24.救世主。
「ああ、救世主様!貴方のおかげでこの国は救われます!」
この世界に来た瞬間、私を呼び出した神官はそう言って歓喜した。
地球で平和に過ごしていた私がこの世界に呼び出されて早10日。
何が何だか分からない状況で、困惑した私をこの国の住人は皆、溢れんばかりの笑顔と鳴りやまぬ拍手で迎えてくれた。
「救いの天使よ!」
「救世主様!救世主様!」
「ありがたや……ありがたや」
全く意味が分からないが、この世界の住人は皆、私を一貫して『救世主』と呼び丁重に扱ってくれる。
自分は何もこの国にもたらした覚えはない。
呼び出されたばかりの自分に、何を期待しているのだ?
そんな思いを感じ、私は神官に尋ねた。
「私はなぜこの世界に呼び出されたのですか?」
すると、神官は微笑みながらこう返した。
「あなたが召喚されたその瞬間に、この世界が救われる事が決定したのです。……大丈夫。今は意味が分からなくとも、明日になればその意味が分かる事でしょう!」
明日は特別な催しがある、と言って神官は神殿へと帰っていった。
私は釈然としないまま、用意された食事を食べ、部屋で眠りについた。
───その夜。
神官は、信者である大勢の国民を前に講習を行っていた。
「いよいよ明日の夜、我らが神である邪神、ハヌマーク様が降臨なされる!我らを追放した王都の民に復讐し、この世を混沌に落とす……宿願が叶うのだ!」
「ハヌマーク様への生贄たる貢ぎ物は、薬によって首尾よく眠っている。明日の夕刻まで目を覚まさないはずだ!今のうちに祭壇まで運び、降臨の準備を行うぞ!」
───オオオオオ!!




