10.俺のハーレム。
遠藤勝は健全な男子高校生だ。グラビア雑誌の切り抜きや写真を沢山集めている程には健全な男の子だ。元来の猿顔ゆえにあだ名はまんま『サル』、むっつりスケベという言葉を体全体で表現するように校内で女好きが広まっている。女子からの人気は生徒から用務員のオバちゃんに至るまで低かった。
そんな勝はある雨の日、自宅アパートの階段から転げ落ち、頭を強く打って亡くなってしまう。お気に入りのアイドルの写真集を買いに行こうとして……という、なんとも情けない理由で。
だが、そんな彼にも世界は公平に出来ていた。
幸運にもその様子を見ていた神が彼の魂を拾い上げたのだ。
「若くしてお前はこの星での死を遂げた。生き返らせる事は出来ないが、望むなら何でも一つ、お前の望みを叶えてやろう」
「え……俺、死んじまったのか……って……本当に!!何でも?」
元々勝の両親は出来の悪い自分より、優秀な弟に目を掛けていた。高校を卒業したら実家には居場所が無くなるし、勉強も運動もろくに出来るわけではない。どうせ将来も大したものじゃないのだろうと感じていた勝は、これは転機だと感じた。神は見ていたのだと。
「じゃ、じゃあ、えーと……女の子がいっぱいいる世界に行きたい!美人で、スタイルが良くって……胸なんか滅茶苦茶デカくて、俺なんかでも優しく接してくれる年上の女の人に囲まれて一生甘やかされて暮らしたい!」
「……そんな事でいいのか?」
「ああ、当然じゃないか!……よし、決めた!『年上美人かつ甘やかしてくれる系の、めっちゃボインでエッチなお姉さんがいっぱいのキャッキャウフフな世界に行きたい』俺の願いはこれだ!」
神は勝の様子に呆れたが、
「分かった。ではお前の望みを叶えよう」
そう言うと、勝の魂を新たな肉体と共に遠い異世界へと転移させた。
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初めは暖かな海の中にいるような、浮遊感と心安らぐ感覚の中に勝はいた。
やがて白い光が目の前を走り、自分の周囲をグルグルと回りだした。新たな世界に降り立つ準備をしているのだ、と勝は思った。
「楽しみだなぁ!」
そして異世界へと向かう事となった。
新天地では自分が経験した事のないほどの、最高のハーレム生活がおくれる……そう信じて。
「……ん?」
勝が目を開き、辺りを見渡すと、どこかの宮殿のようだった。地面はふかふかの絨毯が敷かれているようだが、それよりも気になる事があった。
「やけに広いな……おい……。というか、ここはどこなんだ?何かの施設か?」
シャンデリアらしき天井の照明器具は、学校のグラウンド程の面積があるだろう。壁は都内の高層ビルなんか比べ物にならない位に高い。この部屋だけで一体何平米あるか分からない。
嫌な予感がした。そうとしか考えられない。これは……。
嫌な予感はまだあった。先ほどから『ズシンッ……ズシン』と地鳴りと共に何かが近づく音が後ろから近づいて来ていて……
プチンッ
「あー怖かったぁー。ほんと、窓は締めてるのに何で虫が入ってきたのかしら?」
妙に艶めかしく、グラマラスな婦人はそう言って、小さな生き物が潰れて汚れた料理本をくずかごの中に放り投げた。
女性はかなりの巨乳だった。
その全長に、目をつむれば。
俺のハーレム(即死)。




