

【神の怒りか?国民を守る会、副議長急死。無責任な幕引きに国民は怒りの声多数】



 真実は多くの人々の目に触れられる事無く、闇へ葬られる。

 大きな事件の前では、ささいな出来事などすぐに忘れ去られてしまうのだった。

政府による大掛かりなプロパガンダです。


次回も早めに投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 星新一先生の短編みたいで面白いです。続きは?
[一言] すいません、わかりません(汗) 詳しい説明お願いします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ