31.SOS。
宇宙を渡航するアドベンチャー号に、無線からSOS電波が入った。
「艦長!救助ランプが点灯しています……ただいま、無線が入りました」
「何?よし、早く繋げよ!」
「はい!」
「jnjzrnbklnmklmklfbzmkrmg+RKMAGkrmhbktmxhbktmhbl;z\ms;mbtkmnktnmt;l,ah<`H]@tokopkmrko\m」
「翻訳装置に掛けます。しばしお待ちを……」
「……(ザザザ)……のむ、こちら……ロン星、……星の宇宙探査船。航行中、機体トラブルが発生し、見知らぬ惑星に不時着。救助求む。こちら……」
SOS電波の発信源を調べてみると、このアドベンチャー号から目と鼻の先にある無人惑星であった。
どこからやって来た宇宙人かは知らないが……この辺はまだ未開拓な渡航範囲であり、探査に来る宇宙船も少ない。
幸いな事に補給物資が十分足りていた事から、艦長は救助要請を受け入れる事にした。
「エンジン出力上昇……これより、未開拓惑星に着陸する!」
「「了解!」」
幸いな事に、大気、地質等、着陸の条件を満たした星であり、人間であっても、しばしの滞在であれば問題ない、という事が判明した。乗組員はホッと肩を撫で下ろす。
着陸態勢に入ったアドベンチャー号は、目下─────緑色の惑星にむけて降下した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
「着陸完了。艦長、どういたしますか?」
「よし、私が先導する。若干名を機内に残し、要救助者の元へ向かうぞ」
「「了解!」」
艦長は探査レーダーを手に、部下に医療キットを持たせて探索を開始した。
─────ぶちゃり
「ん?今、何か踏んだか」
「気のせいでしょう。緑色の植物が発する粘液で滑りやすくなっているようですね」
地面には苔のような物質がびっしりと生えていた。
粘着性のねばねばした液体が靴に絡みついてくる。
「気持ち悪いですね……」
「仕方がないさ。それより、早く救助者を探すぞ!」
探査レーダーのスイッチを確認し、艦長は索敵を開始する。
だが……。
─────
レーダーの側面には、何の反応も無かった。
何度スイッチを押しても変化は見られない。
「おかしいな、先ほどは確かに反応があったんだが……」
「一度、周囲一帯を確認しましょう」
そこから一時間程、アドベンチャー号の周囲をグルグルと確認する一行であったが、SOSの発信源と見られる宇宙船や、要救助者を見つける事は出来なかった。
致し方なく、宇宙船に戻った艦長は乗組員にもう一度、SOSの発信源を確認させた。
ところが、
「……ダメです。なぜか、艦長が宇宙船を出られてからすぐ、モニターに何の反応も無くなってしまったのです。こちらの呼びかけにも応じません」
「何だと?そんなはずないではないか!応答を待て。我々は今一度、周囲の探索に戻る!」
時間にして一日近く、付近の探索に出た艦長達だったが───結局、あるのは植物の生えた沼地が広がるばかりで、生きている動物は虫一匹たりとも見当たらなかった。
何とか要救助者を見つけようと艦長を始めとした乗組員は必死に捜索を続けたが、結局、SOSを発信した宇宙人を見つける事は叶わなかった。
「艦長。どういたしましょうか?」
「どうするも何も……ここにずっと滞在する訳にはいかん。不思議な事だが、助けを求める者達がいなくてはな。仕方ない、本国には報告しておく。幾ばくかの補給物資をここに置き、我々は目的の銀河探索を続けよう。宇宙船に戻るぞ!」
「「了解!」」
首を傾げながら、艦長と乗組員達は宇宙船に戻っていった。
ミクロン星人「……踏み潰されるとは思わなかった」