66.発見!宝箱。
四人の冒険者パーティは、洞窟の中で宝箱を発見した。
「おい、凄いぞ!これは『はがねの剣』だ。俺がこれまで使ってきたモノなんてナマクラ同然だぜ!」
まず喜んだのは剣士。
手にした鋼の剣を振るい、その輝きに目を眩ませる。
「ほほ、これは……火竜の皮で作られた『サラマンドラ・ローブ』ですね。一流の魔法使いでもなかなか手にする事が出来ないと噂の品です。これは凄いですよ」
魔法使いはローブの素晴らしさに驚嘆した。
素晴らしい装備効果が掛かった至高のアイテムを手に、驚きを隠せない様子だった。
「流石は未発見ダンジョンね。素晴らしい宝箱がまだ未開封のまま残っているなんて、まさに冒険者冥利に尽きるってやつよ。ねえ?盗賊もそう思うでしょ?」
「……」
気怠げに声を掛ける武闘家だったが、盗賊は何の反応も示さない。
ずっと下を向いたままだ。
「盗賊!ほら、『賢者の腕輪』だぞ。確かこれ、賢さが格段に上がるっていう装備だったな。頭の弱いお前ぴったりじゃないか」
「……」
「いやはや、危険と引き換えに素晴らしい宝の数々が手に入りましたな。私のような木っ端な新人魔法使いは、そうでもしないと一流冒険者の仲間入りが出来ませんでしたから」
「……」
「まあ、ここまで来れたのも、我がチームの目と耳、盗賊の活躍があったからこそよね。ほんと、頼りになる男だこと」
「……」
仲間達の皮肉の数々に、うつむいていた盗賊は、絞り出すように震えながら返事をした。
「……すまない……本当にすまない」
「俺がもっとしっかり下調べをしておけば……こんなブザマな最後を迎えずに済んだのにっ!」
──────ズズズズズズズズズ
侵入者を押し潰す為のトラップ、重たい釣り天井がゆっくりと降りてくる音がフロアに鳴り響く。
鍾乳石のように尖ったトゲがビッシリと並んだオーバーキルな罠だ。誰にも防ぎようが無い。
軽率だった。
手つかずの宝箱を見てはしゃいだ盗賊が、罠の解除も忘れて飛びついてしまったのだ。
自分の役目を忘れ、フロアの確認を怠った。
四人の退路は封じられ、地響きと共に罠は発動してしまった。
──────ズンッ
そして辺りは静寂に包まれた。




