16.成長チート。
ある日。
普通の高校生、吉田浩二は交通事故に遭い、呆気なく死んでしまった。
魂となった浩二は、そのまま輪廻転生の輪に組み込まれる予定だったが……その様子を見ていた神々の一人が、新たな娯楽を得る為にと、浩二を自分の創造した世界へと誘いをかけた。
特典として、一つだけ望みの能力『スキル』を授けてくれるという。
浩二が得た力は・・・。
俺、吉田浩二は異世界の神様に連れられて、未知の星へとやって来た。
正直……家族と会えない悲しみはある。
親しい友人の顔を思い浮かべると涙が出そうになるが、訳の分からないまま別の生き物に生まれ変わるよりかはよっぽどマシだ。
右も左も分からないこの新しい世界。不安な気持ちは大きい。
だけど、この世界に降り立つ際、神様は俺に一つだけ好きな力を授けると約束してくれた。
怪力、韋駄天、剣聖、英知、商才、幸運……これまで神がこの世界に連れてきた人間も、スキルと呼ばれる様々な能力を身に付け、成功を収めたらしい。
漫画やゲームをそれなりにやってた俺は、じっくり考えた末に、一つの能力を授かる事に決めた。
それが異世界の定番『成長チート』だ。
不条理なまでの成長速度。
あっという間に訓練を積んだ者を飛び越える力。
地球にいた頃流行っていた漫画では、酒場で主人公に絡んできた先輩冒険者をボコボコにするような展開が多かった。
……まあ、そんな真似はしたくないが。
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新しい肉体を得て、この星で俺が降り立った先は、広々とした大草原だった。
都会に住んでいた俺には見た事もない大自然。
地平線の先までずっと草原地帯が広がり、かなり遠くの方でぼんやりと青い山々が天高く連なっていた。
空は快晴。大きな鳥のような生き物が自由に飛んでいる。
しばらくこの世界の空気を味わっていると、草むらから、
───ピョコン!
RPGの定番、スライムがいきなり俺の目の前に飛び出してきた。
「おお!こいつはスライム……。ちょうど良い!悪いが俺の経験値になってくれ!」
この世界に来て初めての戦闘だ。
油断なく、俺は落ちていた木の棒を拾い、それを武器に突きまわす。
スライムが弱ってくると、何度も踏んづけて止めを刺す。
すると、
───レベル2になりました。
【生活魔法、剣術:序】を会得しました。
自分にしか聞こえない、不思議な声が耳に入ってくる。
もうレベルが上がったようだ。
「おお、さすがは成長チート……」
そう俺が呟くと、
───レベル3になりました。
【体術:序、火炎魔法:初級】を会得しました。
不思議な声が続けて聞こえてくる。
「おいおい、スライム一匹でそんなに経験値貰えるのか?どんなチート能力だよ」
───レベル7になりました。
【鷹の目、高速移動:序】を会得しました。
───レベル13になりました。
【風魔法:破、弓術:序】を会得しました。
───レベル28になりました。
【薬学:学士級、獣使い】を会得しました。
「……はぁ?一体どこまで上がるんだよ」
───レベル77になりました。
【高速詠唱、調理:特級厨士級、剣術:極】を会得しました。
───レベル152になりました。
【神獣騎乗、天使召喚、天候変異】を会得しました。
───レベル226になりました。
【空間転移、精霊魔法:極】を会得しました。
「……え……?」
───レベル999になりました。
【生命の英知:極、思考破棄:悟】を会得しました。
おめでとうございます!
思考、意思疎通の必要性が無くなりました。
人としての成長限界に達しましたので、これよりあなたの肉体を精神生命体へと進化させます。
───レベル2775になりました。
【未来改変、過去改変、次元移動】を会得しました。
───レベル4889になりました。
【根源魔法:惑星衝突、創造魔法:人類】を会得しました。
───レベル9999になりました。
おめでとうございます!
成長限界です!
あなたの力は精神生命体としての限界に達しました。
これより、あなたは高次元生命体である神へと進化します!
浩二は、一瞬にして望んでもいない神になってしまった。
ステータスオープンもどき。




