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53/74

53.森の古城殺人事件。

 私はホラン。王国で名を馳せる私立探偵だ。

 先日、私の元に手紙が届いた。東の領地にある『森の古城』の主、ローランド伯爵からだ。



 

『最近身の危険を感じる出来事が続いている。何者かに命を狙われている、そんな気がしてならない。私事だが、近日一人娘の結婚式を開く予定なので、その前に身辺をスッキリさせておきたい。至急、貴殿に調査を依頼する』



 馬車で向かった森の古城。

 伯爵の一人娘の結婚式を近日に控えた最中、依頼人のローランド伯爵の死体が発見された。

 伯爵を殺した犯人は一体誰なのか。 

 



登場人物

➀ホラン……主人公。探偵。

➁ローランド伯爵……今回の依頼人。心臓を刃物で一突きにされて死亡。第一の被害者。

③アマンダ……ローランド伯爵の一人娘。

④バートン……伯爵の執事。

⑤レイモンド……隣の領地の次期当主。アマンダの婚約者。

⑥リカ……伯爵のメイド。

⑦コリン枢機卿……王国から遣わされた聖職者。今回、結婚式の神父役を務める予定だった。

 事件から一夜が明けた翌朝。

 一同は伯爵が倒れていたパーティホールに集まった。





「では、状況を整理しましょうか」

 ホランはパイプを吹かして今回の事件を振り返る。





「事件が起きたのは昨晩。メイドさんの悲鳴で駆け付けると、パーティホールで伯爵が何者かによって殺されていました。遺体には凶器のナイフが胸に突き刺さっていた……」


「事件が起きた時間、アマンダさんとレイモンドさんはそれぞれ自室で早めに就寝。執事のバートンさんは裏庭の剪定、メイドのリカさんは明日の朝食を準備していた。そしてコリン枢機卿は自室で読書中だった。皆、その時間には一人きり。つまり、この屋敷にいる誰にでも犯行は可能だった、という訳です」



 ざわざわ─────場の雰囲気が張り詰める。



「すまないが、この中に犯人がいるのか?申し訳ないが、外からやって来た第三者……という線もあるのでは?」



 疑問を呟いたレイモンドに、傍にいた執事バートンが答えた。



「恐れながら、それはありえません。伯爵様の屋敷には、防犯として高名な魔法使いが術式を組んでおります。この屋敷に家主が招待していない者が侵入した場合、屋敷内に大きな呼び鈴が鳴り響くようになっているのです」




「そ、そんな……」




 令嬢はショックを隠し切れない声で呟く。

 身近な者の中に父親殺しの犯人がいると悟り青ざめる。

 




「探偵の……ホランさん。伯爵のご依頼を受けてここにいらしたのですね。何か、この事件で気付いた事は?」

「れ、レイモンド……」

「仕方あるまい。君の身内を疑うのは忍びないが、何も事件を解決する糸口がないのだ。それに、この人に聞くのが一番だろう?……誰か、怪しい行動をしていた人物はいないだろうか?」



 苦い顔で質問するレイモンド。

 ホランは、言葉を選んで答える。



「まだ犯人を特定する事は出来ませんが……少なくとも事件前の皆さんに不審な点はありませんでした」



 続けて、今度はアマンダ令嬢が質問する。



「犯人はこの中にいるんですよね?そして……探偵さんはその人に心当たりがない、と」



「ええ……犯人に心当たりがあれば既に結論を述べています。まさか探偵として遣わされた私が犯人とでも?」


 

 ホランは少し呆れた様子でアマンダにそう言った。その言葉にアマンダは俯き、皆に向き直る。

 そこに、今まで黙っていたコリン枢機卿が口を挟む。



「ホホ、急に口を挟んですまないの。最後に質問したいんじゃが……昨晩、君が最後に会ったのは誰か、覚えておらんかの?」



 何の脈絡もない質問。だが─────なぜか皆、顔を強張らせて探偵の言葉を待っている。

 ホランは首を傾げながら答えた。 



「質問される側に回るのは珍しい。え~、そうですね……。昨晩は伯爵の書斎で事件の調査をしていました。執事のバートンさんに少し休んではどうかと声を掛けられ、自室で少し休憩をとっていた所……メイドのリカさんが私の寝室に紅茶を届けてくれました───生憎、そのまま寝入ってしまいましてね」



「なるほどのう……では、それ以後は誰にも会ってないのじゃな?」



「ええ、そうですね。何か不審な点でもありましたか?」






 そうホランが答えた瞬間、窓ガラスを割る大きな音がした。

 その人物はスカートを翻し、ブリムを捨て、あっという間に庭の先─────森の奥の方へと走り去っていく。



「早馬で王都に連絡を!」

()()殺人の犯人はリカ。リカ=ヒューストンだ。偽名かもしれん。動機は分からん……他国の間者、暗殺者、或いは別の目的か……。検問をくぐる前に、早く捕らえるのだ!」




 何が起こったのだ?ホランは事情が全くつかめずにいた。

 その答えは、コリン枢機卿の口から明らかになる。




「ホホ……君には申し訳無い事をしたな。王都から(コイツ)が届く前に、まさか第二の殺人が起きるとは」




 よく見ると、枢機卿の右手には高度な魔法儀式に用いられる『千年樹の杖』が握られていた。

 もう片方の手には─────青い火が灯ったロウソクの燭台が握られている。



 ……ホランは思い出した。

 高位の聖職者の中には死んだ者の魂を呼び出し、その意志を伝える事が出来る者がいる、という話を。







「実はな、君よりも先に伯爵の魂寄せを行ったんじゃが……生憎、伯爵は突然背後から襲われたそうで、犯人の顔を見ておらなんだ。それで、次に殺された君の魂を……とな」



「今朝、君は自室のベッドで眠るように死んでおったよ。体のどこにも傷は無く、毒殺されたのではないかと我々は話をしていたのだ。それで聞いたのだよ、『最後に会ったのは誰か』と。君に最後に出会った者が一番疑わしいからの……なるほど、紅茶に毒を仕込んでおったか」



「伯爵の死の真相に近づき、それで口封じに遭ったのだろう……不運じゃったな。葬式をあげてやるから、彼の国で安らかに眠ってくれ」



 コリン枢機卿の視線の先には、冷たくなって時間のたったローランド伯爵の死体。

 そして、その隣に横たわる、ホランの死体があった。

推理物ではありません(;^ω^)

不親切ですが、一応登場人物紹介の所で第二の被害者がいるようにほのめかしてます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  成る程ね。  だからお嬢はあんな質問したのか。  ショートショートらしい簡潔でいて面白い作品。  読み込めば伏線が判るという。
[良い点] 確かに第2の被害者がいなければ、第1の被害者とは言わんわなぁ [一言] やられた(笑)
[気になる点] 剪定じゃない? 裏庭の選定
2020/09/08 19:24 退会済み
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