表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/73

37.手紙。

 私の名はフランツ・ド・メディチ。

 まだ父上から代替わりしたばかりの若輩だが、古くから代々連なるメディチ家の当主である。






 我が家には長い歴史があるものの、実は、資金繰りに関して年々悪化の一途を辿っていた。

このまま指を咥えて見ているしかないのか……そう思っていた折、この状況から抜け出す大きな機会が訪れた。王国の北に広大な領地を持つ大貴族、カール伯爵が私の妹、フランソワに婚約を申し入れて来たのだ。

 伯爵という身分にありながら、わざわざ身分に劣る貴族と結び付きを持とうとする者などいない。ましてや伯爵と妹はかなりの歳の開きがあるため、この婚約には私を含め多くの者が反対した。

 だが、妹は『家の為になるならば』と、自分の意思を殺し、伯爵の家に嫁いで行った。これで縁を持ち、資金繰りが上手くいく事を願っての事だった。


 私は自分自身情けない気持ちになり、妹に望まぬ結婚をさせた後悔の念に駆られた。


 だが、それ以上にカール伯爵の不穏な噂を耳にし、さらに不安に思うようになる。


 曰く、伯爵はこれまで13人の女性と結婚したが、その全てが病にかかり亡くなった。

 曰く、伯爵邸に呼ばれた村の女性で、その後帰って来た者はいない。

 曰く、伯爵は邪悪な宗教に傾倒し、拷問した女性を悪魔の生贄としている。





 妹が結婚してからしばらく、何の連絡も無い。

 いよいよ妹の身が心配になった私は、すぐにカール伯爵へ使いの者を送り、妹の安否を確かめる為に手紙を彼女へしたためた。


 すると、半年ほどして妹から手紙が届いた。








――――――――――






 お久しぶりです。

 兄様が当主になってから初めての手紙ですね。お変わりありませんでしたか?

 今では私もすっかり伯爵領に慣れ、楽しい日々を過ごしています。


 寒い北風が吹くカール領ですが、伯爵は優しく尽くして下さり、とても充実した日々を過ごしています。

 また、領民の方々も私を歓迎して下さいました。


 旅立つ前、兄様達はカール伯爵の噂を鵜呑みにし、心配されていましたが、あらぬ誤解です!私はあの方ほど紳士的で、妻思いな方はおりません。父様にもそうお伝え下さいませ。


 すでに兄様の領にも報告が入っているかもしれませんが、近年、王都では流行病で多くの民が亡くなったと聞きます。貴族にも被害が出ているそうなので、兄様、くれぐれもご自愛下さい。メディチ家の跡取りなのですから、子どもの頃のように領内を馬で駆け回ったりしないようにお願いしますよ?

 健康を第一に御考え下さいませ。無理して体を壊さぬように…というと、亡くなった母様みたいですね。

 定期的に熊肉や羊の毛皮等、冬の備えをお送りしますので、それも楽しみにしていて下さいね!






――――――――――






 

 手紙を読んだ私は、妹の無事を喜ぶとともに、大きな取り越し苦労をしていたと苦笑した。

 どうやら妹は妹で楽しく過ごしている様子が手紙の文面から伺える。

 流行り病の話は初めて聞いたが、自分の事よりも兄である私の心配をするとは、家族思いの彼女らしいと懐かしく思った……この時までは。











 妹からの手紙が届いて半年後、妹が亡くなったという報がメディチ領に届いた。


 私は、その時になってようやくこの手紙に妹が込めたであろう単純なメッセージに気付き、妹を無為に殺してしまった事に後悔した。


 後日、メディチ家の通達で王都から調査団が派遣され、カール領の貯水池から大量の人骨が見つかった。

 妹の遺体は拷問の痕が体中に残り、見るも無残なものだった。

物凄く単純な『意味が分かると怖い』系です。あまり捻りが無くてすいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  沓冠を読むのはテッパンですよね。  パワポケのアレもなかなか‥‥‥。
[良い点] すごく面白いです。読んでてドキドキします。 [気になる点] この妹の手紙には、どのような意味が込められていたのでしょうか? 理解力がなくてすいません…。
[一言] 段落のひらがな縦読みで合ってますか? 主人公よ… そんな噂がでるほどの人のもとへいって率直に辛いとか助けてとか言える分けないやん 自分の目で見るまで安心するなよ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ